対談場所:
hotelkoe
落合さん
「俳優って、役に入るタイミングって、二宮さんいつなんですか?
たとえば、現場行くまでの間ずっとその人なのか、それとも現場に行ってから突入するのか?」
ニノ
「オレはね、結構ね、あの、用意スタート!って言うまでは基本的に入らない。」
落合さん
「なるほど。」
ニノ
「それはね、多分恥ずかしがり屋なんだと思う。」
落合さん
「あー。」
ニノ
「なんか、起きて、たとえば、その、前日に、明日やるとこ覚えて、起きて、もうその気持ちになって、行く、ってことが、ちょっとね、まだ恥ずかしいの。
年代的な問題なのかな?
なんか、役が、家に帰ってもずっと抜けきらないで、
怖い役やった時とか怖かったとか、なんか、明るい役やった時はすごく明るかったとか、ってことが一切ない。
もう、用意スタート!っていってカットって言われるこの瞬間だけだね。
だから、毎回。」
落合さん
「切り替わる?」
ニノ
「うん、戻っちゃう。毎回戻っちゃう。」
落合さん
「そうなんだ。
DVDこう見てて、現実世界でこんなお芝居っぽいセリフ、僕は会わないなと思いながら最近見るんですよ、ドラマとか映画とか。
こんなこと言わねえだろうって思うんですけど、そういう時ってどうやって心の整理つけてるのかなって思って。」
ニノ
「だから、オレは基本的にはそこまで、基本的に自分がわからないことは、1回見た人は絶対わからないから言いたくない、
ってのがあって。」
落合さん
「なるほど。」
ニノ
「
なんか、そういうの何回も何回も、1回見て、2回目みたらまた違った見え方しますよってのは、ま、宣伝でね、よく言うんだけど。
どう考えたって1回しか見れない人が、色んな事情で、あるわけじゃん。
その1回の人にも伝わんないものこそ意味のないものはないなって思ってるから。
なるべく噛み砕こうとはしている。」
落合さん
「なるほど。」
ニノ
「なんかそれこそ、専門用語とか出てきたときに、言ったらそれをちゃんとセリフでしゃべったら、その”ぽい”んだけど。」
落合さん
「リアリティーが増すってこと。」
ニノ
「そうそう。
でも、”ぽさ”を伝えたいんじゃなくて、その内容だったりとか、展開を、こう、ずっと、伝えてかなきゃいけないから。
これはちょっとさすがに、なに言ってるかわかんないなってのが、なるべく噛み砕こうとはオレはしてるんだよね。」
落合さん
「ふーん。
作品を見さしていただいた時に、これめちゃくちゃ舞台っぽい人と、めちゃくちゃドラマっぽい人と、なんか色んなの混ざって、超面しれーって見てて。」
ニノ
「(笑)すごいなんか、みんなやりたいようにやらしてもらってるんだね。
そこはもう監督の度量っていうか。」
落合さん
「あー。映画とドラマでどこ違いますか?やる時。」
ニノ
「やる時?でも基本的にはあんまり変わらないかな。
なんか、特に、自分が出る時って、わりと、映画とかっていうものに関しては、すごい普遍的なものでもあるけど、
シビアな作品がすごい多いから。
でー、ほら、
自分はさあ、嵐っていうグループがあって。
嵐でも活動していて。
で、そこの活動をしていることを支持している人達が映画にも来たりするから、
その、社会、このリアルの社会に対しての、なんか、間違った提案はしたくない。」
落合さん
「なるほど。」
ニノ
「意味のある殺人があるんだよ、とか。
これは泣く泣く、仕方なくやってしまった犯罪なんだよ、とか。
そんなものは、なくて。
犯罪は犯罪だし、人を殺したらそれは殺したんだから、それはダメなことなんだっていうのは、ちゃんと、間違ったことを教えちゃうぐらいだったら出ない方がいいと思ってるから。
だから、そこを一番気をつけてるかな。」
落合さん
「なるほど。
ま、たしかに今回検事さんの作品だったんで、新しい映画。
それをこう見てた時に、人間の倫理観っていうのはー、たとえば、僕そうだな、研究してる時とか全ての頭の中から倫理観を排した後だから。
研究してみて、そのあともう1回戻すみたいな作業。
でも、だからたとえばtwitterとかメディアで発信するときは結構気をつけて。
多分、あの、二宮さんが言ったら無条件に信じちゃう人ってのは何万人かいますよね、何十万人か。
でも、そういうことまで考えて自分が演じ分けるってずいぶん器用ですね。」
ニノ
「そうだね、(笑)たしかに。」
落合さん
「そういうことを考えてる前提で器用に振る舞えてると思いながら演じてるのか、それもと自然にそう。」
ニノ
「あ、でも自然かも。」
落合さん
「あー、そうかー。」
ニノ
「昔からなんか、小っちゃい頃からやってるから。」
落合さん
「だから、自然に所作が身についてるのかー。」
ニノ
「うん。」
落合さん
「出てる時とかに、あー、この脚本こうしたほうがいいんじゃないか、とか、
自分が主役だとストーリーについてなんか結構議論したりすることあるんですか?」
ニノ
「ある。」
落合さん
「ある。」
ニノ
「でも、あんまりよくないことだと思う。」
落合さん
「あんまりよくないことだと思う。あ、なるほど。」
ニノ
「うん。
ただ、なんか、しちゃうんだよなー。
それはね、なんかね、もう、ならわしだよね。
あんま良くないことだ。
でも、これじゃなきゃやらない、みたいなことはない!
こういうのはどうですかね?とか、こういう考え方もありますよね?
っていうまず1発目のアプローチの仕方で入ってって、
そこで、はあ、はあ、はあ、それで?それで?っていう風になったら、
またちょっと言って、ちょっと言ってっていう、もう牛歩作戦だね。」
落合さん
「まあ、コミュニケーションですよね。」
ニノ
「うーん。
この間、お医者さんのドラマやってたんだけど。
その時はもう、めちゃくちゃあの、アドリブじゃないけど、こう、ワードを変えて言ってたりしてたんだけど。
オレはもともと、この作品が良くなるように、すごくちょっともうちょっとここは差し込んだ方がいいんじゃないですか、っていう話をしてるんだけど。
小泉孝太郎くんが出てて、孝太郎くんね、全くね、なんにも言わないの。
いや、もうずっとニコニコしながらはい、はい、はい、はい、って。
わかりました、じゃあそうしましょうそれでいきましょう、みたいな。
感じでやってると。
やっぱりね、そっちの方がやっぱすごいなって思っちゃうんだよね。」
落合さん
「どういうことっすか、それ?」
ニノ
「なんかね、許容量がわかんないの。」
落合さん
「あ、なるほど。たしかに。」
ニノ
「全然見えてこないの。
で、1回、孝太郎くんに、えー、でもさ、あそこさ、ホントはさ、ああいう風にしたくないんじゃないの?って。
そしたら、うん、でも、監督が言ってるからね、って言うの。」
落合さん
「すげー絵が浮かんだ、今。」
ニノ
「(笑)すげーなこの人!と思って。
自分がこの役と関わってだからこそ、これが出てきたんだっていうことは、別にもういらないんだ。
監督が言ってるからそうします、はーい、みたいな。
じゃあそれでやってきましょう、みたいな。
で、実際できる。ちゃんと成立させてる。」
落合さん
「ロール&レスポンスシビリティっていうのが、役割と責任がきっちり切り分けられてる。」
ニノ
「そう。
すごいんだよね。それはなんか、それでまた出来ちゃうから。
ああいう人になりたい。」
落合さん
「東京ドームとかで歌ったりする時とか舞台の比じゃないじゃないですか。
お客さんの数。」
ニノ
「やっぱ、あれはすごく特殊だよねと思う。
というのは、僕は最近やらせてもらってるのは、
ドームとかで、5万人とかと向き合ったりするのね。」
落合さん
「5万人って普通向き合わないですよね。」
ニノ
「向き合わないじゃん。
なんかホント、ちっちゃい町ぐらいが一気に集まって。
で、その人たちが同じ方向を向いてる、ってことがすごく重要で。
町ん中で、5万人の町があったとしても、みんな別に全然違う方見てる。」
落合さん
「同じものに集中してることなんてほぼない。」
ニノ
「ほぼないじゃん。
でも、1つの町が同じものにあそこまで集中するっていうのは、
なんか、解明できないかもしんないけど、ものすごいパワーがあって。」
落合さん
「エネルギーすげーなって。
僕、あの、ジャニーズのライブ何個か行かせていただいたことがあって。
やべー、と思うんですよ、あの雰囲気。
で、集中力半端ないっすよね。」
ニノ
「半端じゃないねー。
やっぱ、そこのなんか、なんだかわかんないけど、その、みんなが集中して見る時のものの力っていうのは、こっちの演者の側からしてもすごく不思議だなあという風に思うんだけど、
やっぱ疲れないもんね。
だってさ、ちょっと、こうしたりとかさ、コンサート中に、ステージでさ、こんなことやったりしたらさ、
5万人の人がさ、がんばれー!って言うんだよ(笑)。
そんな状況ないじゃん。
町中で、オレがこうやってて町中の人がみんなで一斉に、がんばれー!って言う状況なんて絶対にないから。
そんなさ、言ったら不可解なことがいっぱいあそこん中で起きるわけよ。」
落合さん
「たしかに、涙ぐんだりするとみんな泣いたりするしね。」
ニノ
「そう。
そう、そう、そう。
ちょっと詰まったりするとさ、がんばれー!がんばれー!って言うの。
そんなのないじゃん、生きてて。
だから、全部終わりましたよ、って、ありがとうって言って、
自分たちがステージから降りて、ちょっとすると、
やっぱり、みんなさ、そこの空気がさ、パーンって割れてさ、
みんな帰り道を、こう、みたりとか携帯見たりとかするようになると、
急になんか疲れちゃうの。」
落合さん
「現場で歌ってて、ダメだってことあるんですか?」
ニノ
「オレすごい、自分ん中でこれをやってしまったな、っていうのは新曲を歌うって時に、歌詞がわかんなくなっちゃって。
ね、もう、自分のパートだったんだけど。
歌詞がわかんなくなっちゃって、コンサートでどうしよう?
って思った時に、みんなでオレは歌いたいんだよ、ってマインドにして。
こう、客席にマイクを向けて、みんなで歌おうよ、みたいな感じにしたんだけど、
新曲だから、誰も歌ってくれない。
なに?なにやってるの?あの人?みたいな。
もう、どうにもならないし。
どうにもならない瞬間はあった。
え?新曲なのになんでみんなで歌うの?知らないよ?私たちは。」
落合さん
「そういう時ってみんな、ニノ天然って言うんですか?」
ニノ
「いやいやー、もうなんか、みんな、こう、あの、とにかく見ないふりしてペンライト振ってくれる(笑)。」
落合さん
「なんか、ああいうときのジャニーズの観客のリアクションって美しいですよね。」
ニノ
「美しい。
日本人だよね。
だから、それがホントにやっぱコンサートとかでもそうなんだけど、
ホントに敵がいないから。
変な話、なに言ってもウケちゃうんだよね。
で、それってすごい一番怖くて。
今後、なんか当たり前の普通のフィールド、全く色んな現場のフィールドと全く同じように捉えちゃうと、なんてオレは面白いやつなんだ、と。
なんてそんな色んな機転のきくやつなんだ、とか、そういう風に思っちゃって、
ほかの現場でそんなことやってるとなんも面白くなかったり、
そこにずっと浸かっちゃうと、ま、変な風に浸かっちゃうと、
もう、あぐらしかかけなくなっちゃう。
これは、自分たちもこんな場所はホントに、ここしかないんだ、
って気持ちでやってないと。
映画とかやった時も、大丈夫だよ、オレだったらなんとかなるからって、
なっちゃったらもう、アウトだろうね。
いいんでしょ、オレがここでポーンと一言言ったら大丈夫だよ、ウケるから、
ってバラエティで、ウケてるバラエティって見たことないから(笑)。
だから、やっぱそこは、ここはもうホントに、なによりも誰よりもここは貴重な場なんだ、
ここはホントに夢の空間なんだって自分たちが思わないと。
やっぱり間違った印象を与えかねないってのは常にあるかなー。」
落合さん
「アイドル、って感じしないけど、アイドルですよね。」
ニノ
「そうだねー。」
落合さん
「アイドルって状況と、多分映画俳優って状況って全然他流試合になるわけじゃないですか、映画の俳優をするって。」
ニノ
「それもすごく思う、なんかホントに。
たとえば、なんだ、自分は、なんか、よくね、なんでそんなアイドルなんですか?アイドルって言い続けるんですか?
ってことをすごく言われたりするわけ。
でも、そんな別に言い続けてたつもりもないし、そんなに言ってる印象もないんだけど、
でも、なんか、自分の考えの、そのラインがあって。
たとえば、俳優さんなら、自分が思ってるラインにまだ自分は達していないから、俳優と呼んではいけないんだろうなっていう。」
落合さん
「あー、自分のことを?」
ニノ
「そう、そう、そう。
思っていて。
だから、なんか、そこのホームの、じゃあ、なにしてる人なんですか?
つったら嵐っていうグループの1人です、って説明になるし。
やっぱ、どうしても。
内容も見てると、やっぱコンサートもやって、CDも出してるし、
映画も出りゃ、舞台も出てるしバラエティもやれば、なにかもして、
とかっていうことをいっぱいやってたりするじゃん。
そこら辺はすごい似てるのかもねー。」
落合さん
「たしかに僕も大学の先生ですってよく言いますからね。」
ニノ
「お芝居とかやってたりすると、よく宣伝とかで、なんか本格派俳優、とか演技派俳優、とか個性派俳優とかっていうふうに言われんだけど。
演技派俳優、みたいな、本格派みたいな。
俳優さんにそんなこと絶対言わないじゃん。
だからこそ、オレは事実、本格派アイドルとか言われたことは1回もないのね。」
落合さん
「本格派アイドルでしょうね、ジャニーズはね。」
ニノ
「そうそうそう。
でも、やっぱりそれはちゃんとみんなが世間一般的に認めている、1つのちょっと、もう、文化みたいになってるから、
誰も、ジャニーズのアイドルのことをアイドルだって言わないし、
認識してるからこそ言わないんだけど。
まだ、ホントに認識している俳優さんとかにそんな失礼なこと言えないと思ってる。
少なからずオレはそう思ってる。
演技派、本当に演技うまいですよね、って言ってるのと同じことを言ってるわけだから、紹介文で。
でも、それをまだオレは、そういう紹介をしてもらっているから、世の中に。
いわゆる、この人はお芝居もやってるんですよって紹介も含めて、
〇〇派俳優っていう風に紹介されるから。
その時点ではまだやっぱり自分はちゃんと、そっちのフィールドでお仕事さしてもらってはいるけども、
ちゃんと帰るべき場所があるんだなあっていう風に思っていて。
なんかちょっとホッとしたりするんだよね」
落合さん
「そのうち二つ名がつき始めますよ。」
ニノ
「つくのかな?」
落合さん
「二宮さんを説明する言葉がなくなってきて。きっとなんか、説明されますよ。」
ニノ
「(笑)」
落合さん
「これは、僕の実感なんですけど、僕はメディアアーティストをやってる時に、若手とか言われることもなくて、普通にメディアアーティストと呼ばれてたし。
研究者やってると若手研究者と年齢的に呼ばれることが多くて。
会社やっててもそうですけど、もう説明しきれないんで、現代の魔法使いと呼ばれます。」
ニノ
「(笑)そうなんだよね。」
落合さん
「説明しようがない時、人はほかの名前で呼ぶんだろうなって。
多分近々、そうなると思います。これは僕の予言です。」
ニノ
「(笑)」
落合さん
「俳優、かつ、アイドルなもの、アイドルっていうか、歌って踊れて演技ができる人の事を言葉で表す言葉がないから。」
ニノ
「うん。
ホントにないんだと思うんだよね。
別になんか、それがほしいとか言ってるわけじゃなくて。」
落合さん
「たぶん、二宮さんの個性のある演技とアイドルとしての個性の一致したところにある名前だと思うんですけど、
それがついたらそれでまた面白いなって。」
ニノ
「そうなったらね。頑張ってきたなって思うよね。
だからそういう風にこう、まだまだ、なんかそういう風に言ってもらえっているうちっていうのが頑張る余力があるし、
余白もまだまだあるんだろうしっていう風にさ、思いたいよね、やっぱりね、35とかになってきても。」
落合さん
「2つの道を究めるのに人生なんて100年あっても足りないから。」
ニノ
「足りないよね。」
落合さん
「やることがいっぱいあるってのは最高に楽しいですよ。」
ニノ
「うーん。」
落合さん
「10年後なにしてると?」
ニノ
「
10年後?10年後って何歳?45。
歌って踊ってたいよね。
でも、ひとつ思うのは、デビューをしてさ、何年か経ってはいるけどさ、
もう、どんどんどんどん下が出てくるってなった時に、
やっぱ下の人たちがちゃんと働ける環境は作っておきたいなっていうのは、なんとなくなんかやってきちゃった人の命題なのかなって思っちゃうね。」
落合さん
「すげー大人な意見が。」
ニノ
「そうそう(笑)大人な意見でしょ。
自分たちも、先輩たちが、たとえば、コンサートここでやりましたとか、
CDを出しましたとか、バラエティに出ましたとか、色んな道を作ってもらってさ。
そこを歩いてるわけじゃない?
だから、ホント、学校みたいなもんだからさ。
自分の代でさ、それを汚すことだったりさ、それを閉ざすことは許されないわけだよ。
だって歩く人がいっぱいいるから。」
落合さん
「みんなそこの憧れに向かって歩いてきてるわけで。」
ニノ
「そうそう。
そこは自分たちが歩いた時よりもちょっとでも歩きやすい道にしてあげないと、やっぱりいけないだろうし。」
落合さん
「わー、やっぱ伝統芸能だな。」
ニノ
「そう、ホント。
襲名してもらいたいぐらい、嵐。
(笑)2代目嵐。襲名してもらいたいぐらい。」
落合さん
「すげービジネスモデルだ。それはめっちゃありだと思いますね。」
ニノ
「(笑)だから、なんか、そういった点でやっぱり、なんか、自分たちがそうしてもらってるから、最低限それはしてあげないと。」
落合さん
「たしかに、でも、日本にはそういうようなアイドル事務所があって、
そういうようなことをやってるのは、すごく僕は、逆に新鮮だなと。
話聞けば聞くほどにJAPANなんだな。」
ニノ
「面白い文化だよね。」
落合さん
「すげーなんか勉強になりました。」
ニノ
「いやーよかった。」
落合さん
「面白い。」