早春 俳人永尾宋斤

祖父で「早春」を大正15年2月に主宰・創刊した永尾宋斤の俳句・俳語・俳画などからひもといています

宋斤の俳句「早春」昭和八年三月 第十五巻三号 近詠 俳句

2021-07-17 | 宋斤の俳句を大正十五年「早春」創刊〜昭和十九年休刊までひもとく
宋斤の俳句「早春」昭和八年三月 第十五巻三号 近詠

  桃山御陵参拝 (四句)
早春や御陵のみちに柴車

御陵いままどかに霞妙へなるかな

つくばひてゐること暫し東風を知る

みさゝきを拝み待れば春小雪

  伏見にて
春の田にちるや伏見の陶の屑

春の日の伏見に買ひぬ竹の筒

初午の過ぎし春寒むお山みち

茶畑のさびしへ下りる春の山

町裏の登り降りや小囀り

  雀の宿にて (三句)
久に来て雀のお宿やゝ日長

雀の宿の網行燈も巣なりけり

瓢の巣に雀留守なる春寒き

  深草にて
春寒し地を来る風の瑞光寺

  云わずも哉、元政上人の墓は竹三竿を植えてしるしとす
春の雲竹三竿の秋はじめ

元政忌如月竹の秋はじめ

霧の實の草も枯れ實の春淺し

深草や春の日暮れて燈のぬるゝ

  高瀬川
水の邊や行手明かりの冴返り

行く手の燈往けば外れたり冴返り

来る道に彼の燈ありし歟冴返り

水の夜の街離れ往くも冴返り

  騎兵聯隊所見 (二句)
草萌を食って放馬の逃げ交わす

長がき刀藁で磨いて騎兵春

何時とより機窓開いて梅暦

緑の日に鶯笛もぬくもりぬ

風呂敷を道にひろげて目刺買ふ

干鱈なる貰ふて携げて街あそぶ

蕗味噌や富士なる蓋の摘み高



爐に干すや風雨もどりし旅衣

海の荒今宵に止まじ爐にひゞく

爐邉親し超え来し山の句をものす

  早春社本句會
未開紅野の日の軒に床几哉

山里や霧のあとの未開紅

未開紅鳥に寒さの見えにけり

春立ちて月に十日の歟雲のなか

春立てる汐騒とこそ窓邉かな

  同人吟
老ひが中よき子はさみて春道邉

  早春社正月例會
もち花の柳に芽あり小正月

小正月みち行く艸に歸り花

硯屏に一枝かゝるやむろの梅

むろ咲くやあしたに匂ふ櫻炭

山茶花に酌むと登や小正月

梅が香や鳥を小径に追ふてゆく  

十年を御店つとめの火だこ哉

 早春社白梅婦人俳句會
年の瀬の木の原往けば神ともる

まどの春東入る日も風も哉

南天に雪降り絶えて朝日かな

南天や隣とへだつ小袖垣


 早春社東句會初會
枡に盛る寒の内なる小魚かな

探梅の垣内ぬすめば機の音

 早春社上町倶楽部初會
大福の梅を懐紙にそましけり

明るよりほのと茜の大福茶

冬凪の帆の来て溜る江口かな

菜畑や正月まろき月いでゝ

 早春社立春會初會
初明けて松いにしへに海もまた

三朝や海のなぎさの濃き霞

 早春社今津例會初會
その影の障子ひらきし干菜哉

庭前の巨石にのぼりて寒ぬくし

 早春社一水會納會
正月も三日古りたる霞かな

餅花や一枝はねたる雪の窓


最新の画像もっと見る

コメントを投稿