緩和ケアで行こう

へなちょこ緩和ケアナース?!のネガティブ傾向な日記です。

愛しい患者さん

2008-06-29 01:16:24 | 患者さん

 緩和ケア病棟に入院してこられる患者さんは、主に、がんの終末期の患者さんです。
 「主に」という修飾語の通り、がんの終末期以外の患者さんもいらっしゃいます。
 私の言う「それ」は、がんを持っているけれども特に症状はなく、余命もかなりあると思われる患者さん…なのです。要は、病院がその患者さんを引き受けたが、その人の適切な療養場所がなく(制度上の問題も絡んでます)、病院内で療養していただくにあたって、コストを考えると緩和ケア病棟がいいのではないか?と考えられる患者さんです。

 緩和ケア病棟に、前記のような患者さんばかりが入院されると、正直にいって、スタッフの士気は下がってしまいます。そのような患者さんは、長期の入院となります。長期の入院とは、最近の在院日数の短縮とは反比例しているほどの年単位を想定できる期間となります。
 そうなると、いざ、疼痛や呼吸困難などで緊急に入院しないといけない患者さんのためにベッドを提供できないというストレスから、スタッフの士気が下がってしまうのです。
 
 しかし、一旦、患者さんを引き受けたからには、ちゃんとケアさせていただくことはいうまでもありません。
 
 小田さんは、そんな患者さんのひとりです。
 「遠い昔に」大腸がんだったよな~~~、という患者さんです。

 小田さんは、脳梗塞を患ったこともあり、普通にコミュニケーションをとることができません。
 しかし、限りなく「普通に近い」コミュニケーションもとれるときがあります。
 
 小田さんが緩和ケア病棟にこられた時には、「ぎょっ!」っとするくらい、小田さんは怒り倒していました。
 が。
 何がきっかけか、何の変化があったのか、何が原因か、担当医も看護師もみなが全くわからない中、ある日突然、お怒りモードから、普通モードに小田さんは変化したのでした。
 声をかけたり、体に触れると「ワーーーーーーーーーーーーーー!」と奇声?を発していた小田さんが、
 「ありがと」
 「はー、調子いいです」
 とお話をし始めたのでした。

 ただ、普通モードは長続きはせず、お怒りモードと普通モードを瞬間的に交互に変えながら、返答をしてくださっています。

 それが小田さんなのだー、と、その反応のひとつひとつの意味を探りながらお世話させていただいている毎日です。
 
 未だに、「わーーーーーーーーー!」っと、まるで辻斬りにあったかのように奇声を発していることがある小田さんです。
 ある患者さんから、質問がありました。

 「ここにはヤギがおるんかい?」

 スタッフ一同、大笑いしつつも、絶句

 ヤギ…。小田さんの声は結構大きく、状況の飲み込めないほかの患者さんはいろんな想像をしていることがわかりました。

 そんな小田さんなのですが、奇声を発しても、普通に話してくださっても、患者さんとしては愛しい存在です。

ライダーになるぞぅ

2008-06-23 00:07:16 | offの日

 とうとう、バイクを購入することに決めました

 実は、私、中免の『超・ペーパードライバー?』なのです。10年くらい前に免許を取ったのですが、バイクの購入は家族の反対のために断念しておりました。
 
 以前から、250ccのバイクに乗りたいと渇望していました。そう思いつつも、バイク購入という実行に移せなかったのは、忙しさと、本当にバイクを購入しようという動機付けが弱かったからだと思います。

 私に動機を「うぉりゃ~~~~!!!」と与えてくれたのは、患者さんでした。

 佐藤さん(仮称)は、とんでもない山奥の山荘に近いところに居を構えておりました。その佐藤さんは、がんの終末期を迎えておりましたが、「死ぬまでに、一度は家に帰りたい」というご希望を持っておられました。

 担当医からは、「自宅療養は無理」とはっきりと伝えられてしまっていた佐藤さんでしたが、佐藤さんは担当医を心底信頼しておりましたので、
 「自分は、先生を信頼している。だからこそ、がんばって、先生が無理だと言うことを自分の力で可能にしてみせる」と、話されていました。
 医療者としては、「現実的には、無理だろう」と医学的に判断したいところでしたが、その人その人が持つ可能性としては、自宅に帰ることを「不可能ではない」「可能にしたい」という思いが私にもでてきました。
 佐藤さんが、「家に帰ってみせる」というお話をされている時は、とても素敵な表情でした。担当医への信頼、治療への忍耐、希望をかなえるための直向さ…。

 で。

 佐藤さんをどうしても一度、家に帰してあげたい、家に帰っていただきたい、との思いは私の中でむくむくと成長しておりました。
 
 しかし。
 佐藤さんのご自宅は、とんでもない山の中にありました。佐藤さんが「こんな病気になるなんて、考えてなかったから…」と後悔を表明するくらい、体の調子が悪い人には、かなり難関なところに、佐藤さんは住んでいらっしゃいました。
 そんな理由で、自宅に帰るのは無理だろうと判断されておりました。が。
 私は、ひそかに、「実現してみせるわよ」と、確固たる根拠は持っていなかったのですが、「実現できる」そんな気持ちになっておりました。

 そこでまず、私が行動したのは、佐藤さんの自宅の環境を知るということでした。
 ネットで調べられる地図の検索範囲では、佐藤さんの住所を入力しても佐藤さんの自宅は明確にすることはできません。それに気がついたのは、佐藤さんの家探しを始めて、2回目のことでした。
 
 佐藤さんのおうちは、「どうして?」「こんなところに、よく家を建てましたね」「田舎過ぎます!」ってなところにありました。
 ナビもお手上げな場所。とうとう佐藤さんにおうちの場所をご指南いただきながら…。
 
 佐藤さんのおうちにたどり着けたのは、3回目のトライの時でした。

 この経験のおかげで、佐藤さんの自宅の環境を実際に知っていた私は、佐藤さんを「今だ!!!」というタイミングで、外出という形で佐藤さんに、自宅で過ごす時間を持っていただくことができました。

 佐藤さんに纏わる経験のおかげで、とんでもない田舎…、山…に住む人たちがいる、ということがとてもよくわかりました。
 
 私は、この土地に居住して2年くらいですが、地元の人なら、住所の地名を見れば、大体は場所がわかるはずです。
 しかし!
 私は、まだ、住所を見ても、「聞いても」ピンとこないことが多いのです。

 このままでいいのかな?と思い、地元を知らなきゃという気持ちにさせていただけたのが、佐藤さんでした。

 仕事のために、地元を知るというのでは味気ないですが、地元を知ることで、仕事にも役立つというつもりで、あらためて、自分の住んでいる街・環境を知りたいと思えるようになりました。

 車には似つかわしくないような?細い道路しかない山間には、バイクはぴったりです。趣味と実益?をかねて。

 ようやくですが。
 ライダーになるぞ~~!
 

 

ホタルでイルミネーション

2008-06-20 13:23:31 | 日々

 もう、いつだったか、突然、職場の先輩看護師さんから、「今度、ホタルを見に、連れてってあげるよ。」とお誘いを受けました。
 私、そういえば、ホタルって、見たことがあるような、ないようなで、きっと見たことがないかもしれない(わけわからん表現)と思って、連れて行っていただくことにしました。

 それが、昨日、叶いました。
 仕事をがんばって19時過ぎに切り上げ、山道を走ること、30分くらい(30分で山にたどり着けるこのど田舎な環境ったら~~♪)。
 
 橋から川を眺めますと…。
 いたいたーー!ホタル

 30分ほどは眺めていましたが、時間が経つにつれて、ホタルの可憐な光が増えてきました。
 私はこんなにたくさんのホタルを見たことがなかったので、ひたすら、感動してました。
 連れて行ってくださった先輩看護師さんは、感動している私を見て、「昔はね、歩こうとすると、ホタルが寄ってくるから、手で振り払って歩いていたのよ。」ですって。今では、田舎であっても、限られたところでしか見れないってことなのですね…。

 ホタルは光を放ちつつ、川沿いの木を彩るようにふんわりと宙を浮かぶように飛んでいました。そっと手を伸ばすと、手にホタルが留まってくれるのよ、と先輩看護師さんは私に、手の中でじーっとしているホタルを見せてくれました。暗闇の中で、ホタルの光が手のひらをそっと照らしていました。
 自分の視線の高さと同じくらいのところをふわーーーっと飛ぶホタルをみると、思わず、手を伸ばしたくなっちゃうものです。

 私が訪れたところは、地元ではみんなが知っているホタルスポットらしいのですが、人はまばらで、気持ちよくホタルに「面会」できました。
  
 あー、まったり。
 あーーー、まったり。
 あーーーーーー、幸せ。

 そうずっと呟きつつ、ホタルを眺めていた昨夜でありました。

 連れて行ってくださった先輩看護師さんに、感謝感謝。
 なんたって、出迎えてくれた?!ホタルに感謝、感謝かな。