年末、業界向け超破格チケットを利用して中国は広州へ。
日本ではイマイチ認知度の低い世界遺産「開平」を見てきました。一体何があるの?どんなところ?
開平は、広東省中南部のデルタ地域に位置しており、広州市内からは車で約2時間。ツアーバスだと約2.5時間。
2007年に「開平の望楼群と村落」として中国で35番目の世界文化遺産に登録された。
もっぱら世界各地で活躍する華僑の力で登録がより早まったとのうわさも。
ここは華僑の”故郷”。
のどかな田園地帯には奇怪で謎めいた洋風建築群が数千軒も点在し、摩訶不思議な感覚が湧き起こる。背景には華僑の苦難の歴史が。
自力村にて。
【歴史】
アヘン戦争後、アメリカやカナダのゴールドラッシュや西部開拓で多くの労働力が必要となり、この為ここから多くの人間が契約労働者として海を渡った。しかし実態は非人道的扱いをされる奴隷労働。黒人の奴隷労働に代わる安価な労働力として中国人が使われたのだ。
契約労働を終え故郷へ戻ると、血と汗で稼いだその金で立派な家を築いた。
開平はデルタ地帯にあり、水陸交通の便がよく、裕福な人々や海外で活躍する華僑の親族の莫大な財産を狙う盗賊が横行した。その上、度々水害も発生した。その為、住居は自分達の身と財産を守るために、華僑たちが見た西洋の建築スタイルに中国の伝統建築が加わった独特な望楼が築かれた。望楼は頑丈な造りの上、窓は鉄格子で覆われ、玄関も厚さ1cm以上の分厚い鉄の扉で造られた。又、楼には所々に外や下を見下ろせる小さな穴が空けてあり、そこから見張りや攻撃ができるようになっており、敵の侵入を阻止するための工夫がなされていた。
右から二つ目の望楼が有名な自力村の「銘石楼」。
望楼には入ることができ、当時の生活の様子がうかがえる。又、テラズで上がればあたりに散らばる望楼群を見渡すことができる。圧巻。
但し、室内の撮影は不可。
しかし、住居として富の象徴のように築かれた望楼群も、時代の経過とともに所有者は華僑として海外に移り住んだり、親族も郊外に住むようになって無人になっていった。今でもそこで暮らしている人々もいるが、管理は大変のようで、望楼群の多くは、その管理は政府によって行われている。望楼の内部は当時のままで、一族の当時の豊かな暮らしぶりがうかがえる。
一代目が苦難とともに築き上げてきた富。2代目・3代目もその影響を受け、その多くが華僑として世界各地で活躍している。一族を大切に生きる華僑の興味深い活躍と開平の歴史は、自力村内の博物館で知ることができる。
立園。謝一族の望楼群。
自力村から車で約5分。
赤坎古鎮。
ほとんどは閉まっているが、一部は地元民向けの商店を営んでいる。
”開平第一楼”の瑞石楼。1925年建造。
瑞石楼は9階建てで、開平の望楼群の中で最も高くて、しかも美しい。
中に入ることができて、最上部(写真のブルーのステンドグラスが見えるところ)まで上がることができる。
以下、内部の様子。
瑞石楼の正面。
瑞石楼の隣の隣の望楼。
瑞石楼のテラスから望楼を望む。
一般的な「開平」を訪れるツアーでは、「自力村」「立園」「赤坎(セキカン)古鎮」の3箇所を訪れるのが定番だそうだが、
開平で一番の「瑞石楼」もぜひ訪れたいところ。
雰囲気がいいのは「自力村」。のどかな田園風景の中、村内にはガチョウの群れや牛がいて、心安らぐ光景に出会える。
日本ではまだあまり知られていない世界遺産だが、訪れる価値が十分にあるスポットだと思う。香港やマカオからも近いのでぜひセットで。
又、交通機関が発達していないので、個人の自由旅行で訪れるには不便かも。車やバイクをチャーターするか、現地で募集する1DAYツアーで。
-余談-
開平の郷土料理「月下美人」のスープはとても美味い。又、田うなぎのご飯も有名らしいが、実際の日本人のツアーでは、口に合わないので、予め普通の炒飯に変更するとか。
またこの辺りの人々は、犬も普通に食べるそうで、食用で犬を飼っているところもあるそう。
広州人いわく、アヒルよりもガチョウが美味いとのこと。
食は広州に在り。広州人は味にうるさい。美味いといえば本当に美味い、らしい。
広州発、”香港日帰り”編へつづく。