グレインフリー=穀物を使っていないドッグフードが話題になっていますが
この「グレインフリー」という部分について復習と整理を兼ねて書いておきたいと思います。

「フクシューとかセーリとかつまんなさそ〜」
確かにね。でも大事なことだと思うんだよ。
一般的にグレインフリーのフードというのは
小麦、コーン、米、大麦、オート麦、ライ麦、大豆を含まないものを指します。
ドッグフードの評価サイトなどでは「穀物が入っているのでマイナス1点」と書かれていたり
「粗悪な原材料を赤で示しました」として穀類が赤字になっていたりするのを見かけます。
そもそもドッグフードはグレインフリーであるべきでしょうか?
私はそうは思いません。
今までにも何度も書いているけれど、犬は1万年以上に渡って人間の側で暮らし、
その年月の大半を人間の残飯をもらうことで生きて来た動物です。
様々な種類の穀類は人間から与えられていたはずなので、犬が穀類を食べるの不自然ではないと考えます。
犬は炭水化物を消化するのに必要な酵素の分泌に関連する遺伝子を狼の約7倍持っているという研究結果も発表されています。
しかし犬に穀類を与えるのを避けたほうが良い場合もあります。

「あたしは白いごはんが好きよ!避けて欲しくないわ!」
・小麦やコーンなど特定の穀類にアレルギーや不耐性がある場合
これは言うまでもないですね。
小麦のアレルギーがある場合、タンパク質である小麦グルテンに反応します。
小麦グルテンに反応してしまう犬は大麦、ライ麦も同じ反応が起きるのでこれらも避けなくてはなりません。
オート麦はグルテンの種類が違うのですが、個体によって反応が起きる場合もあります。
グルテンに対する免疫反応によって引き起こされる自己免疫疾患セリアック病の場合も
小麦、大麦、ライ麦、オート麦を避ける必要があります。
(オート麦自体は大丈夫だという研究結果が出ていますが、多くの場合ほかの麦類と
同じ施設で処理されて混雑があるため、やはり避けるべきです。)
セリアック病はアイリッシュセッター以外ではほとんど見られることがないそうです。
上記のアレルギーとセリアック病はどちらも免疫機構に原因がある疾患です。
アレルギーと似ているのですが、問題が免疫機構ではなく消化器官にある「不耐症」というものがあります。
特定の食品を消化するための酵素が少なくて、うまく消化できないのが不耐症です。
有名なものでは牛乳を飲むとお腹がゴロゴロする乳糖不耐症がありますね。
穀類では小麦グルテン不耐症がしばしば問題になります。
小麦グルテン不耐症が犬にどのくらいの割合で起こるのか資料がないのですが
小麦粉で作ったクッキーやケーキを食べた後に体調が悪くなる感じがあれば
一度小麦、大麦、ライ麦を避けた食生活を試してみる価値はあると思います。
不耐症はアレルギーと違って少量の摂取ではほとんど影響がありません。
けれども積み重なると慢性的な体調不良につながるので注意が必要です。
うちのニコは多分小麦グルテンの不耐症なのだと思います。
小麦のクッキーを与えていた時に皮膚の赤みに気づき、止めると収まりました。
オートミール(オート麦)では毎日メインの炭水化物として使っても何も問題がありませんでした。
このようなアレルギーや不耐症がある場合にはグレインフリーのフードを選ぶ大きなメリットがあります。
ただし、小麦やコーンにアレルギーも不耐症もないという場合でも、ちょっと気をつけたい点があります。
小麦もコーンも世界的に最も多く耕作されている穀物です。
これは遺伝子組み換えが最も多い作物でもあるということです。
遺伝子組換え作物自体が人や動物の体にどれだけの影響があるのかは今の所わかりません。
小麦、コーン、大豆は収穫量を上げるため、除草剤グリホサート に対する耐性を高くする遺伝子組換えが行われています。
また小麦は乾燥を早める目的で収穫直前にグリホサート が散布されます。
つまりこれらの穀類は残留グリホサート のリスクが高い作物でもあるということです。
(グリホサート についてはこちらをご参照ください。)
グレインフリーフードに使われている野菜や豆類は遺伝子組換えをしていないとか、
除草剤が使われていないと言っているわけではありません。
ただ確率として小麦、コーン、大豆はリスクが高いということです。

「みんな犬のごはんのことそんなに考えてるの?」
そうだよ、みんな考えたり悩んだりしてるんだよ。大抵の場合、自分のごはんよりね。
・穀類が炭水化物源としてではなくメインのタンパク質源として使用されている場合
一口にグレインフリーではないドッグフードと言っても内容はピンキリです。
メインとなる動物性タンパク質が十分な量含まれていて、エネルギーになる炭水化物源として米やオート麦を使用しているようなフードなら高品質だと呼べるでしょう。
しかし小麦グルテンやコーンがタンパク質のメインソースになっているようなフードは犬にとって良い品質とは言えません。
なぜなら小麦やコーンのタンパク質を構成するアミノ酸は、犬にとっての必須アミノ酸のうちいくつかが極端に少なかったり含まれなかったりするからです。
犬の必須アミノ酸は全部で10種類あります。
数字を単純化して例えますと、ある食品では10種類のアミノ酸のうち9種類は必要な量が100%含まれるとします。
しかし残りの1種類は50%しか含まれないとすると、残りの9種類も活用されるのは50%分のみです。
残りの分はアミノ酸としての働きではなく、単なるエネルギー源として利用されます。
アミノ酸は体内で別のアミノ酸やビタミンを合成するのに使われたり、各臓器の働きをサポートします。
10種類の必須アミノ酸のうち何かが少ないと、これらの本来の働きに支障が出るということです。
小麦やコーンのタンパク質がメインのフードでは、大抵の場合は足りないアミノ酸を
添加物としてプラスしたり、肉類や魚のミールが使われていることも多いです。
けれど原材料一覧を見て「これではアミノ酸が足りないのでは?」と思うレシピも少なくないし
ミールは高温調理でアミノ酸が損失してしまう場合もあります。
やはり原材料として肉や魚そのものが使われている方が、アミノ酸のバランスが取れていて安心です。
これはグレインフリーであっても肉類や魚よりも豆の方が多かったりする場合には同じです。
・グレインフリー、グルテンフリー、低炭水化物
グレインフリーという表示はよく目にしますが、ペットフードにはグルテンフリーと表示されたものもあります。
どっちもグで始まるし、なんとなく似ていてややこしいですよね。
グルテンフリーは小麦、大麦、ライ麦、オート麦を含まないフードです。
麦のタンパク質であるグルテンを含まないフードという意味だからです。
グルテンを含まない米やコーンを使っているグルテンフリーフードもあります。
(コーングルテンはマーケティング上そのような名前を使っていますが
麦のグルテンとは完全に別のものです。)
グレインフリーフードは全てグルテンフリーですが、グルテンフリーフードはグレインフリーでない場合もあります。
またグレインフリーフードは低炭水化物だというイメージがありますが、
グレインフリーでも豆、カボチャ、イモ類が使われている場合は低炭水化物ではありません。
ジウィピークやK9ナチュラルのフードはグレインフリーで炭水化物もほとんど含みません。

「長かったね〜」
グレインフリーについてさらっと復習しようと思ったのに、やたらと長くなってしまいました。
抜けていることや、分かりにくい点がありましたらご指摘ください。