訪問先:東本願寺飛び地境内地 渉成園(枳殻邸)
訪問日:2018年11月9日
先日、京都駅前の出張があった。午後からの会議なので、少し早めにでて東本願寺の庭、渉成園を訪問した。ここは枳殻(カラタチ)が周辺に植えられていたことから、枳殻邸とも呼ばれている。
京都へ住んでいたころ、ここは簡単に行くことができると思って結局行けなかった所である。浄土真宗という本来なら貧しい人を助けるお坊さんが作った贅沢な場所という反感もちょっとはあった。
でも最近いろんな庭園を見たことだし、それらと比較する意味と時間的に手頃と判断したので、見に行くことにした。
庭の大きさは約200m×200m、書院式の池を巡る回遊庭園として造られている。狭い中に頼山陽が選んだ十三景や、3つの茶室、持仏堂が詰め込まれ、1653年に作られてから門首の隠退所や外賓の接遇所として使われていたそうだ。
ただし何度も火災に合い、現在の建物は明治直前の蛤御門の変で全焼後に再建されたものとのこと。その結果歴史的価値のあるものは、庭内の石造物と配布のパンフレットでわかった。
全体概要は下記の写真。
入り口から左側(北)に沿って、茶室と水源に模した林が広がる。そして右上(南東)に大きな池とその中に浮かぶ島が作られている。大きな島の頂上は茶室である。そして西側には木々に囲まれてお寺の殿舎などが立ち並ぶ。
(1)入口から左側沿い
受付を入ると、すぐ目の前の桜の向こうにとても変わった石組が見える。長い石が斜めに入っている。桜が咲いていたらきれいでしょうね。
不思議な石組
油断すな
入ってすぐから
見ものあり
大胆不敵な
ジグソーパズル
油断すな
入ってすぐから
見ものあり
大胆不敵な
ジグソーパズル
その後、白い壁に沿って歩いていくと門の向こうに、紅葉が見えた。しめしめと思ったが、やはり紅葉には早かった。
門の左は、吹放しの廊下の臨池亭。池と建物が一体化し、夏の晴れた日は気持ちいいでしょう。(蚊がいなければですが・・・)
その後茶室の横を通り、水源へと向かう。浅い紅葉・・・もう少し。
浅い秋
京なら
浅い秋こそ
嬉しけれ
葉よりも多い
人波を観ず
京なら
浅い秋こそ
嬉しけれ
葉よりも多い
人波を観ず
そして水源。獅子吼と呼ばれる口から、疎水から引かれた水が噴き出している。
その水は、池へとゆっくりと流れてゆき、流れ込む。
(2)池の周辺 島
池には4つの島があり、その最も大きな島の頂には縮遠亭という大きな茶室がある。最も高いので東山連峰を遠望できたとのことだが、江戸末期には樹木の繁茂で見ることができなくなったとのこと。むしろ現在は南側に京都タワーや駅ビルがそびえ、それが借景となっていることだろう。
いにしえの風景
いにしえの
自然の息吹
見えねども
人 生きていれば
それはそれでよし
いにしえの
自然の息吹
見えねども
人 生きていれば
それはそれでよし
その島へは侵雪橋で渡る。この橋は雪の時風情があるとのことだが、周辺が工事中のため頑張って葉で隠して撮影。
渡ると茶室の前は、可愛らしく樹影を整えられた木々。
もっと池側へ下ると、石の手水鉢。なんとこれがここで最も歴史的価値が高いもの。全国の庭園にある「塩釜の手水鉢」の手本となるもので、鎌倉時代に制作されたものだそうだ。
手水鉢は知る
人が手を
清め続けて
360年
手水鉢は知る
人の原罪
(注 作られた後なら約800年、ここではここに設置されて360年をとっています。)
そしてこれは石灯籠ではなく、「石どう」という、装飾の少ないその原型のようなもの。秀吉ゆかりのお土居跡と考えられる所に、時を越えて建っているようだ。
(3)南側
橋を戻ってきた所に、途中でぶち切られた大木が2本立っている。そのうち1本には、途中から枝が飛び出して緑の影を作っている。
蘇った木
蘇り
そしてまた生きる
なぜならば
人の行く末
知りたいがため
蘇り
そしてまた生きる
なぜならば
人の行く末
知りたいがため
そして園の中央には、傍花閣という一風変わった建物が建っている。中央に楼門があり左右から階上に上ることができる。春は周辺の桜が咲き、階上から花の海を眺めることができそうだ。
もっと南に下ると、木々に包まれた領域がある。とても苔がきれいだ。
秋湿り
虚仮ばかり
思い病む日の
秋湿り
命の水を
少し舐めてみる
虚仮ばかり
思い病む日の
秋湿り
命の水を
少し舐めてみる
ちょっと変わった形の門があり、中へと誘う。
そこにあるのは蘆庵というここにしかない2階建ての茶室。地味な雨戸が大胆な丸窓を隠している。
そこを通り過ぎると、蓮池。私が行ったのは季節の端境期だったが、春の桜、夏の蓮、秋の紅葉、冬の雪と揃っている。
ここで接待を受ける人は、いろんな変化に富んだ場所でお茶を楽しむことができ、大いに隠れた歴史的決断の場になった事だろう。
今回は一時間程度で駆け足で回ったが、入り口で頂いたパンフレットをよく見てゆっくり動けば、とてもうんちくたっぷりの場所である。細かく見る人には楽しみの場所だろう。
特に大火災を繰り返していることから、それでも残る石の建造物や石組に注意する必要があることがわかった。
回遊式の庭として、歩き回って確かにきれいなところは多い。しかし本当にきれいな景色を見るためには、茶室にあがらなければいけないだろうなって思った。そういったチャンスがあれば また行ってみたい。