私の父親は、昭和一桁、の生まれである。
父は、どちらかというと、地震雷火事親父の、最後の世代というか、厳しめの人ではあった。
母に対して父は厳しい面があったが、私には、父が溺愛、という程ではなかったが、私自身は、厳しい、と感じた事は、あんまりない。
母にとり、昭和の男の父は、男の沽券を守り、こだわったきらいがあり、父としてのプライドを守る為に、母には、私が思うには、あんまり優しい夫だったかなあ、と、疑問もある。
しかし、私は、子供の頃に、父に、こう言われたのを思い出す。
「もしも、おまえ(私の事)に彼女や、奥さん、妻になる人が出来て、おまえに何か、何でも、料理を作ってくれたならば、その料理が、美味しかろうが、まずかろうが、一切、まずい、と言ってはいけない。何でも、彼女が作った料理は、彼女の真心が詰め込まれているのだから、『美味しい、美味しい!』と言って、喜んで、彼女の前で、決してまずいという顔など見せずに、食べ終わらないといけない。」と。
とまあ、こんな事を、父は言っていた。私には、その時、何か、怖ろしい事を聞いたような、でも、父の、昭和の男としての、男も、やさしくなくっちゃいけない、という、男の矜持のようなものを、父は聞かせてくれた。
結局、父の存命中には、そんな事は一度も無かったが、彼女が出来たら、うちに連れて来てもいいんだぞ、そして、必ず、親に、私に(父に)会わせろ、とも言っていた。私は、受験戦争、その他に追われていて、結局、そういうチャンスには、恵まれなかった。
父は、厳しい、昭和の時代の、雷親父の側面と、それは主に、母に向けらたが、息子の私には、極めて優しい、というか、取り扱い方が、非常に、ナイーブに、私には、接していたのが今となれば、判る。
私も父も、大手の、父は、タクシー会社、私はバス会社に、轢(ひ)かれて、交通事故の被害者であり、私には、父も母も、叩いたり、殴ったりなど、したことなど、一度も一切無かった。それ程、私は、父にも母にも、可愛がられた。
今となっては、そのうちの、母が、今も健在で、元気に朗らかにホームで暮らしている。
思い返せば、父に、親孝行なんて、ちっとも出来はしなかった。私が学生時代に亡くなり、親孝行なんて、考える余裕もない時期に、父は亡くなってしまった。
私は、それら、父の分も、父に対して出来なかった分も、今度は、頭を切り替えて、一人残った肉親、母に対して、精いっぱいの、息子の身分としての親孝行を、していきたいと望んでいる。それが、何よりの、父の、供養に成るものと、信じて疑わない。
以上。よしなに。wainai
2023-07-15 07:59:49
そんなに素晴らしくも無いですよ。
ちょっと、この文章では、美化して書いたかな、とも、今、思い返しています。
でも、事実は事実ですし、この通り、ウソはない訳ですから、受け取る方次第かも、ですね。
今は、段々、子供の頃は、私の顔も、母方に似ていましたが、私の年齢を重ねるにつれて、段々、父の生前の顔に、背格好に似て来ているな、と自分でも、思い当たり、しょうがないなあ、でも、母の施設に行くと、そんな、私に会えて、母は大喜びする訳です。父に似ている私に会える訳ですから。
母は、目が二重の人が嫌いで、目が細い人、ちょうど、東北人の様な、素朴で純朴な、人が、母の好みの男性のようでした。
どんなに金持ちであろうとも、それだけは譲れずに、目の大きな、二重の同じ創価学会員の、パン屋さんの男性の、結婚の縁談を断った位です。
そのパン屋さんのうちには、戦争から帰って来た、右か左の足がない、義足の、その息子の父親がいたそうで、母は、その面倒もみなければならない、と、縁談を辞退しました。
しかし、それは、うちに来ていたヘルパーさん達も口々、言っていましたが、そういった、戦争から帰ってきた人には、復員年金、というか、莫大な資産が、戦後支払われ、もらえた。それに、そこは、パン屋さんで、食いっぱぐれもなく、母だったら、ただ、何不自由なく、幸せに暮らせた。
それを、その縁談の相手が、その人の目が、二重で、目が大きいばかりに、その縁談を断った。母は、店の様子を、店の入り口の、物陰の外から、じっと中を伺い、見張って見続け、その、息子の男性の、目に注目して見た。そして、母の御眼鏡には叶わなかった。
母は、自分の人生だから、私も、誰も、文句も言えないが、そういった、母の判断がなかったら、私も生まれていなかったし、今となっては、どっちが良かったのか?
うちに来ていたヘルパーさん達は、その縁談を、勿体ない、と言っていましたが。
私にとっては、父と巡り合い、それがなかったら、私も生まれ合わせ無かった訳であり、母の、間違っていたかも知れない、しかし、母にとっては、絶対、自分の決断には、人に文句を絶対に言わせない、意外と頑固。そういう人ですから、これで、良しと、するしか、ありません。
以上。よしなに。wainai