JTDの小窓

川崎市幸区下平間の鍼灸・手技療法『潤天堂』院長のあれこれなつぶやき

全日本鍼灸学会inふくしま 大会参加記

2015-05-31 | 講習会・セミナー・勉強会
先週の土日は福島・郡山での学会に行ってまいりました。
朝5時半に川崎を出、東京から新幹線で郡山に着いたのは7時20分くらい。ひとりなので指定席をとっていなくてもらくらくでした。

郡山駅


会場のビッグパレットふくしま

9時の開演前にまず真っ先に行ったのは業者の展示コーナー(混む前にと思い)。そこで自律神経のバランス分析を計測していただきました。自院にいずれ自律神経バランス測定器を導入して、施術前と後での変化を視覚的に提供するサービスを考えていて、どこの会社のものが使いやすいか、正確性が高いのかなど検討している最中です。


今回の学会聴講の主な目的は「不妊治療に関するシンポジウム」ですが、その他にも参考にできそうな情報がたくさんありました(興味は湧けども時間が被って聴けないものもたくさんあって、どれかに選択しなければならないつらさがありました)。


土曜の午前中は、ポスター発表の「筋(トリガーポイントに関する調査・検証)」、一般口演「泌尿器科」を聴講し、その後ランチョンセミナーで、せりえ鍼灸室広尾院長/女性鍼灸フォーラム代表の辻内敬子先生の婦人科に関するご講演「産科領域の鍼治療」を拝聴しました。


午後は今回メインで楽しみにしていた不妊治療のシンポジウム。
演者は、(1)HORACグランフロント大阪クリニック院長 / IVF JAPAN CEOの森本義晴先生、(2)明治国際医療大学臨床鍼灸学講座講師の田口玲奈先生、(3)明生鍼灸院副院長/不妊鍼灸ネットワーク学術部長の木津正義先生、そして(4)なかむら第二針療所/不妊鍼灸ネットワーク会長の中村一徳先生というそうそうたる顔ぶれとなりました。そして座長は明治東洋医学院専門学校教員養成学科長/明治国際医療大学特任教授の矢野忠先生、明生鍼灸院院長/不妊鍼灸ネットワーク名誉会員の鈴木裕明先生という夢のような組合わせでした。時間の都合で討論会がなくなってしまったのは大変残念でしたがとてもとても貴重な時間を過ごすことができました。

シンポジウムのあとは一般口演の会場に足を運び「運動器-下肢」の演題をいくつか聴講しました。そこで特に興味をひいたのが「てい鍼のみの施術例-膝関節痛4例に対する施術」でした。「てい鍼」というのは刺さない鍼で、これを2本使い指圧くらいの強さで施術点を押圧していくというものでした。当院にも膝痛の方は多く、刺す鍼をこわがって手技の治療を求む方も多いのでこの報告は大変参考になりました。なお、この施術は「炎症系の痛み」に効果を出しやすいそうです。

夕方から懇親会が郡山駅近くのホテルで行われるので、それまでに宿泊先のホテルのチェックイン。
とても綺麗で驚く(ホテルプリシード郡山)。


懇親会は玉川病院時代の大先輩、高橋純孝先生のテーブルにご一緒させていただき、山形の平田朋子先生、茨城の七川照男先生をご紹介いただきおいしいお酒を汲みかわせていただきました。七川先生は、私が玉川病院在籍時に日本臨床鍼灸懇話会で発表したことを覚えていてくださっていて大変光栄でした。

日曜は7時起床。このホテル自慢の朝食バイキングに早速。
ふわとろのオムレツもよかったのですが、カレーが…カレーがとてもおいしかったんです。おかわりしてしまいました。



朝9時からポスター発表の聴講。(1)骨盤位に関する発表(2)不妊治療に関する発表1(3)不妊治療に関する発表2 でした。
(1)の骨盤位(逆子)に対する治療は当院でもよく声がかかるもので、1回でやめてしまったものを除外すればほぼ好成績を収めており、他ではどのようにおこなわれているのか興味がありました。多くは至陰(しいん)というツボと三陰交というツボが用いられ、施術刺激として棒灸、灸頭鍼、温灸、直接灸、鍼などが使われます。効果がみられなときに施術刺激を変えるようですが、「刺激の種類を変える前に施術時の患者さんの姿勢・体勢に着目するのもいいですよ」と手を挙げて発言しようとしましたが、熟練の方々を前におこがましいなと思い胸にしまってしまいました。
(2)(3)は不妊治療に関する発表です。当院でも行っている「中髎穴刺鍼」と「陰部神経鍼通電」の報告がありました。
◎不妊症患者に対する中�蜀穴刺鍼と陰部神経鍼通電の追試結果
◎仙骨部鍼治療と陰部神経鍼通電により妊娠に至った不妊症の2例
◎不妊に対する鍼灸手技施術の効果-基礎体温の記録を患者とともに検証する-
◎不育症に対する鍼灸治療後の流産率及び生児獲得率の報告
◎女子胞の力を増し、妊娠出産に至った一症例よりの報告
◎証に基づく鍼灸治療の有効性-産後の冷えに対する鍼灸治療の1症例報告-
◎不妊症患者におけるEPDSと身体症状の関連について
◎鍼治療が女性不妊患者の酸化ストレスに及ぼす影響-不妊原因別による分析-
◎不妊症患者の初診時・妊娠中・産後における抑うつ症状の推移検討
◎不妊治療専門機関における鍼灸施術の報告(第一報)

このポスター発表では、演者が発表したあと聴講していた方からの質疑応答があるのですが、この時間中ずっと参加されていた明生鍼灸院院長の鈴木先生が大事なところでご意見やご説明をくださったので、報告内容に厚みが増し、大変充実した勉強ができました。

また、みなさんとても勉強熱心で素晴らしい先生方でしたが、私が特に魅力的に感じたのは「キュアーズ長町」の小松範明先生でした。臨床に対する真摯な姿勢がとても強く伝わってきました。通院可能な場所で開業されていたらまちがいなく健康管理目的で定期的に受診したいと思う先生でした。

お昼を挟んで午後1時からは市民公開講座1「フィッシュ!哲学を医療復興の一助に」がありました。演者は東京慈恵会医科大学附属病院副院長・看護部長 高橋則子先生。
「フィッシュ哲学ってなんだ?」と、今まで耳にしたことがなかった言葉だったので最初あまり興味がなかったのですが、聴いている最中から「今ここで知っておいてよかった!」と心底思いました。詳しく書くと長くなりすぎるので端的に言うと、「フィッシュ哲学」とは顧客サービスに関する考え方のひとつで、ワシントン州シアトルにあるパイク・プレイス魚市場の楽しむ・楽しませる接客が原点になっているとのこと。慈恵医大が2002年に大きな医療事故を経験し、患者さんやご家族から直接非難や不信の言葉を受ける現場のスタッフは元気をなくし、退職者も続出し、患者数も減り、最大のピンチに陥った時にこの哲学を取り入れたそうです。看護師や医師にとどまらず、病院で働くあらゆる職種の方々(電話交換手やリネンの方などなど)も巻き込んでの取り組みは聞いていて感動でした。大きな病院を紹介してもらって行くなら慈恵がいいなと思ってしまいました。

4つの【フィッシュ!哲学】
(1)仕事を楽しむ
~成功の秘訣は仕事に遊びを取り入れていること。意識して仕事を楽しくしている~
(2)相手を楽しませる
~お客さんとの対応が一番大切。全員でよいサービスを目指している。仕事が好きだとそれが自然と周りの人たちにも伝わる。自分たちが楽しんでいると時間が経つのも早く、お客さんも楽しんでくれ、結局魚も買ってもらえる~
(3)相手と向き合う
~いつでもお客さんに集中している=お客さんの話は必ずしっかり聞く。お客さんと向き合う時は親友といる時と同じできちんと耳を傾け話を聞く。周りで何が起きていようが意識は常にお客さんに向ける~
(4)態度を決める
~朝起きたらまず、今日をどんな一日にするかを考える。意識を明るく楽しくする。ちょっと意識を変えてみると一日が良い方向に向かう。視点を変えると周りのいいところが見えてくる。これが秘訣~


引き続き市民公開講座2つめは「陰陽という生成原理」というテーマで演者は僧侶の玄侑宗久先生でした。
さすがにお話がうまく、話し方や声のトーンが心地よくスッと入ってきました。
特に印象に残っているのが瞑想状態のつくり方。僧侶はお経をあげる間瞑想状態に入る(α波)。
意識を2箇所に分けることで他に考えられない瞑想状態をつくることができる。我々が行える簡単な方法は、あぐらをかき(椅子に座りでもよい)、手のひらを上にして腿の上に置く。両方の手のひらの真ん中(ツボで言うと労宮)を『両目』でみる。目は閉じない。
※これを長くやり続けるには熟練の技が必要。

終盤で「今、ミトコンドリアに興味がある」とおっしゃっていましたが、前日の森本先生のご講演でも「ミトコンドリアに注目した研究」をされているといわれていたので「おおお?」と思いました。おそらく両方のお話を聴かれた方は皆そう思われたのではないかと。

今回の学会は最初から最後まで本当に勉強になり参加して良かったと思いました。
通常土曜日はお休みにするなどとんでもない話ですが、患者さんのご協力があってお時間を作ることができました。心より感謝申し上げます。いつも申しあげることですが、学んできたことをきちんと施術でお返しできるよう、またこれから頑張ります。
















  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする