前々から療法食のことは気になっていたのですが、アレルギーの療法食のことで
メッセージをいただいたので、ちょうど良い機会だと比較してみることにしました。
メッセージをくださった方は、ご愛犬に皮膚症状などはないそうですが
1日のウンチの回数が多いことから、タンパク質が合っていないのかもしれないと
獣医師から言われて、これらアレルギー対応のフードを勧められたとのことです。

「え!?ウンの回数が多いとアレルギーですって?」
そうなのよ。調べてみたら、最近はそういう診断が増えているようですね。
アレルギーと言っても見た目ですぐに分かる皮膚症状が無くて
嘔吐や軟便、下痢を伴って1日の排便の回数が多い場合は食べているフードに使われている
タンパク質にアレルギーがある可能性があるんですって。
1日3回以上排便がある場合は、アレルギーを疑ってみてと書いているサイトもありました。
ニヤなんてうちに来てから13年近く、ずーっと1日4〜5回がデフォなんですけど!
日本語で検索すると上記のように説明している動物病院のサイトが複数あったのですが
英語で検索すると、それに該当するような情報があんまり出てこない...。
排便の回数で調べてみると、多くの獣医療系サイトが1日1〜5回を普通としていました。
そしてポイントは出てきたウンの状態。形がしっかりしてニオイも強過ぎないのが理想。
多少回数が多くても、良い状態のものが出ているならOKと書かれています。
回数はフードの食物繊維の量、個体差などで変化が大きいので、それだけで判断せずに
総合的に見てどうなのか?という観察が必要なようです。
排便の回数はともかく、食べ物に関連するアレルギーは消化器官に影響しやすいのは確かです。
次にあげていく4つのフードはアレルギーまたはお腹の弱い子向けの療法食です。
いつものように全部の原材料というわけには行きませんが、ポイントを押さえて比較してみましょう。
まずは動物病院で買う療法食と言えばこのブランド。
ロイヤルカナン アミノペプチドフォーミュラ です。
コーンスターチ、加水分解フェザーミール(アミノ酸およびオリゴペプチド)、ココナッツオイル
大豆油、植物性繊維、チコリー、フラクトオリゴ糖、魚油、動物性油脂、マリーゴールドエキス(ルテイン源)
乳化剤(グリセリン脂肪酸エステル)、アミノ酸類(L-チロシン、L-リジン、タウリン、L-トリプトファン
DL-メチオニン、ヒスチジン)、ゼオライト、ミネラル類(K、Ca、P、Zn、Mn、Fe、Cu、I、Se)
ビタミン類(A、コリン、D3、E、ナイアシン、C、パントテン酸カルシウム、B6、B2、B1、葉酸、ビオチン、B12)
保存料(ソルビン酸カリウム)、酸化防止剤(BHA、没食子酸プロピル)
※追記 2021年から酸化防止剤がミックストコフェロールとローズマリーエキスに変更されています
見ていただくと分かるように、この製品には普通の肉や魚は使われていません。
「いくらアレルギー対応といってもそれで大丈夫なの?」と不安になりますよね。
このフードはとにかく消化器官に負担をかけずに簡単に消化するという点にフォーカスしています。
炭水化物源としてはトウモロコシからデンプンだけを精製して取り出したコーンスターチ。
お料理にも使うおなじみのサラサラの粉ですね。もちろん消化が良いです。
次の加水分解フェザーミール、これがこのフードのメインタンパク源です。
カッコ書きでアミノ酸およびオリゴペプチドと書いてある部分について説明して行きます。
加水分解フェザーミールは鶏など家禽の羽毛を加圧加熱(多分酵素なども使っている)して
本来はあまりタンパク質を含まない部分からアミノ酸とペプチドを抽出したものです。
タンパク質という物質は20種類のアミノ酸が組み合わさって出来ています。
大豆タンパク、鶏肉のタンパク質、魚のタンパク質、アミノ酸の組み合わせ方はそれぞれに皆違います。
個々のアミノ酸はタンパク質を作る最小単位で、アミノ酸が50個以上結合したものがタンパク質です。
そして50個未満のアミノ酸が結合したものはペプチドと呼ばれます。
(実際にはタンパク質は50どころか何百ものアミノ酸が結合しています。
また50ではなく100個以上がタンパク質という説もあり、厳密な定義はないようです。)
ペプチドはタンパク質よりも単位が小さいので、より消化吸収し易くなります。
ペプチドの中でも、アミノ酸が2〜10個のものはオリゴペプチド、11〜49個のものはポリペプチドと言います。
このフードは最小単位まで小さくなったアミノ酸と、その次に小さい単位のオリゴペプチドで出来ています。
タンパク質がペプチドの単位にまで小さくなると最早アレルゲンとなりません。
例えば鶏にアレルギーがあっても、鶏の羽から作った加水分解フェザーミールではアレルギーが起きません。
しかし羽毛というのは本来栄養成分の乏しい部分ですから、いくら分解抽出しても足りない種類のアミノ酸があります。
犬の場合、体内で合成できず必ず食物から摂取しなくてはいけない必須アミノ酸は10種類です。
原材料一覧のうちアミノ酸類(L-チロシン、L-リジン、タウリン、L-トリプトファン、DL-メチオニン、ヒスチジン)
というのが、足りない種類のアミノ酸を添加物として補っている部分です。
次に国産の療法食であるドクターズケア アミノプロテクトケアを見ていきましょう。
コーンスターチ、ポテトプロテイン、植物性油脂、セルロース、フラクトオリゴ糖、ポテトエキス
アミノ酸類(アルギニン、メチオニン、フェニルアラニン、リジン、ヒスチジン、トリプトファン、
イソロイシン、ロイシン、バリン、スレオニン、アラニン、グリシン、タウリン)、
ビタミン類(ビタミンA、ビタミンD3、ビタミンE、ビタミンK3、ビタミンB1、ビタミンB2、
パントテン酸カルシウム、ナイアシン、ビタミンB6、葉酸、ビオチン、ビタミンC、ビタミンB12、
塩化コリン、イノシトール)、ミネラル類(炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸カリウム、
塩化ナトリウム、塩化カリウム、酸化マグネシウム、鉄アミノ酸複合体、硫酸鉄、亜鉛アミノ酸複合体、
炭酸亜鉛、マンガンアミノ酸複合体、炭酸マンガン、銅アミノ酸複合体、硫酸銅、ヨウ素酸カルシウム、
硫酸コバルト)、酸化防止剤(ローズマリー抽出物)
この製品には動物性のタンパク質が一切含まれていません。
前述のロイカナ同様に炭水化物は精製されたコーンスターチなので消化性が高いものです。
タンパク源はポテトプロテイン 、名前の通りジャガイモのタンパク質です。
ご存知の通りジャガイモの主成分は炭水化物です。
片栗粉の名前で流通している馬鈴薯デンプンは私たちが目にするジャガイモ炭水化物の代表ですが
精製されたジャガイモのデンプンは様々な食品の原材料として広く利用されています。
そのデンプンを精製する時に僅かに含まれるタンパク質が取り除かれます。
かつてはほとんどが廃棄されていたそうですが、このタンパク質を集めて精製したのがポテトプロテイン です。
犬のタンパク源として理想的ではないですが、肉にも魚にもアレルギーがある場合には
救世主とも言える選択肢です。
ドクターズケア ではエンドウ豆タンパクの製品もありますが、エンドウ豆の方がポテトよりも
元々のタンパク質含有量が多く精製が容易なせいか、価格は少し低めになります。
植物性のタンパク質ですから、不足する必須アミノ酸はサプリメントが添加されています。
ロイカナもドクターズケアも精製した炭水化物と精製したタンパク質各1種類に油脂類をプラスした
とてもシンプルな三大栄養素のベースに、必要なビタミンミネラルのサプリメントを添加したフードです。
単一のタンパク質では十分に摂取できないアミノ酸もサプリメントとして添加されています。
必要な栄養素をコンパクトにまとめたSFに登場する未来の食べ物みたいですね。
残り2つの森乳とヒルズのフードは、もう少し一般的なフードに近い感じです。
森乳アレルギーマネジメント
ポテト、サーモンミール、ホワイトフィッシュミール、動物性脂肪、 植物性油脂、トマトミール
フィッシュダイジェスト、食塩、レシチン、イノシトール、 ユッカ抽出物、グレープシードエキス
ビタミン類、(A、C、D、E、K、ナイアシン、B2、 パントテン酸、B12、B1、B6、葉酸、ビオチン、コリン)
ミネラル類(Ca、Zn、Fe、Mn、Cu、 I、Se、Co)、アミノ酸類(タウリン、トリプトファン)
酸化防止剤(トコフェロール、 クエン酸、ローズマリーエキス)
この製品は炭水化物はジャガイモ(多分、乾燥粉末だと思います)
タンパク源はサーモンと白身魚のミールが使われています。
ミールとはお馴染みの「油分を搾った後に高温で加熱乾燥して粉に挽いたもの」です。
本来、魚肉は犬にとって必要なアミノ酸が全て含まれているのですが、高温での加工の際に
損なわれるアミノ酸もあるため、タウリンとトリプトファンが添加されています。
肉類にアレルギーがある場合には、有効なフードだと思います。
ただ、このフードにはオイルを搾った後の魚肉であるフィッシュミールと風味付けのフィッシュダイジェストだけで
オメガ3脂肪酸のソースとなるものが十分に含まれていません。
このフードを利用する場合はフィッシュオイル などオメガ3脂肪酸をプラスしてください。
ヒルズ プリスクリプションダイエット
ポテト、ポテトスターチ、ダック、ポテト蛋白、動物性油脂、植物性油脂、ポークエキス(加水分解)
魚油、セルロース、ミネラル類(カルシウム、リン、ナトリウム、カリウム、クロライド、銅、鉄、マンガン
セレン、亜鉛、ヨウ素)、乳酸、ビタミン類(A、B1、B2、B6、B12、C、D3、E、ベータカロテン、
ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチン、コリン)、アミノ酸類(タウリン、トリプトファン、
メチオニン)、酸化防止剤(ミックストコフェロール、ローズマリー抽出物、緑茶抽出物)
この製品もポテトが多用されていますね。ポテト、ポテトスターチ、ポテト蛋白(プロテイン)は
前述の製品で説明した通りです。
ダックは水鳥で、地上で暮らす鶏やターキーよりも運動量が多いため肉の鉄分が多く
アミノ酸組成もやや異なるため、鶏肉にアレルギーがあっても大丈夫な場合が多いです。
ミールではなく生の状態で原料として使われているので、調理後の水分が飛んだ状態では
実質の量はかなり少なくなっていると思われます。
なのでこの製品のタンパク質のメインは多分ポテト蛋白ですね。
そのせいか、やはり3種類のアミノ酸が添加されています。
ヒルズのアレルギー療法食では、もう1つz/dという加水分解チキンをタンパク源とした
ロイカナのアミノペプチドフォーミュラ に近いものがあります。
権利の問題でペプチドという名前が使えないのかと推測しますが、考え方はほぼ同じだと思います。
z/dはここで挙げたd/dよりもさらに症状が重いアレルギー向けのフードですね。

「話が長いねえ...」
フード4つだからねえ。でもまだ続くよ。
どちらかと言うと前半の2つの方が強い症状向け、後半2つの方が軽い症状向け。
価格を比較すると
ロイカナ 1kg 約3000円
ドクターズケア 1kg 5400〜7200円(高っ!) 3kgなら9000〜9600円
森乳 3kg 約5000円
ヒルズ 3kg 約5000円
ロイカナとドクターズケア はかなりお値段高めです。
ちょっと「え!鳥の羽とかカタクリ粉の副産物とか、捨てられるはずだったもので作ってるのに?」と
ひねくれたことを言いたくなってしまいますが、これは研究開発費が反映された結果ですね。
大手メーカーの研究開発の費用は莫大ですから、次の研究のためにも製品価格への反映は大切です。
どの製品が良いか悪いかと言うよりも、愛犬の状態と照らし合わせて最善を選ぶことが必要ですね。
例えば、あらゆる検査をして病気や寄生虫は見つからないのに、下痢や血便が続くと言うような場合
速やかに胃腸への負担を軽くしてくれるであろうロイカナやドクターズケア は良いチョイスだと思います。
どんなに手を尽くしても改善しない皮膚症状などの場合も試してみる価値があると思います。
そこまで深刻ではないけれど、ずっとスッキリしない。魚やダックにはアレルギーがないことがわかっている。
そんな場合にはまずヒルズや森乳で様子を見てみるのも良いかと思います。

「あら、珍しく文句言わないの?」
もちろん言う。
それぞれにメーカーが総力をあげて開発している製品であることは分かるのですが
アレルギーや消化器疾患というデリケートな症状向けのフードなのに
なぜ原材料の表記に「動物性脂肪」「植物性油脂」というような、具体的な内容が分からない書き方をするのか。
油脂類も種類が変われば、効能も変わるのですから、これは困った点ですね。
ロイカナはココナッツオイルや大豆油と種類を明記していて、その点は安心です。
しかしこのメーカーの恒常的な問題とも言える合成の保存料と酸化防止剤は引っかかります。
保存料(ソルビン酸カリウム)、酸化防止剤(BHA、没食子酸プロピル)
これね
いくら安全と言われる量を守っているとは言え、なんで具合の悪い動物のフードに
こんなもの使うんでしょうねえ。
追記 2021年からBHAと没食子酸プロピルは天然由来のものに置き換えられました。
ソルビン酸カリウムは引き続き使用
しかし療法食を勧められるというのは、何はともあれ今現れている症状を何とかしなくてはという場合が多いはずです。
原材料で不明な点はメーカーに直接問い合わせて確認しましょう。
添加物など気になる点は、症状が改善した時点で対策を考えても大丈夫です。
愛犬の今の症状を改善することが急務という時には、こうして腹を括ることも必要かと思います。
またナチュラルハーベスト 、アニモンダ、ナチュラルバランス、HALO、フォルツァ10など
症状別のフードを出しているメーカーで試してみたいものがある場合には
原材料一覧を持参して獣医さんに相談してみてください。

「ニコが病院のフード食べなきゃいけなくなったらおかーさんはどうするの?」
ケースバイケースだね。
「あがさんならどうする?」とご質問があればコメント欄からどうぞ!