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シリア・イスラム戦線が米国の軍事介入に反対

2018-01-28 00:40:37 | シリア内戦

2013年8月21日の未明ダマスカスのグータ地区にサリン攻撃がおこなわれた。米国のオバマ政権はアサド政権を非難し、米国の軍事行動を示唆した。「数百人の市民が毒ガスという存酷な手段により殺害された。再びこのような悲劇が起こることがないよう、断固たる行動が必要である」。

米国の決意は固まっているように見えた。米国のベイルート大使館が特に重要な任務を持たない人と大使館員の家族に対し、レバノンから去るよう勧告した。

シリアの反対派の多くが米国の直接介入を望んでいた。米国の介入を引き起こすため、彼らがグータ地区にサリン弾を撃ち込んだのかもしれない。

こうした中でイスラム主義グループの中の最大勢力であるシリア・イスラム戦線が米国の攻撃に反対であるあることを表明した。ヌスラ戦線とISILは一貫して米国の軍事介入に反対している。反対派の中でサリンを扱う能力を扱う持っているグループが、米国の軍事介入に反対しており、「グータ地区に対するサリン攻撃は反対派による謀略だ」という説は根拠を失う。

この時期の反対派が何を考えていたかについて、ワシントンポストが伝えている。

 

===《イスラム主義グループが米国の軍事介入に反対》==

Syrian Islamists protest U.S. strikes; Americans exit embassy in BeirutSyrian Islamists protest U.S. strikes; Americans exit embassy in Beirut

  <https://www.washingtonpost.com/world/middle_east/us-orders-partial-evacuation-of-embassy-in-beirut-as-tensions-rise-over-syria-strike/2013/09/06/6af006a8-16f5-11e3-804b-d3a1a3a18f2c_story.html?tid=pm_world_pop&utm_term=.1a4bdae45dc3>

              By Liz Sly

            ワシントンポスト 2013年9月6日

イスラム主義グループは米軍によるシリア攻撃に反対しているが、自由シリア軍の指導部は米軍の介入を願っている。イスラム主義グループと自由シリア軍は対立を深め、こうした反対派内の分裂により、内戦を終結させる努力は混迷している。

シリア北部で指導的な位置にあり、厳格なイスラム主義グループが米国の軍事介入を支持してはならない、と構成員たちに警告した。ネットのフェイスブックに、次のように書かれている。

「米国の軍事介入は米国の利益になるだけであり、アサド大統領を倒そうとしている人々の利益にはならない」。

米軍の介入に対するシリア・イスラム戦線の反対は断固としたものではないが、反対派の多くは米軍の介入によってアサド政権の終末が早まること期待しているなかで、、これに疑問をなげかけた。

米国の真の目的は裏切り者の利益を増すことだから、警戒するように」。

シリア・イスラム戦線は、原理主義グループであるアフラール・シャムによって指導されている。

別のイスラム主義グループは米国の軍事介入を断罪するビデオを投稿した。このビデオは反対の立場が明確だ。

「我々は西側諸国による軍事介入を拒否する。これはイスラム世界への新しい侵略だ」。

このビデオを投稿したのは、8つの原理主義グループの代表である。* a video posted on YouTube.

反対派の多くは米軍の介入によってアサド政権の終末が早まることを期待している。

反対派は米国の軍事介入を歓迎するグループと反対するグループに分かれている。シリアの反対派は一様ではなく、方針がまとまっていない。数百の小さなグループが乱立しており、彼らは互いに同盟したと思うと分裂し、再び新たな同盟を結成する

というようなことを繰り返している。

穏健な自由シリア軍を統括している最高軍事評議会はこれまで何度も西側の支援を要請し、米国の軍事介入に賛成してきた。

自由シリア軍はSILやヌスラの対極にある穏健なグループの集まりである。自由シリア軍は反乱軍全体の中で圧倒的に多数であったが、アサドの正規軍とまともに戦う力はなく、西側の武力介入を求めていた。西側はこれに応じることなく、放置した。この間SILやヌスラなどの過激派が優勢になった。

自由シリア軍とは反対に、過激な原理主義グループは米国の軍事介入に反対した。米国の真の攻撃目標は自分たちである、と過激派は考えていたからである。アルカイダ系のISILとヌスラ戦線は米軍の攻撃に備え本部を撤収し、武器や資金を他所へ移している。彼らは本気で自分たちが攻撃されると考えている。これは反対派の支配地に住む住民の報告である。

米国にテロリストと規定されているISILとヌスラの他に、やや穏健なグループが多数存在する。アフラール・シャムが率いるシリア・イスラム戦線は自分たちをイスラム原理主義者と公言しており、実際過激な小グループが複数含まれる。しかしシリア・イスラム戦線はSILやヌスラとは異なり、やや穏健であるとみなされている。アフラール・シャムはシリアの広い範囲に支配地を有している。彼らは特に北部に基盤があり、SILとヌスラより普通の市民から信頼されている。

アフラール・シャムのようなグループにとって、予想される米軍の攻撃はジレンマになっている。2年前から米軍の介入を望んでいるグループと異なり、彼らは米国の軍事介入に反対してきた。そし、てこの姿勢はシリア国民に支持されてきた。今になって米軍の介入を歓迎するするなら、彼らを支持してきた国民の信頼を裏切ることになる。

しかし「米軍のシリア攻撃により、アフラール・シャムのようなグループは軍事的に利益を得るだろう」と、英国の軍事情報誌 IHS ジェーンのチャールズ・リスターが述べている。

「現実問題として、SILとヌスラよりやや穏健なイスラム主義グループにとって米軍の攻撃は有益である。しかし彼らは西側の軍事介入を公に承認することはできない。そこに彼らの矛盾がある」。

もう一つ重要な点がある。反乱軍の支配下にある地域の住民は日々空爆を受けている。彼らの多くはともかく内戦が終了することを願っており、たとえ外国の介入であっても戦争終結を早めるならよいと考えている。イスラム主義グループはこうした住民の願いを無視することができない。

イドリブ県の活動家たちは外国の軍事介入を望んでいることを国会議員に伝えるビデオを発表した。ビデオには死亡した子供たちが散乱している場面があり、生き残った子供たちが軍事介入を願っていた。

私はイドリブのアフラール・シャムの報道官に問い合わせた。彼は次のように強調した。「先日の我々の発表の真意は、我々は米国の攻撃に賛成も反対もしない、ということだ。米国の攻撃が何を意味するか国民に説明しているだけだ」。

 

米国のベイルート大使館が特に重要な任務を持たない人と大使館員の家族に対し、レバノンから去るよう勧告した。アメリカはシリアを攻撃するかもしれない、という緊張が高まっている時に出された退去勧告は、米国の攻撃が近いことを教えた。

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