地震の被害のあった地方の皆様、お見舞い申し上げます。
どうか、これ以上被害が拡大しませんように。
皆様くれぐれもお気をつけください。
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先日コメント欄で「生食についてはどう思いますか?」とご質問を頂きました。
ちょうど良い機会なので、前から書こうと思っていた生食のことについて記事にします。
私自身はニコニヤの食餌を生肉中心にするつもりはありませんが
「え!ないの?」
ないよ。若い頃よりお腹壊しやすくなったし、長年加熱したもの食べてるんだから
今更変える理由がない。
話を戻しますと...
他の方がご自分の愛犬のために、産地や飼育方法を吟味した生肉を給餌されている場合は
尊重したいと思っていますし、学ばせてもらう面もたくさんあると考えています。
ただ「生食は体に良い!」という情報だけが一人歩きしてしまって
愛犬や愛猫の健康だけでなく、公衆衛生の面でもリスクが高まっている面もあります。
実はヨーロッパやアメリカでは、犬に生肉を与えることについて疑問や警告が再三出ています。
↓こちらはワイヤーフォックステリアのタンタンちゃんの飼い主さんで
ドッグトレーナーの資格もお持ちのタンタンパパさんのブログです。
1月に書かれた記事ですが、犬や猫に生肉を与えるリスクの一つについて
とても分かりやすく説明してくださっています。
タンタンパパさんの記事はオランダのユトレヒト大学獣医学部の研究者が
2017年に発表した論文を基にしておられるので、学術的に根拠のあることです。
「ごはんの話かと思ったら怖いお話なんだけど...」
家畜や家禽は密集した環境で飼育されているため、一度伝染病が流行ると全滅です。
それを防ぐために、餌にあらかじめ抗生剤を混ぜて与えられています。
それが高じて、家畜や家禽の体内の菌は抗生剤に対して強い耐性を持ってしまっています。
抗生剤耐性菌が付いた肉を生のままで食べると、当然その菌に感染します。
飼い主は犬や猫のフンを処理する際に感染の危険がありますし
食後に顔や手を舐められるのもリスクの高い行為です。
同様の発表は様々な国の研究者から何十と寄せられています。
抗生剤耐性菌は世界中の医療機関の深刻な問題です。
普通にスーパーマーケットで売っているお肉を生のまま犬や猫に与えることは
こういうリスクを孕んでいると知っておかなくてはなりません。
「ニコは大丈夫だからお肉くださーーーい」
ニコの食べるお肉は茹でてあるから大丈夫なんだってば。
抗生剤耐性菌までは行かなくても、ペットの生食用の肉の細菌汚染はたくさん報告されています。
アメリカやヨーロッパでは生肉と少量の野菜やハーブを一緒にパックして、
飼い主は開封して与えるだけという製品がたくさん販売されています。
ただアメリカではこの手の製品で「サルモネラ菌検出のためリコール」というニュースが
本当に頻繁に聞こえてきます。あんまり有り過ぎて「またか」としか思わないくらい。
ヨーロッパでも同じような状況のようで、今年上旬にスウェーデン農業科学大学の研究者が
ペットの生食用冷凍パックの細菌汚染の調査結果を発表しています。
スウェーデン、ノルウェー、フィンランド、ドイツ、イギリスの業者計10社60パックの
製品を調査した結果、食中毒を起こす可能性のあるウェルシュ菌が30%から
サルモネラ菌が7%から、カンピロバクターが5%から検出されています。
詳しい内容はこちらで。
これも同様の報告が他の国でも届いており、
アメリカでは米国食品医薬品局がペットの生食に関して警告を発表しています。
肉や包丁、まな板の取り扱いに注意することはもちろんなのですが
家庭に乳児や、免疫機構が弱っている高齢の方、免疫系疾患の方がいる場合には
ペットに生の肉を給餌することは絶対にやめましょうと呼びかけられています。
抗生剤耐性菌および食中毒を起こす細菌が肉に付着していたとしても
加熱調理すれば殺菌することができます。
アメリカでの最近のフードのトレンドは1食分ずつパックになった
ホームメイド風の加熱食が宅配されて来るというものです。
当然高級フードですから、トレンドと言っても主流ではないのですが
それでもここ2〜3年の間に業者がすごく増えて来ています。
こんな感じ。
「おかーさんって自分が買わないフードのこと、調べるの好きよねえ」
そうだよ。フードって自分が利用するものだけじゃなくて
買わないもののこともよーく知っておくと、色んなことが見えて買う時に役に立つんだよ。
ですから、もし生食を始めようと考えていらしたら
安心な生産者を探して、安全なお肉であることを確認して
その上でなお、肉の取り扱いに細心の注意を払って始めてくださいね。