普通列車は8時44分に新函館北斗に着いて、6分間停車しました。
駅のホームは想像以上に狭く、そのホーム幅が凡その利用客数を教えていました。
このとき普通列車から5~6人の乗客がホームに降りて乗車中の列車の写真などを撮影していました。
多分その全員が青春18きっぷ利用で旅する趣味人の筈です。
私もETさんもその中に含まれていたのは申すまでもありません。
新函館北斗を出た列車は仁山駅へと少しずつ標高を高めてゆきます。
仁山駅は、函館本線が20‰の急勾配で山岳丘陵地帯へ上る途中で、列車交換の為に設けられた信号所でした。
仁山駅付近から函館方向を撮影すると、その中に函館山が写り込んでいました。
仁山を出た列車は、国定公園に指定された大沼駅へと向かってエンジン音を響かせます。
そしてほどなく、車窓左手に大沼が見えてきました。
私はETさんや周囲の方達に聞こえる程の声で「あ、大沼」と声を発しました。
旅行者らしき乗客が、カメラやスマホを持つ手を車窓にかざしました。
長万部行きの普通列車は、日本新三景の一つに選ばれた景勝地を車窓に映しながら、次第に観光列車の雰囲気を漂わせ始めました。
そして、列車は大沼駅に停車し、
大沼公園駅へと進んで行きます。
しかし私は、この辺りから車窓の景色を同行の旅人達に譲ることにしました。
何故かと言えば、私がこの辺りを普通列車で旅するのは今回が三度目なのです。
初回は、2018年9月に東北のヒガンバナを訪ねる旅の途中、北海道でスズカケノキを見たくて、青森埠頭に車を置いて、フリー切符で道南を訪ねた時、そして二回目が2019年の青春18キップの旅で、この辺りの景色を堪能しています。
人間欲張ったら碌なことはありません。初めてこの地を旅する人に窓の景色を譲らなければ、私はきっと地獄に落ちます。
そして列車は赤井川駅に停まり発車しました。
ちょっと蛇足ですが、北海道の小樽市に南接する赤井川村という村がありますが、この駅と赤井川村は一切無関係だそうです。
赤井川駅を過ぎた頃から、私が座る進行方向右手車窓に駒ヶ岳の姿が見えてきました。(この先の駒ヶ岳の写真は2018年9月に撮影したものです)
列車は牧草地や馬鈴薯畑を見下ろす駒ヶ岳を眺めながら、緩やかな山麓を走り下り、
やがて噴火湾の岸辺に佇む森駅に到着しました。
ホームに降りて函館方向を振り返ると、鈍色に光る鉄路の先で駒ヶ岳が微笑んでいました。
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