展覧会名:ライデン国立古代博物館所蔵 古代エジプト展
場所:愛知県美術館
期間:2020.09.19~12.06 日本国内:(2020年4月25日)09.19~2022.02月下旬
本当は4月からだったが、中止されて名古屋会場が最初。
訪問日:2020年9月25日
惹句:ヨーロッパ5大エジプト・コレクションの一つ、ライデン国立古代博物館から約250点が来日!
ミイラをCTスキャン・解析結果を世界初公開 (これは巡回展全体の惹句)
構成:第1章:エジプトを探検する
第2章:エジプトを発見する
第3章:エジプトを解読する
第4章:エジプトをスキャンする
<今回の展覧会のポスター>
(ライデン博物館ではミイラが林立しているが、それをイメージしている。)
このコロナ渦の間、全然再規模な特別展には行けなかった。久しぶりに愛知県美術館で特別展示が行われるということで、行ってみようということとなった。休日は入場料が高くかつ予約制ということなので、当然ながら平日に行くこととした。
行ってみてびっくり。ずいぶん混雑していた。多分皆さんもこういった展示会に飢えていたのかもしれない。
章構成は、前述のように全体の公式ページでは4章。ただし愛知県版では1章と2章が合併して3章構成になっている。いずれにせよ1章と2章は助走区間で、エジプトの歴史と文化財発掘状況、特にライデン博物館の関わりを説明。3章でミイラの棺をずらりと並べて驚かせ、4章でこの展覧会の目玉であるCTスキャンなどの調査状況を示している。ここでは、図はこの展示会のHPおよび博物館自体のHPに掲載されているものを示す。
第1章:エジプトを探検する
シャンポリオンのロゼッタストーン、またエジプト記から西欧社会がエジプトに興味を持った経緯、ツタンカーメン発掘によって関心が爆発し、その中でライデン博物館がエジプトへ取り組んだ経緯が示されている。つまりはライデン博物館のグループは、後から参加した人たちで、エジプト政府がかなり発掘管理をしてからの参加で、イギリスやフランスなどの略奪文化財問題を起こしていないことになる。
彼らはその発掘現場を丁寧に説明していた。
このブロックで興味があったのはやはりツタンカーメンの倚像。なぜここにと思ったが、とても艶の良い石造であった。背面に象形文字が書かれていることが、価値があるとのことだった。しかし隙間が狭くなんとか覗くことができる程度だった。
<ツタンカーメンの倚像>
また彼等の発掘した寺院で、エジプト政府から寄贈され博物館に組み立てられているものを写真で紹介していた。ネットで見に行ったが素晴らしいものだった。
<タッフェの寺院>
(博物館建物の中に組み立てられている。)
第2章:エジプトを発見する
ここは、まずエジプト史の大まかな教育。初期王朝の紀元前3750年から、古王国時代、中王国時代、ツタンカーメンなどの新王国時代(紀元前1200年ごろ)、そして後期王朝時代を経て、紀元前後から2世紀のグレコローマン、ローマ時代と続くことを示し、それぞれの時代の簡単な発掘品を並べていた。
続いて、この展覧会主眼のミイラ埋葬に関わる宗教の説明。だいたい後期王朝時代を対象に、イシスとオシリス神の話や、副葬品の死者の書、小さな人形のようなシストラム、各種の神像があった。
ここで最も興味を持ったのは死者の書。パピルスに非常に美しい色彩で描かれている。またたくさんの青銅の神像に私は興味を持った。エジプト発掘品としてこれだけ見たのは初めてなのでは?
<死者の書>
(パディコンスの『死者の書』(部分)第3中間期 左端が イシス神、その次がオシリス神)
<猫の像、 カワウソの像>
(青銅製 中国の青銅は鼎などのイメージが強いが、こちらではこんな動物の像が青銅で作られていた。)
第3章:エジプトを解読する
3章はミイラとその棺、副葬品を大量に示している。
それによって、埋葬の内容が時代によって変化したことを示そうとしている。12個の棺の蓋の浮彫の仕方、また棺の絵の違い(蓋の表面、棺の中)の違いは理解できる。「解読する」というキーワードが使われているのは、死者の書、棺の絵、小さな人形のシャプティ、葬祭コーンや、護符など意味を検討する対象を並べているからである。なお、ミイラの製造方法や、材料/器具も並べられている。
ここの展示では、時代の順序がバラバラで混乱した。ここではまた死者の書、ミイラを示す。シャプティは死の旅を実施している間働いてくれるという人形で、この博物館が特に強力に調査しているものだが、最後に示す。
<ネスナクトの『死者の書』(部分)>
(グレコ・ローマン時代のもので、最初のものとだいぶ雰囲気が違う)
<ミイラの棺の例>
(左2つは「ホルの外棺」後期王朝時代 、棺の中に女性が描かれている。時代によって女性の大きさが違う。
右は「パネシィの外棺」第3中間期 、ハイトエム ハトの棺」後期王朝時代 色の塗り方がだいぶ違う。また最初のポスターの左端、右から2つ目に見られるように、棺の蓋で手が飛び出して彫られているのもある。
第4章
ライデン古代博物館ではミイラの調査手段が開発されるであろうと考え、発掘状態そのままで保管していた。それがCTスキャン技術の進展によって現実となり、ミイラ内部の人体の状況や、身体に埋められていたものが明らかになってきた。その他棺の作り方も明らかになってきた。
人間のものは畏れ多いので、下記は蛇のミイラの例。
<蛇のミイラ 外観 および X線CTによる観察結果>
終わりに
今回 私にとって行ってよかったと思ったのは、死者の書とエジプトの青銅器を見ることである。確かに12個のミイラの棺の違いやCTスキャンもそれなりに興味を持ったが、特に派手なものはなくやはり地味だなと思った。
それよりも、この展覧会にはいくつか不満がある。下記に列挙する。
(1)展示品説明の字が小さい。
会場が暗いこともあるが、展示品説明の文字が小さくて読めない。エジプト関連の展示会はミイラ等の印象を高めるためか、だいたい暗いが今回は特に暗かったと思う。そのためか説明を読むのに苦労した。配偶者は途中であきらめた。
(2)像の後ろに記述があるというのならば、ちゃんとそれを見せる展示をすべきだ。
ツタンカーメンのもの以外に2点ほどあったのではないか。最近は像をぐるりと見せる展示法もよく見られる。壁につけて申し訳程度に隙間を作るのではなく、ちゃんと見せるようにすべきだ。
またこれは興味で書いているが、ミイラの蓋の後ろがどうなっているのかも知りたい。棺の中に素敵な女性が描かれているのを知ったが、ミイラの眼の前には何も書かれていないのか。後ろを見せるような展示があってもいい。
(3)時代がもっと認識できるようにしてほしい。
最初にわざわざエジプトの古代史が説明された。しかし3章、4章の展示品の並べ方が(私からすると)テーマの主張に合わせて、あまりにも時代に関係なく並べられていた。例えば展示品説明パネルを色分けするなどして、時代感覚を持たせるべきだ。
(4)小さな展示品の背景
黒い色の展示品がそれなりにあったが、暗い照明、黒い背景の中に形状が溶け込んで、見づらかった。暗いイメージを重視していると思うが、改善は可能と思う。
約2年間もエジプト美術品を日本で巡回させるライデン 考古博物館に興味をもって、向こうのHPを覗いてみた。改修中で展示品を外へ出してもいい状況なのかと思ったら、どうどうとオープンしている。そして展示品も維持されている。日本の巡回分の影響の小さな充実した博物館であることがうかがえる。エジプト文明の重要な魅力はミイラの他に巨石にあると思うが、そういった展示がかなりある。
日本の説明では5大コレクションのうちの1つとしているが、彼らのホームページでは10大コレクションのうちの一つと書いている。いずれにせよ最初は大学付設の体系がしっかりした博物館であり、チャンスがあれば行ってみたいと思った。
<ライデンの博物館、エジプト美術の所>
(左端に大型の石像、右にたくさんのシャプティが上で立派な死者の書が展示されている。)
これから第九のシーズンですね。コロナ感染が早めに終息してほしいものです。
ライデンには行ったことがあります。シーボルトの日本博物館に行きました。古代博物館には行っておりません。ヨーロッパ各地の博物館、美術館にはエジプトから発掘されたものが多数あります。全部合わせると、どのくらいになるでしょう。
これだけ大規模な展覧会が今年開催されるとは、すごいですね。
合唱の場合には、前に向かう気流ができて感染しやすいとの解析が出たので、暫く合唱は難しいのではと思います。実際やっていてもそんな感じだし、ドイツ語特有の破裂音を出してかっこよく歌えと第9の時は言われます。
エジプトの文化財、ヨーロッパにたくさんありますが、かのロゼッタストーンをはじめ文化財返還要求の問題が起こっています。ギリシャもそうです。
今回は勉強型の展覧会ですが、これだけの長期間いろいろな所を回らせるということは、日本人の知的欲求心も大したものだと思います。