早春 俳人永尾宋斤

祖父で「早春」を大正15年2月に主宰・創刊した永尾宋斤の俳句・俳語・俳画などからひもといています

宋斤の俳句「早春」昭和八年一月 第十五巻一号 近詠 俳句

2021-07-10 | 宋斤の俳句を大正十五年「早春」創刊〜昭和十九年休刊までひもとく
宋斤の俳句「早春」昭和八年一月 第十五巻一号 近詠 俳句

初光り東國のこの海に立つ

わだつみやにしきを敷いて初日いま

元旦や辰巳汲みたる海のみづ

初鴉ありありと来る海のうへ

顔々に海明けて来ぬ初詣で

朝の海の朝日の町の端

香にたちて硯の海も日のはじめ

    ○

元日や謡ふて老が心榮え

海ふかく元旦の魚あそぶ哉

浦船のきしむ音しも淑気哉

初昔鳥いつも来る小枝にも

親え去ぬ正月の子に東風の押す

人毎に朱盃ぬれたり三ヶ日

正月の海に漕ぎ出て澎湃と

往き觸れの老に御慶を云われけり

    ○
水の夜にものふかく居る火桶かな

一丘の暮れをはるかに冬座敷

朝粥を重ねてゐるや冬さくら

一寸の鉛筆なめて掛貰ひ

一人子のひとり牛鍋食うべけり

冬椿寺の小縁に人晴れて

少年の頬をあましと冬の蝿

水仙や脱ぎ疊ある膝袋


早春社本句會納會

来客や家族とするや大火鉢

冬の日に蔓の焼けたる零余子哉

早春社東例會
僧行くを行く手に追つ冬山路

馬市や麓の冬の朝かゞり

早春社無月會例會

冬のはれ大書の墨の乾き行く

冬のはれ野にわすれたる池一つ

早春社十一月例會
汐騒のそこに障子の小春哉

燈籠のはだあたゝかき落葉かな

早春社十五日會例會
小春日のみちにくすぶる芥哉

野にあそぶ心にふめる落葉哉

早春社上町倶楽部例會 十一月例会
はるかより迂曲月照る刈田原

霜枯の對岸打つや舟大工

暮れざまに時雨の小門とざしけり

六橋観句座
釣瓶水秋初風にちりにけり

夜船して秋初風に燈ゆるゝ

秋初風すだれの中にすだれあり

やゝ寒に露の出来稲倒れやう

  早春社一水句會
いくそだび乾く落葉に時雨哉

照って障子の蝿に冬来る


















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