早春 俳人永尾宋斤

祖父で「早春」を大正15年2月に主宰・創刊した永尾宋斤の俳句・俳語・俳画などからひもといています

宋斤の俳句「早春」昭和八年二月 第十五巻二号 近詠 俳句

2021-07-11 | 宋斤の俳句を大正十五年「早春」創刊〜昭和十九年休刊までひもとく
宋斤の俳句「早春」昭和八年二月 第十五巻二号 近詠 俳句

樹々の中ひろき砂原冬ぬくし

往くひとり冬田耕すひとり哉

せきれいの来て来て磧霜失せぬ

正月の満月とこそ仰ぎけり

正月も寒もぬくゝて道の艸

枯原の石に母なり乳のます

大霜に川は潮筋たちにけり

男手に洗濯しぼる冬の川

冴へるなかひと焚きくべし風呂けむり

冬の夜半念佛の往きすぎにけり

しきたりや海鼠の桶のみかん皮

楠の根の走る隆起に雪そむる

子は子だけ根深抱えてぎくぎくと

枯茂りこゝらよりして里訛り

水鳥のみなが陸つて落葉ふむ

我かどのつまむ一二の落葉かな

庭なくて土尊しや鉢の枯れ

冬のみち馬に烙印打ちにけり

莖青きものこそ冬の野はぬくし

柴枯れの山の一奥めぐりけり

山主の指す大石の霜日南

菜園の霜にふみ入るばかり哉

紐切れの長くたれしに冬の蝿

蔵の中窓の網戸の冬日かな

石段くらくらなかなか登る冬の夜

冬の日や餅の簀干しの端の減り

冬なれば水面明かりに枯芭蕉

往く足に茶店のけむり冬の夕

  早春社初本句會
七草を囃す率土の門の臼

七艸を老がはやして谺かな

女の童摘むはひとりの若菜かご

年々や納豆たまはる大徳寺

年々やもろ手にくめば水若く

  早春社今津句會 八月例會
垣の内芙蓉が咲くや夜のみち

草履あれば潜る樹の下秋の月

  早春社浪速句會例會
焚火してゐる間に山は暮れはてぬ

懐爐を道にて吹けば梟鳴く

  早春社神戸東山句會例會
冬の浪入江ほとりの早燈

枯柳雨のかはきて市往来

 早春社一水句會
いくそたび乾く落葉に時雨かな

川照って障子の蝿に冬来る

 早春社師走例會
冬ざれや射す日のまどの髪油

年内や床のほこりの根水仙

冬ざれの枯れ枯れ立ちて田の厳

たづね入る寺の寒さや年の内

 早春社例會納會 闇汁會の記
闇汁や外の闇より霧匂ふ



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