今でこそ、多少植物のことを知るようになったが、若い時は、野生の草木などまったく興味がなかった。
20代前半の頃、知り合いの農家の老主人が、道脇のシダ(という認識しか当時の私にはなかった)を指さして、「これ、何だか判るか?」と訊ねたことがあった。草や木に無知だった私は、「シダだら(当地の言葉で“シダでしょ”)」とそっけなく答えた。
彼は笑いながら「これはワラビだよ。お前、そんなことで親になれるか?」と云った。農民の彼には、ワラビすら判別できない若者が心許なかったのだろう。私はいささかムッとしたが、すぐにそのことは忘れてしまった。半年後、老人は病に罹り亡くなった。
それから5年ほどして初めての子どもに恵まれたとき、その老人の言葉を思い出した。あいかわらず、タンポポのほかは、老人に教えられたワラビしか知らないでいた。
せめて、日頃目に触れる植物の名前ぐらいは知っておきたいと思い立った。小学生向きの図鑑を購入し、かつて高校で植物観察クラブにいたという妻を師に、先ず身の回りの野草から教わり始めた。
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