私は、自分で頭の髪をカットしている。かれこれ、母が骨折で入院していた年、2014年からだ。
それ以来、自前で、髪を整えている。
何でカットするか、それは、パナソニックの、バリカンだ。これには、沢山、アタッチメント、付属品が付き、自分の好きな髪型に整えられるのだ。
私の母が入院中も、私の髪型を見て、母なりに、少し変な感じもするが、やがて、流石は美容師の息子だ。私は美容師だが、流石に自分の頭は自分では整えられず、染めるのも難儀を極めるので、美容室に行くが、アンタは、床屋でもないのに、自分で出来るんだもの、いいねえ、と言っていた。
私のお寺でも、私が初めて、頭をツーブロックというか、刈り上げ頭にしてお寺に来た時、頭を剃っている、御住職様は一番に見抜いて、その頭は誰にやってもらったの?と私に訊き、私は自分でやりました、というと、その意外性に、御住職様も驚いていた。おそらく、うちの母が、手習い代わりに、頭を刈ったのかと、思ったのかも知れない。
母は、私が、自分で頭を刈るようになると、よく、私も美容師じゃなくて、理容師、床屋さんになりたかった。美容師は、最新のヘアーに誰よりも詳しく、その流行に追い付いて行かないといけないけれど、理容師、床屋は、或る程度、そのバリエーション、タイプが決まっていて、その、オーソドックスさが、男の人の頭の、それが自由さの特権の様な気がしたらしい。私は、母をその時、少し気の毒に思った。
お寺で、私の頭が自分でカットしている事は、これは周知の事となった。
或る時、私は、頭を例により、バリカンでカットしていた時、誤って、頭頂部まで、バリカンを入れてしまった。こんな事は、このバリカンを使っていて、今までに、この一回しかなかった。絶対にあってはならない事であった。
そうして、しばらく考えて、このままの頭じゃあ、これはおかしい、と思った。
それから、意を決して、頭を丸める事にした。お寺では、お坊さんだって、皆、丸坊主なのだから、潔く、心を決めた。
その次の日、お寺に着くと、御住職様には、頭丸めたの?と訊かれたが、そうです、と答えざるを得なかった。うちの母も、その時は、なーんにも言わなかった。何故か?
それは、私の中学時代、郡山市内の中学校は皆、その、昭和の頃は皆、丸坊主しか、校則で髪型が認められてはいなかったからだ。だから、私にとり、昔ながらの、母にとっても、見覚えのある頭の格好だった。それだけだ。
しかし、私のお寺では、奇妙な事が起こっていた。それは、月に一度の「御講」という、第二日曜日の一大行事に、私が受付前のロビーに、背広姿で、その、頭を丸めていたものだから、その時やって来た、S楽さんなどは、他の人が騒いで冗談話をしているのを、ダメダメと言って口封じをして、「ほら、総本山から、御僧侶が来ているから、ダメ!」と言ってけん制しているのが如実に判り、私がS楽さんに近づいて、「私、私、僕、○○(私の名)!」というと、やっと判ったのか、ありゃー、てっきり、私はあなたの事がお坊さんに見えたんだ、皆、悪かった、と言って、あんた、どこから見ても、お坊さんにしか見えないよ!と言っていた。
のちに講頭を務める事になる、K林さんの奥さんのK子さんなんか、「○○君、あなた、まだ、得度試験(壮年の、五、六十歳まで受けられる、御僧侶の一歩手前の、所化小僧さん、僧侶見習の資格を得る試験)は、あと数か月先なのよ。気が早いわねえ」と言って、冗談とも、本気?ともとれる、K子さん一流のギャグを繰り出していた。
その時はあっという間に過ぎた。丸坊主から、普段の頭、髪型に又、戻った私だった。皆、私の、頭の刈り方に感心する者も、普通の事として、元の通り、一般化した。
その私が頭を自分で刈る当時言われたのは、相当、お金溜まったでしょう、というもの。私はこのバリカンを、当時2014年、五千円するかしないかでアマゾンで購入した。それ以来だから、それは、本当に計算してもしょうがないが、とにかく、私は、あの、床屋へ行く手間ひまを考えても、こちらの方を選ぶ。
以前の、床屋に通っていた時、初めて入った駅前の名の知らぬ店で、人数ばかりがいる床屋で、新入りの人に、ヒゲを剃ってもらった時、肌の肉を切られた時があった。
その時も、自分の場合、お人好しが過ぎて、治療代をもらう位で丁度良いのに、床屋代を支払っていた。
それ以外にも、私は、今はない、郡山市桑野にあった、ある安くて人気がある床屋だったが、それが災いして、三時間、四時間は平気で待たなければならない。
そこは、頻繁に車が通る、通りのすぐそばにあり、店内の空気も悪かった。
おまけに、その当時は、タバコの煙も酷かった。それ以外にも、夏の頃に、エアコンが利き過ぎて、こちらは脳貧血を起しつつあった。
私の番が、やっと、それも、四時間半後位に来て、やっとの思いで、その席、シートに座った。
そうして、理容師が私のヒゲをこれも剃っている時、その理容師が、これも、初心者、新入りらしかったが、私の異変を、そこの店長に言った。
私は、そこの鏡を見ると、見るからに顔色が真っ青であり、貧血気味な感じの様子であった。
そこで、私は例により、お金は幾ら?と訊いたが、今度は要りません、と理容師の店長もその店員も言い、気を付けてお帰り下さい、と言われて、無事、うちに帰った。
この時の、イヤな思いがあるから、いい加減、床屋に通うのがイヤになった。
その後、余り遠くない、近所で、それに、余り混まない、金額が多少高くても、すぐに順番が回る、同じ町内の床屋さんへ行くようになったが、おサイフには痛かった。
そうした挙句の、ネット上で、自分の髪の毛の処理の方法を、一杯、頭に考えた末の、この、バリカンの購入であった。
タレントの「阿部寛」氏も、同じく、自前で頭をカットしていると聞いた。私とどちらが、最初にそれを思いついたのか、おそらく、彼の方だとは思うが、それにしても、芸能人が、専属の理容師、美容師が居なくても、自前でカットしている事実に、その美的感覚にも、エライ、と思い、言える。
とにかく、エコであり、質素倹約でもあり、時間の短縮、自分の時間の有意義な使い方の出来得る、自分ちが床屋さん、と言った所か。
お母さんにも、自分は一歩、近づいたかな、とも思う今日、この頃だ。
以上。よしなに。長文失礼。wainai