
宋斤「思い出の記」俳句の部 昭和六年(二)
名張行
屏山棲子を訪ふこと十二年ぶりなり
日盛りを入るに藍壺ひやゝかに
藍壺と子供増やして裏涼み
屏山桜は紺屋伊八なり
行水やこうや伊八が爪の藍
句を忘れたるに非ずと鮎を焼く
峯巒のなかの祭の町むすめ
ひと立ちて蛾を払ひなど花火待つ
手花火にあそぶ花火の間かな
手花火に己れ照らされ歌妓のあり
花火の夜しまひになりぬ山と水
夕辻に虫聴く草の一所かな
ふところに勝留め海蠃と柿とかな
干し竿に秋は日の雨鳩とまる
わざをぎの素顔を秋の日に見たり
星座仰いでしばらく遊ぶ夜学哉
蓮池の風ふところに冬近し
短日の夜になれば往く句会あり
「宋斤思い出の記」は、祖父宋斤の七回忌(昭和25年5月)に,父 要がガリ版刷りの手書きで 宋斤の俳句の部として記念発行したものです。大正十五年より 年ごとにご紹介しています
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます