早春 俳人永尾宋斤

祖父で「早春」を大正15年2月に主宰・創刊した永尾宋斤の俳句・俳語・俳画などからひもといています

宋斤の俳句「早春」昭和六年四月 第十巻四号 近詠 俳句

2021-06-04 | 宋斤の俳句を大正十五年「早春」創刊〜昭和十九年休刊までひもとく
宋斤の俳句「早春」昭和六年四月 第十巻四号 近詠 俳句

   近詠
芝の夜に陀韃ひゞくお水取り

春の海のこまこまと照る帆なりけり

耕すや古池の日に鳥が浮く

草春に心そだつと臥ておもふ

飯蛸や紅梅すでに散り失せて

梨の花咲けばさびしき遠き山

末黒野の月は細けれ風の雲

街道の松は遠みち菜種ばな

更けて更けて軍港よろし春の月

土ぬくし厨の百合根を盗み植ふ

渡舟にも眩暈のをんな雲雀啼く

宿の庭野より花さく馬酔木かな

巡禮や鳥淫らなるを歩に追ふて

海原に入る日の薊曇りけり

花の夜の星やどれから消えそめし

囀や花か木の芽か雨匂ふ

雛の座のみなでも足らず祖母が歳

鳥雲に巫子欄に袖垂らす

   早春社三月本句會
祝きまつるけふの春光雲の上

昆陽寺の雨の門前もろこ賣

ぬるき日の燕も里の小鳥哉

初諸子いのちを鉢に泳ぎけり

   早春社神戸句會
境内の燈にひとふたり梅を見る

ゆたゆたと舳あつめて雪の舟

   早春社紅葉句會 桃水庵
藪浅く末社初午ともしけり

村の空凪が増えたり麥を踏む

   早春社今津句會
橋の燈の渡るにゆれて夜の雪

杜氏の唄やみて夜の雪降るとしも

   早春社上町倶楽部例會
女正月この家の狆の病気哉

狸汁自在の空の夜のかげ

   二月例會
早蕨やもん平穿いて女の童

蹴合雛白雲急と見据えたり

  早春社富士紡例會
如月の江崎の燈星と連なる

  早春社大鐘句會
焼野来て一眉の山浮きにけり

  故三草子追悼句會
三草山みんなみうけて冴帰る

  冬の句座 (編輯所)
 昭和五年十一月十六日 編輯室には夜も晝がない宋斤先生の机上には山のような句稿である。かたはらの机では木常氏が黙々とペンを走らせてゐる。其処へ大和田から薪社友紹介かたがた桃水氏が見える。毎日の雨村、青花の両君が来る。肥大な浩正氏が来る。椅子が足らなくなったので冷たい籐椅子を持ち出す。
  籐椅子をなほも用ゆるちり紅葉
の姿情である。
 夕方雨が止んで皆が相続いて帰って仕舞ふ。夜は夜で原稿の整理中へ壺白氏が東句會のことで久しぶりの来訪がある。晝の題でくをつくってもらふ。十一月の編輯室はかくして新年号へ多忙を極めてゐる。昭和六年新年号は磊明帳(写真版16頁含)110頁となる。

   踏青句會 大阪市役所
塔や霜大晴れに鳥の飛ぶ

寒菊にしばらくぬくき地靄哉

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