早春 俳人永尾宋斤

祖父で「早春」を大正15年2月に主宰・創刊した永尾宋斤の俳句・俳語・俳画などからひもといています

宋斤の俳句「早春」昭和十七年七月 第三十四巻一号 近詠 俳句

2022-09-20 | 宋斤の俳句を大正十五年「早春」創刊〜昭和十九年休刊までひもとく
宋斤の俳句「早春」昭和十七年七月 第三十四巻一号 近詠 俳句


     近詠
暁天の星こそ夏のみなぎれり

友等戦ふ南に北に雲の峰

梅雨出水街川空に月朱なり

青鷺や筏䌫ひて人去れば

汁襲を解きつ青葉の縁ひろし

宛字して義山と書せし筺も古し

馬洗ひ戰野の夏を瞼にす

紫陽花のあかるきに頬々女の子

かたばみの咲十薬の咲住むとなく

空地畑閑却されて胡蘿匐咲く

梅雨豪雨來竹桃の確と咲く

滴りの諸手を漏れてしたゝれり

根あらはに咲く月見草貰ひけり

蓮池の隅の板橋家路なる

小判草茂り束ねて鉢に植う

ものゝ音しづかに遠し燈に守宮

凌宵や土塀は大和奈良外れ

蛸の木は知らねど似たり木下闇

尾が消えて園内の徑寺山へ

露草はたくましの莖もろく折れし

植田のぼりに來て峡づまり巌壁す

可々大笑壁に背を打ち蚊火を揺り

    近江にて
降らぬまま旅來し湖の夏霞

義仲寺の芭蕉のすそを梅雨の蝶

梅雨の湖全く拾ひ日和なれ

翁の墓前の金魚の水に心解く

湖ぞひの町すでに夏つばくらめ

梅雨晴れや打出の濱の一官署

   雄琴溫泉
溫泉のあれば町少し付く植田道

脚病めど溫泉なれば登る新樹坂

青蛙溫泉の庭下駄を履けば居る

垣杉に張る女郎蜘蛛湖高し

みづうみを簾越しなる一日す

  第十六回「楠公忌」修営記

しばらくは村家の茂り夏山路

石崖の土塀の小みち歯朶は夏

  恩智地城址
葉櫻のなかに一碑が城址かな

  山麓
若竹の底の明るさ蝶のゆく

眺望や投げ出す足を蟻わたる

  黄檗禅寺 梅巌寺 
山の晝つゝじが褪せて縁のさき

  梅巌寺句座
楠公忌河内山邊のつづきゆく

楠公忌母木の里の山光に

  冬の菊
冬の菊うしおrはるかに丘の線

山水の末の厨邊冬の菊

冬の菊雲にみだれのなき日哉

かれ芝の中一石と冬の菊
   
  大阪護国神社献詠俳句會 昭和十七年六月七日
百合ひとつひとつを神のしろしめす

北満の百合を移して神寶

百合の花神に齋きてそよぐなる

  故越野麥存氏追悼俳句會 兼題「春寒」席題「椿」
奥瀧のひゞきといふを春寒き

春寒く寺へのぼりの地の蒼み

掌上にさらにたゞれし椿かな

  六橋觀偶會
高き燈のひとつ咲きゐる新樹かな

新樹なか街道なれば燈のならぶ

跫音を地がぬすむなる新樹かな

  爽明會
降る空のいちにち保ち女貞花

ねづみもち寺内俗住みもの干して


  




   
 














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