道々の枝折

好奇心の趣くままに、見たこと・聞いたこと・思ったこと・為たこと、そして考えたこと・・・

アマモの敵

2013年04月16日 | 食物・料理
花より団子という。前エントリーの花の話題の次は、それよりはるかに関心の深い、飲食の記事を投稿させてもらうことにした。

浜名湖の水温が上昇するにしたがって外海から乗っこむ魚の種類も数も増え始める。3月末から始まった角立て漁(定置網漁)は、これから盛期に入るのだろう。

前年の漁期の終わりの今年1月に、地元の鮮魚販売店に頼んでおいたアイゴ(浜名湖ではシャクシャという)が揚がったとの連絡があり、欣んで受け取りにいった。25センチぐらいの2年ものが4尾あったので2尾を購った。一般の鮮魚店には並ばない魚だ。

この魚のヒレには毒腺のある太く棘があって、捕らえられて興奮すると全身のヒレの棘を逆立てる。うっかり触れると、棘から毒が注入され激しい疼痛に襲われ、数時間から数日間痛みが続くという。

痛みはハオコゼやゴンズイの比ではないらしい。解毒は不可能だから、医院に行っても痛みはとれない。毒腺は魚が死んでも活性を失わない。タチが悪い魚なのだ。

浜名湖にかぎらず、漁業の対象になりにくい魚にちがいない。漁師さんや魚屋さんにも嫌われもののこの魚、初めて調理する人は、淡緑黄色で鱗がないヌメッとした皮と硬い骨に先ず怯む。腹を開いてさらに顔を背ける。

海藻を食べる草食性のこの魚には、肝臓を除く内臓に独特の臭みがある。獲れたらすぐ内臓を取り除かないと魚肉に臭みが回ってしまう。そこは黒ソイに似ている。それらの理由で、美味なのに総菜魚としては流通しない。当然料理店でも扱わない。

だが、一度この魚の味を覚えたら、病み付きになる。鮮度が良ければ刺身でも煮付けにしても実に美味しい。私の好みは肝をそのまま残した煮付けだ。肝は、カワハギの煮付けと較べても、甲乙つけがたい。

この魚は貪婪に漁場の海藻やアマモを食べる。稚魚のゆりかご浜名湖の、アマモの藻場は年々縮小しているようだが、この魚の影響が大きいと云われている。

私たちがもっとアイゴを食べて数を減らさないと、この魚ばかりが殖えて困ったことになるかも知れない。なにしろ毒棘で武装しているから、幼魚でも海の中では天敵がいないのではないだろうか?


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