富良野行きの列車は美瑛駅を出ると、美瑛川と空知川の分水嶺となる丘を上り、美馬牛(びばうし)駅に停まりました。
もしかすると、この駅のプラットホームに育つのはアカマツかもしれません。
しかし、アカマツに良く似たヨーロッパアカマツという木があります。
その木は耐寒性があって、シベリアなどにも分布しますので、一目見ただけの判断は控えるべきです。
ところで、この美馬牛駅で旭川行きの列車とすれ違いました。
それで気付いたのですが、富良野線のほぼ中間点がこの辺りなのです。
富良野線は旭川と富良野を結ぶ全長54.8kmの単線で、美瑛-旭川が23.8km、美馬牛駅-旭川が30.6kmですから、美馬牛駅で上下線の列車がすれ違うのは、さもありなんです。
美馬牛駅は周囲を防雪林に囲まれますので、景色は良くありませんが、この辺りを車で走ると、北の方角に、麦畑や馬鈴薯畑の先に大雪山系の旭岳、
そのまま視線を右へ移すと十勝連山の峰々
そして、清々しい富良野岳の姿を堪能することができます。
美馬牛駅の横の踏切を渡って、丘の上に続く道を進むと、丘の斜面を花で飾る「四季彩の丘」や、先に紹介した風景写真家の前田真三さんの作品が展示される拓真館が貴方を待ちます。
列車が美馬牛駅を出て、5~6分後に、丘の斜面の下に上富良野の街が見えてきました。
上富良野町は富良野盆地の北端に位置しており、冬はマイナス25℃を下回ることがあります。
私が旭川に住み始めた最初の頃は、この駅で列車を降りて、バスで十勝岳温泉まで行き、そこから富良野岳を目指しました。
当時のバスは、トトロの森に出てくるようなボンネットバスだった記憶があります。
山から下りて十勝岳温泉の露天風呂に入り、一風呂浴びた後で呑むビールの味は格別でした。
そして思い出すのは、旭川から北へ50km程の場所に士別という街があり、その街で開業するお医者さんが、自宅で高山植物を育てるのが趣味なので、私は何度か、高山植物を目的に、富良野岳をご案内したことがあります。
その頃私は独身でしたから、金曜日の夕方に士別の医院を訪ねると、「今日は泊まってゆきませんか」と誘われ、夕食後に美酒を振る舞われながら、仕事の話しなどは一切せずに、山や高山植物の話に花を咲かせることが度々でした。
上富良野駅を出ると、列車は5分後に西中駅に停まりました。
今回駅名の由来を調べると、中富良野町の西部にあるからの命名だそうです。
列車1両程の長さのホームだけの駅がニンジンや玉ねぎの畑の中にポツンと佇んでいます。
そして私が座る席のすぐ横で、北海道に来たことを感じさせるオオイタドリが、白い花を咲かせていました。
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