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定本宋斤句集 冬 6
兎 寺庭や暮れをぬすみて兎出る
根水仙 日にぬくむひとつの水や根水仙
返り花 返り花その英の涼しさよ
山茶花 山茶花の透くはなびら散り易く
巫女呼ばれゐて山茶花を戻るかな
平林寺
山茶花のしずかさにゐて旅ならず
山茶花をわすれてゐしがなほ散れり
冬薔薇 寳塚の夜の卓上の冬薔薇
冬椿 冬椿紅千々と畳みける
石露の花 島に居て海わすれゐる石露の花
紅葉散る みなかみへ躍る岩あり紅葉散る
難波赤手拭稲荷神社
枯藤 境内や何も無けれど藤枯れて
枯欅 枯れ欅鳴る一望を行手かな
枯 山彦に招かれつゝも枯れをゆく
枯るゝもの枯れて平らか洽き日
蓮の骨 蓮の骨晴れて人馬の道高し
落葉 落葉照る小さき湊の丘祠
芭蕉蕪村みな冬の忌の庭落葉
朽葉 水底の朽ち葉に枝を呢ましぬ
枯芭蕉 枯れしもの芭蕉ほか無く雪の松
枯芒 かれ芒正月すぎていとふるき
新薬師寺行
こゝら詠みし古句あるべし枯尾花
麦の芽 麦は芽に豆も植えたる日南かな
大根 大根の土出し首ぞ確と冬
上京野火止辺り
小菊黄にみだれ練馬の大根時
枯草 枯れ草のさまも見たしと野を思ふ
草枯れの廣きはてなる鳥あがる
あめつちのやすむすがたに草の枯れ
定本宋斤句集 完
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