森岡 周のブログ

脳の講座や講演スケジュールなど・・・

実習前、最終メッセージ

2014年01月16日 08時50分18秒 | 日記
昨日の授業は、理学療法技術実習で脳卒中片麻痺に対する平行棒内での歩行をどのように治療的介入していくか、脊髄CPG、基底核、小脳、大脳皮質、それぞれの機能特性から、そして、それに歩行の運動学(歩行周期、筋出力、関節運動、モーメント等)を含め、その実際を実技演習しました。療法士の手は難易度を調節するためにとても大切です。2月からの実習でいろいろ考えながら行動を起こしてください。ただ練習させるだけなら、誰でもできるので。

そして、実習前、これが最後の授業。彼ら彼女らには先週レナードの朝をホールにて大画面で鑑賞してもらいましたので、それをふまえて、以下のメッセージを贈り、最後の授業をフィニッシュさせました。

1. 患者の可能性を信じて行動にうつせ。医療者があきらめたときが限界である。
2.何をもっても治療に置き換えよ。環境には治療のヒントになることが大いにある。
3.それぞれの人生の履歴を治療に使え。脳にはそれぞれの履歴が記憶として刻印されている。そのひとらしさを引き出そう。
4.ひとりの人間としてかかわれ。いつか自分も老い病気になり死にゆく。たとえ動かなくてもその人自身は生きている。
5.自分の人生、その毎日毎日をかみしめろ。つらいこと嫌な事そうしたことを感じられる事は人間としてとても幸せなことである。
6.利他的に生きてみろ。親近者以外へ奉仕することは人間しかできないものである。
7.患者とともに自分の人生を歩め。そして患者に学べ。それが医療者の姿である。

みんな実習での経験、自己の履歴にとって、かけがえのないものにしてくださいね。

アイデンティティ??

2014年01月16日 08時48分05秒 | 日記
昨日の人間発達学が最終章.感覚統合(作業療法がよく使うものではありません。。。)と概念形成、身体イメージ、そして、ピアジェ、エリクソンの理論を使い、これまでのサイエンスとその認知・知能発達図式の接点を考えるつもりで授業に臨みました.

さきほど授業終了.感覚統合から概念形成は詳しく説明でき、五感を使う経験がいかに発達にとって重要か、認知科学、心理学、教育学、神経科学を織り交ぜながら説明できましたが、ピアジェの発達理論の時間が、FDの授業アンケートや試験の方向性の解説などで、十分な時間がとれなく,感覚運動期,表象思考期の深い解説まで到達できなかったことが悔やまれます.

しかし,彼らへのメッセージは,最終的に人間としての自己(self)(Identity)とは何かだったので,それを少し端折っても,アイデンティティ形成の利点,欠点を含め説明できたから良かったのではないかな...これまでの情緒や社会能力の発達に時間がとられ、認知・知能が走ってしまいました.次回への持ち越しです.エラー学習したいと思います.

アイデンティティは人間の能力の多様性や細分性において必要なものであり、今日の文明形成上とても大切なものであるのは間違いありません.しかしながら、それを意識しすぎれば、自分とは?私に何ができるんだろうか?私がすべきものは?などと表象思考するばかりで、実際の行動を感覚運動的になかなか起こすことができません.そもそも、人間は狩猟・農耕と限られた仕事(アイデンティティ)の中で暮らしてきました.つまり、共存して生きることです.それは自分らしさを意識するということではなく、生きるために動く(みなで働く)という行動優先の生活です.この世界観では戦争は起こりません.自分らしさを意識するがあまり、行動を起こすことができず等、そうした迷いの際には、原点に立ち返り、生きるために働く、つまり豊かに生きるというよりは、たくましく生きるほうを彼らには選択してもらいたいと思います.