定本宋斤句集 冬 3
寒風 寒風や野奥の障子ほの燈る
北風 籠の鶸貧食しては北風に怖づ
虎落笛 虎落笛思ひ出すこと旅にあり
冬野 莖青きものこそ冬の野はぬくし
枯原 枯原の石に母なり乳飲ます
氷柱 大氷柱まどうに添水米を搗く
寒の水 寒の水龍の口より練り落つる
凍 凍つる夜や葛湯の匙を舌に受く
友の死を聞く再ならず冬夜の燈
蝋涙の手にこゞりけり瀧の宮
能楽、室生重英の藤戸を観る
凍つさまに藤戸の母が泣き跼み
庚申昆布はその夜誰れ彼れに頒ち與へて福ありと即ち
夜こんぶをよろこぶに通わせての意なり
火桶 夜ろこんぶ火桶まどひの爪割きに
窮鳥を眼に弄び火桶かな
炭 聞ゆるは苅田に炭を切れるなり
炭團 灰剥いて朝の炭團を劬はりぬ
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