業務日誌

旅行会社に勤めていた30代男の雑記・業務日誌

瀬戸内の祝島

2012-06-28 | 
先月、山口県は瀬戸内海に浮かぶ小さな離島・祝島(いわいしま)ということろを旅してきた。
今年に入って、ある新聞の記事を読んだのがきっかけ。
それまでこんな島の存在する知らなかった。

ここは豊かな自然と漁場に囲まれて
昔ながらの暮らしを続ける島民たちがいる。
ゆるりとした時間が流れるこの島には
実は30年にわたる大きな問題を抱えていた。

福島の原発事故以来、原発問題に大きく揺れる中、
この島の約4キロ先の対岸には中国電力上関原発の建設が予定されている。
既に着工され、山が削られ剥き出しになっている。
現在は原発事故や反対運動で中断されているそうだが、
脱・原発が叫ばれる中、
新たな原発が造られようとしていた現実は知っておく必要があると思う。

島には長い反原発運動の歴史がある一方で、
実際、島を訪れてみると、
ここはキラキラと光り輝く蒼い海と豊かな時間の流れがあった。
言われなければ原発で揺れる島であるなど分かりもしない。

今回この島を訪れたのは反原発運動の為ではなく、
新聞の記事に触れ、純粋に島の暮らしに触れてみたかったのと息苦しさから開放の為。
島には観光的な施設やこれといって大きな見所など、
なーんにもないけどそこには支え合って生きる人々の暮らしがあった。



島の集落


とにかくこの島ではのんびり、ぶらぶら、急がない旅が似合う。
行き交う船を眺めながらボーっとしたり、
島独特の”練塀”のある迷路のようになった集落内の路地を散策も楽しい。
海沿いのサイクリングも気持ちいい。
路地防波堤には野良猫がいっぱい。
島の猫、島猫と戯れるのも楽しいところ。

行きかう人たちはあいさつを交わしてくれる。

時には閉鎖的に感じることもあるけど
こちらから積極的に話しかければ
島のお年寄りから色々とお話を伺えることも。



練塀(ねりへい)

石と土を積み重ねてしっくいで固めた島独特の塀。



江戸時代後期より造られ始め、
補修を繰り返しながらその街並みは今に至っている。
防風や防火の役割も果たす。



島から原発建設予定地が見える

海の向こう側、写真の右端上の遠くの緑の島のようなところ(実際は半島)が
原発建設予定地。既に海岸部分の土地が削られているのがうっすらわかる。
島の人たちからみれば、毎日、その建設予定地が目の前に”見える”。



原発反対・・・

自治体ではどこもそうだけど
島が属する上関町でもやはり推進派と反対派にわかれている。
島の人たちは他の原発のことは実際はよくわからない。
ただこれまで続いてきた自分達の暮らしを守りたいだけ。

本当に原発はここに必要なの?
建設中止、早くはっきりと決断を。



棚田

親子三代で造りあげたという棚田には苗が植えられていた。
石垣からの眺めが美しい。



しまのネコ

島を歩けばネコに出会う。路地にはネコがいっぱい。日中はゴロゴロ昼寝。
朝や夕方が活動的。



昼下がり

島には坂や階段が多が、元気なお年寄りが多い。
昼間は暑かったせいか、集落内も静まりかえる。
ネコも日中はあまり見かけない。
山の方ではホトトギスが鳴きまくる・・・。
静かな昼下がり。

集落内は急な階段も多くかなり迷路のように入り組んでいるが、
1本だけは上から下へと繋がる階段ではない坂道があるのだという。
この道を行けば診療所や売店、学校、郵便局方面へ下りていけるのだそうだ。
年寄りは急な階段はきついので
この坂道を”車”を押しながら上り下りするんだって。
バイクもあがってこられるという。
この坂道とはどこかで必ず繋がっているとのこと。
でも慣れない旅行者にはどこでどの道が繋がっているかはわからない・・・。
郵便配達のバイクともすれ違ったけど
道を覚えるのはかなり大変そうだわ。
しかも坂や階段ばかりなのでかなりの重労働だろうね。

売店では週2回(月・木)に日配品が届く。
この日は唯一の港前の売店は行列ができるほど混雑するらしい。

売店で毎日販売される島の弁当惣菜類は少々高いが旨いのでお勧め。



これはある島の人がこんな話をしてくれた。
最近島に来る本土の人が増えたとのこと。
一体何でこんな不便な島に?
物はないし台風の通り道だし船が欠航すると何もこないし
何かあると本土の病院まで通わないといけないし
不便なこどばかり。島で生まれ育ったので仕方がない。
島の人は外に出て行ったら帰ってこない。
本土の便利さには勝てない。
島へ移住してくる人もいるけどね。



島の特産はビワ

安い!旨い!買い得!
2級品ではあるが港の無人販売で1パック200円で売っていたので購入。
売店では250円で販売していた。
形が不揃いで多少キズがあったりするが
見かけはほとんど分からないし味も1級品と変わらない。

島にはいたるころにビワ畑が広がる。
知る人ぞ知る祝島のビワ。甘くて旨い高級ビワ。
農協などへの出荷はほとんどなく、
直接取引のお客向けが多くて本土の市場へ出回ることは少ないのだそう。
もし本土で見かけたら、”通”だと言えよう。


島には観光施設といえるものがない。
今後観光客の為の何かを、という考えは今のところない様子。
何せ動く人たちが高齢だから難しいようで
あんまりいっぺんに観光客を受け入れると島がパンクしてしまうのだそうだ。
お年寄りがほとんどの島。
それでも島のよさはある。
島の活性化はひとつの課題だろうね。


自分は残念ながらあまり感じなかったのだが
人によっては生き方が変わる生き方を変えるきっかけ、
ヒントみたいなものが
この島にはあるのかもしれない。


---旅の情報---

・島へのアクセス:柳井港より定期船が1日2便。所要約1時間。
・島の宿:旅館2軒と民宿1軒。
・レンタサイクル:港でレンタル可能。1日300円。
 島の集落内のほとんどは迷路のような路地と坂と階段の為自転車の進入は難しい。
 集落内はぜひ徒歩で迷いながらの散策が◎。島ネコや意外な発見が楽しい。
・島の食堂:2軒。移住者による島の食材にこだわった「こいわい食堂」は予約制。定休日注意。
・島の売店:集落内にいくつかあるが昼時は閉店有り。
 酒屋(金万商店)有り。おばちゃんが一人で切り盛り。朝から晩まで開いている。
 物価は全体的に高め。弁当類の販売もあるが売切れが早い。
・島の特産:ビワ(シーズンは5月下旬~6月中旬)、ビワ茶、ヒジキ、など。
 シーズン中は売店や港の無人販売で購入可(1パック200~250円)。超オススメ。
・島の見所:棚田、練塀(ねりへい)、ブタの放牧、輝く海、迷路のような路地、島猫。
・その他:高齢者が多いが皆足腰が丈夫・・・。海釣りのメッカ。岸壁ではスズキやアジなど。
・原発反対運動:毎週月曜日18:30頃~港前に集合。集落内をデモ行進。


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