愛知県陶磁美術館は2023年6月19日から2025年3月31日まで、改修工事のため休館するが、その前に下記の特別展とギャラリー展が開催されているので、趣味の陶芸グループ7名とともに、訪問した。
・特別展
特別展/日本工芸会陶芸部会50周年記念展 未来へつなぐ陶芸 ―伝統工芸のチカラ
・会期:2023年4月15日(土) - 6月18日(日)
・惹句:歴代の人間国宝の名品をはじめ、全国各地の優れた伝統陶芸が一堂に会する展覧会
・構成
第Ⅰ章 「伝統工芸(陶芸)の確立」
第Ⅱ章 「 伝統工芸(陶芸)のわざと美」
第Ⅲ章 「未来へつなぐ伝統工芸(陶芸)」
(全国8か所で巡回開催)
・ギャラリー展
瀬戸×常滑 陶芸 ―同じ時をつくる―
・会期:2023年4月29日(土) - 5月28日(日)
・惹句:愛知県でともに代表する陶産地である瀬戸と常滑において活躍する作家の作品が集結
<特別展およびギャラリー展のポスター>
1.特別展について
1950年に施行された文化財保護法とその改正をきっかけとして発足した日本工芸会や日展等で活躍した人(人間国宝含む)や新進気鋭の若手の展示会。135名137作品。
それぞれの章で、私が興味を持ったものの例を写真をしめす。
(1)第Ⅰ章 「伝統工芸(陶芸)の確立」
文化財保護法によって、工芸の芸術性、またそれを生み出す無形の技術の重要性が理 解された。工芸会所属の特別重要な技術を有する人間国その周辺の人から生み出される伝統工芸としての陶磁器の美の認識と、それに飽き足らず創作を組み込んだ創作工芸が刺激しあった。工芸会の初期に活躍した人の作品が展示されている。
ここには、加藤卓男、板谷波山、富本健吉、清水六兵衛などビッグネームの作品がずらりと並んでいた。どれも完璧で、畏れ多いと思わせた。素晴らしいけれどもみていて それほど楽しいとは思わなかった。
<江崎一生 灰釉鳥文大皿>
入り口にドスンと置かれている大きな皿。60cmくらいのロクロで作った大皿に、柄杓で緑色の灰釉をバシャッとかけたものだそう。完全な形と修練の偶然性をコントロールした色彩の作品。偶然に現代性が?
<加藤卓男 三彩鉢 蒼容>
形も色も美しい。宝石のカットのような造形で現代的、大きいのに薄くて軽やか。配色も大胆で鮮やかな流れ。 正倉院からの唐三彩復元の依頼の過程で、自分の創意を組み込んで作った作品。
(2)第Ⅱ章 「 伝統工芸(陶芸)のわざと美」
伝統工芸のこれまでの「伝統」というものを意識することで、新たな技術・技法を生み出し、多様化していく過程が示されている。初期に活躍した人を引継ぎ、現代に活躍 する人へと繋いだ人達の作品である。
この章の作品では、形が西洋陶磁器の影響を受けるとともに、表面の文様がぐんと現代に近づいた。寧ろ現代のものをシックに発展させたようで、とても魅力を感じた。
<三代 徳田八十吉 耀彩鉢 創生>
九谷の伝統的な作品で人間国宝となった人が。こんな大胆な鮮やかな作品を作りだしたら周辺はびっくりしただろう。ここに入っている色は九谷の基本の色だそうだが、こ ういった抽象表現を試みて成功したことは、後続への影響は大きかっただろう。
<庄村健 紅染大鉢「燦々」>
これまた、大皿の底から焔が燃え上ってくるような迫力を感じる作品。これに果物を盛って、それを取っていったら隙間から焔があがってきそう。
山田出 備前土積上花器
材種の違う土を層状に積み上げている。熱田神宮に瓦と土を重ねた信長塀があるが、それを丸めたよう。飛びだしている層の表面の凹凸が自然に割れた面のようで見ていて飽きない。
<福吉浩一 炭化線象嵌縞花器>
黑く焼くことができる土の間に別の土を薄く挟み象嵌のように見せている。全体形状がユニークなだけでなく、一定ピッチで削ってへこんだ面がリズミカル。伝統技術で新し い表情を見せている。
(3)第Ⅲ章 「未来へつなぐ伝統工芸(陶芸)」
今日の生活に即した新しいものを築き上げること」を目標に、伝統的な技術・技法を駆使しつつ、、現代を意識して作品を作り上げている作者の作品を紹介している。
形も色彩も賑やかになった。なんでもできるぞと羽根を伸ばしつつ、でも基本の形など、なにか伝統の要素を入れ込んで、見る人の気持ちを安心させている感じ。ここはた くさん魅力ある作品があったが5点のみ紹介。特に白の素地のもので美しいものがあったが、写真では表現できないので、載せていない。
<井口雅代 釉描彩笹文蓋物雪融け>
白い雪から覗く柔らかな緑の笹の葉、形も色も女性らしく非常に繊細。この第3章になって女性の作品が一気に増える感じがする。
<井戸側豊 銀泥彩磁鉢>
光が中にこもって、そこに鮮やかにカイワレ大根が立ち上がるという、かつてない題材を扱っている。輝きが綺麗。
<小形こず恵 染付瓶「朝顔」>
やはり女性作家が、色と形を朝顔に純化させている。エミール・ガレなどアールヌーボー的な雰囲気も感じる。
<木村芳郎 碧釉漣文器>
メキシコの海にあるブルーホールを連想させる。このブルーは作者が作ったので「木村ブルー」と呼ばれているそうだが、表面に小さな凹凸を付けてさざ波のような濃淡を付けるなど芸が細かい。
日本の陶磁器の伝統技術の発展だけでなく、周辺から新しい才能がどんどん入ってきて、陶芸の技術や見せ方が大きく展開しているのだなとおもった。
2.ギャラリー展について
こちらは、現在の瀬戸と常滑にいる作家の作品展であり、一部に特別展参加の人の作品もあった。
特別展よりも若い作者が多くまた現在の作品なので、カラフルで造形的な作品が多かった。全般的に瀬戸のほうがカラフルで軽やか、常滑のほうが重厚な感じがした。
こちらを見に行ったのは去年指導を受けた先生の作品があったからである。インターネットで作品を見ていたが、やはり実体は想像していたサイズのイメージや光沢と全然違った。
以下、先生の作品と、面白いとおもった作品を並べる。こちらに関しては作者や題目を示さない。
<鎧をまとう>
中が木質の感じに、硬い皮状のものを巻きつけた材質の違いの見え方が面白い。
<折り紙のような作品>
非常に薄っぺらく、紙のよう。
<かくれんぼしているつもり>
これは鬼なんだろうか?気が小さい女の子のよう。
<ラピュタのロボット?>
君は壊れて横たわる前に、何を見ていたのかな?
やはり若い元気な人の作品を見ると、イメージが広がる。
少し陶芸を始めたが、今回はこんな形ができるのか、こんな色が出せるのか、こんな地肌になっているのかなど 驚きの連続だった。 陶芸の場合は表面の光の反射が独特なので、当然私の写真は大したことがないが、パンフレットの写真もその対象をちゃんと写し出すのは難しい。やはり展示会に行かねばならないとおもう。
・特別展
特別展/日本工芸会陶芸部会50周年記念展 未来へつなぐ陶芸 ―伝統工芸のチカラ
・会期:2023年4月15日(土) - 6月18日(日)
・惹句:歴代の人間国宝の名品をはじめ、全国各地の優れた伝統陶芸が一堂に会する展覧会
・構成
第Ⅰ章 「伝統工芸(陶芸)の確立」
第Ⅱ章 「 伝統工芸(陶芸)のわざと美」
第Ⅲ章 「未来へつなぐ伝統工芸(陶芸)」
(全国8か所で巡回開催)
・ギャラリー展
瀬戸×常滑 陶芸 ―同じ時をつくる―
・会期:2023年4月29日(土) - 5月28日(日)
・惹句:愛知県でともに代表する陶産地である瀬戸と常滑において活躍する作家の作品が集結
<特別展およびギャラリー展のポスター>
1.特別展について
1950年に施行された文化財保護法とその改正をきっかけとして発足した日本工芸会や日展等で活躍した人(人間国宝含む)や新進気鋭の若手の展示会。135名137作品。
それぞれの章で、私が興味を持ったものの例を写真をしめす。
(1)第Ⅰ章 「伝統工芸(陶芸)の確立」
文化財保護法によって、工芸の芸術性、またそれを生み出す無形の技術の重要性が理 解された。工芸会所属の特別重要な技術を有する人間国その周辺の人から生み出される伝統工芸としての陶磁器の美の認識と、それに飽き足らず創作を組み込んだ創作工芸が刺激しあった。工芸会の初期に活躍した人の作品が展示されている。
ここには、加藤卓男、板谷波山、富本健吉、清水六兵衛などビッグネームの作品がずらりと並んでいた。どれも完璧で、畏れ多いと思わせた。素晴らしいけれどもみていて それほど楽しいとは思わなかった。
<江崎一生 灰釉鳥文大皿>
入り口にドスンと置かれている大きな皿。60cmくらいのロクロで作った大皿に、柄杓で緑色の灰釉をバシャッとかけたものだそう。完全な形と修練の偶然性をコントロールした色彩の作品。偶然に現代性が?
<加藤卓男 三彩鉢 蒼容>
形も色も美しい。宝石のカットのような造形で現代的、大きいのに薄くて軽やか。配色も大胆で鮮やかな流れ。 正倉院からの唐三彩復元の依頼の過程で、自分の創意を組み込んで作った作品。
(2)第Ⅱ章 「 伝統工芸(陶芸)のわざと美」
伝統工芸のこれまでの「伝統」というものを意識することで、新たな技術・技法を生み出し、多様化していく過程が示されている。初期に活躍した人を引継ぎ、現代に活躍 する人へと繋いだ人達の作品である。
この章の作品では、形が西洋陶磁器の影響を受けるとともに、表面の文様がぐんと現代に近づいた。寧ろ現代のものをシックに発展させたようで、とても魅力を感じた。
<三代 徳田八十吉 耀彩鉢 創生>
九谷の伝統的な作品で人間国宝となった人が。こんな大胆な鮮やかな作品を作りだしたら周辺はびっくりしただろう。ここに入っている色は九谷の基本の色だそうだが、こ ういった抽象表現を試みて成功したことは、後続への影響は大きかっただろう。
<庄村健 紅染大鉢「燦々」>
これまた、大皿の底から焔が燃え上ってくるような迫力を感じる作品。これに果物を盛って、それを取っていったら隙間から焔があがってきそう。
山田出 備前土積上花器
材種の違う土を層状に積み上げている。熱田神宮に瓦と土を重ねた信長塀があるが、それを丸めたよう。飛びだしている層の表面の凹凸が自然に割れた面のようで見ていて飽きない。
<福吉浩一 炭化線象嵌縞花器>
黑く焼くことができる土の間に別の土を薄く挟み象嵌のように見せている。全体形状がユニークなだけでなく、一定ピッチで削ってへこんだ面がリズミカル。伝統技術で新し い表情を見せている。
(3)第Ⅲ章 「未来へつなぐ伝統工芸(陶芸)」
今日の生活に即した新しいものを築き上げること」を目標に、伝統的な技術・技法を駆使しつつ、、現代を意識して作品を作り上げている作者の作品を紹介している。
形も色彩も賑やかになった。なんでもできるぞと羽根を伸ばしつつ、でも基本の形など、なにか伝統の要素を入れ込んで、見る人の気持ちを安心させている感じ。ここはた くさん魅力ある作品があったが5点のみ紹介。特に白の素地のもので美しいものがあったが、写真では表現できないので、載せていない。
<井口雅代 釉描彩笹文蓋物雪融け>
白い雪から覗く柔らかな緑の笹の葉、形も色も女性らしく非常に繊細。この第3章になって女性の作品が一気に増える感じがする。
<井戸側豊 銀泥彩磁鉢>
光が中にこもって、そこに鮮やかにカイワレ大根が立ち上がるという、かつてない題材を扱っている。輝きが綺麗。
<小形こず恵 染付瓶「朝顔」>
やはり女性作家が、色と形を朝顔に純化させている。エミール・ガレなどアールヌーボー的な雰囲気も感じる。
<木村芳郎 碧釉漣文器>
メキシコの海にあるブルーホールを連想させる。このブルーは作者が作ったので「木村ブルー」と呼ばれているそうだが、表面に小さな凹凸を付けてさざ波のような濃淡を付けるなど芸が細かい。
日本の陶磁器の伝統技術の発展だけでなく、周辺から新しい才能がどんどん入ってきて、陶芸の技術や見せ方が大きく展開しているのだなとおもった。
2.ギャラリー展について
こちらは、現在の瀬戸と常滑にいる作家の作品展であり、一部に特別展参加の人の作品もあった。
特別展よりも若い作者が多くまた現在の作品なので、カラフルで造形的な作品が多かった。全般的に瀬戸のほうがカラフルで軽やか、常滑のほうが重厚な感じがした。
こちらを見に行ったのは去年指導を受けた先生の作品があったからである。インターネットで作品を見ていたが、やはり実体は想像していたサイズのイメージや光沢と全然違った。
以下、先生の作品と、面白いとおもった作品を並べる。こちらに関しては作者や題目を示さない。
<鎧をまとう>
中が木質の感じに、硬い皮状のものを巻きつけた材質の違いの見え方が面白い。
<折り紙のような作品>
非常に薄っぺらく、紙のよう。
<かくれんぼしているつもり>
これは鬼なんだろうか?気が小さい女の子のよう。
<ラピュタのロボット?>
君は壊れて横たわる前に、何を見ていたのかな?
やはり若い元気な人の作品を見ると、イメージが広がる。
少し陶芸を始めたが、今回はこんな形ができるのか、こんな色が出せるのか、こんな地肌になっているのかなど 驚きの連続だった。 陶芸の場合は表面の光の反射が独特なので、当然私の写真は大したことがないが、パンフレットの写真もその対象をちゃんと写し出すのは難しい。やはり展示会に行かねばならないとおもう。
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