美瑛を出発した列車は直ぐに美瑛川を渡りました。
この美瑛川は十勝連峰北端のオプタテシケ山と大雪山南部のトムラウシ山を結ぶ稜線鞍部から流れ出る一級河川です。
そもそも美瑛という地名は、アイヌ語のピイェ(脂きっている)が語源で、この川が十勝岳の硫黄を含んで乳白色に脂ぎったことに由来します。
そして美瑛川の上流には、常に観光地の上位にランクされる「青い池」があります。
この池は、美瑛川本流に、アルミニウムを含む支流の水が混ざって青くなるそうで、風のない青空が広がる日に見る幻想的な光景は、世界中からの観光客を魅了します。
美瑛川を渡った列車は、上川盆地と富良野盆地の分水嶺の丘へ上り始めました。
ほどなく車窓左手に、十勝連峰の山々が姿を見せ始めました。
私が今回富良野線に乗るルートを選択したのは、この光景が見たかったからです。
十勝連峰の北端に位置し、美瑛川の源流となるオプタテシケ山からトムラウシ山へと続く稜線は見えませんが、若かりし頃に私は、これらの山に幾度も足を運びました。
層雲峡の黒岳から登り、忠別岳、トムラウシ山、コスマヌプリ鞍部、の3泊4日で大雪・十勝連峰縦走をこなしたことも、その逆ルートを歩いたこともあります。
縦走を終えて下山しながら、今度は2泊3日でチャレンジしよう、と思ったことを懐かしく思い出します。
そのオプタテシケ山ですが、アイヌ語の「鉾がそれた」を意味し、妻である雄阿寒岳が怒って鉾を投げつけ、途中で然別の山が伸びあがって鉾を阻止して難を逃れた、という伝説に因るそうです。
アイヌ人も和人の妻も、あ~恐ろしか!
今日は大気中に水蒸気が多く、スッキリした写真は撮れませんでした。
しかし、今は霞んで見える峰々も、雪の季節に、朝日が昇り始めた瞬間、別世界に迷い込んだかと思う光景に変わります。
下の写真の稜線の奥で、御来光を浴びて聳えるのが富良野岳です。
遠くに日高山脈が横たわります。
夜明けとともに神秘の世界が広がる瞬間の喜びを、私は今も忘れません。
そしてほぼ同じ場所で振り返えると、十勝岳が深い眠りから目を覚まし始めました。
旭川で医薬品プロモーションの仕事をしながら、私はこの頃、休日のほぼ全てを山で過ごしました。
5月の連休が過ぎて、雪が解け始めると、高山植物が花を咲かせます。
尾根を彷徨い、湿原のぬかるみに足を取られながら、花を求め、山の景色をフィルムに収め続けていた日々を思い出します。
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