定本宋斤句集 冬 5
風邪 川舟の焚く火が寒し風邪ごもり
我かげの壁に伸びしは風の神
野施行 野施行淵川すぎて行く燈かな
寒玉子 寒玉子ただ一呑みに吸へといふ
寒紅 寒紅やいっしょに包むみすや針
冬の燈 冬の燈に向いて正しき菊の顔
冬の燈はみなが見てより頬にぬくし
神農祭 神農祭久し往かざる船場かな
宗鑑忌 宗鑑忌幾夜の庵の尼ケ崎
久々知廣満寺の近松忌に参りて
近松忌 夜は寺に浄瑠璃ありて近松忌
翁忌 陶像の古びかろかり翁の日
水鳥 水鳥にかくれてやりぬ治水の碑
水鳥のみなが陸つて落ち葉ふむ
笹子 俗住みて寺内干すもの笹子啼く
笹鳴くや墨の巾なるほそ硯
凍鶴 凍鶴の嘴がぬけ羽を惜しむけり
梟 梟やはるか燈を出す由戸あり
青有居に小憩句座
障子外に人の聲する梟哉
寒鴉 寒鴉雪の彼方に歩み去る
冬の鵙 病むものを罵り去れり冬の鵙
冬の蝿 少年の頬をあましと冬の蝿
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