宮本三郎 「裸婦」 3項にて記載
場所:愛知県美術館
期間:2022.04.01~07.03
訪問日:2022.06.30
先日投稿の、ミロ展と同時期に開催されていた表記の通常展示も紹介しておく。
1.展示室4 20世紀西洋美術の名品 戦前のヨーロッパ美術
印象派およびその後暫くのパリ画壇を展示する部屋で、モネやクリムト、マティスなど、日本人が馴れ親しんだ画家が展示されている。今回は2020年新収蔵の モーリス・ドニ 初公開 「花飾りの船」が目玉だった。
ドニの所属したナビ派は、印象派の写実主義を否定し秩序を構築しようとし、神秘主義的な要素も取り入れた。ドニはその理論的主柱で キュビズムやフォービズムにも影響を与えた。
この絵は、ノルマンディの港町のお祭りを描いている。光を重視する印象派とはまったく違った描き方、色彩で描いている。中間色をペタッと平面に塗っている。中央の船をを飾る花はアジサイ、日章旗も描き込まれているが、最初の購入者が大原美術館で、ドニがサービスのために書き込んだとのこと。もしかするとアジサイ原産が日本で、シーボルトがヨーロッパヘ伝えたことも知っていたのかもしれない。中央の人が神話とか宗教画に近いのは、子の人がテーマをそういった時代に戻そうと提案していたから。
なお船に乗っている人々は自分の家族がモデルで、家族の集合写真みたいになっているとのこと。
彼の描き方はアンリ・マティスとのこと。その部屋にマティスの作品「待つ」があったので、比較のために下記に示す。女性2人が訪問に来るはずの人を、今か今かと窓際で待っている好きな作品だが、 確かに色彩バランスや色の塗り方が似ている所があるとおもう。
2.展示室5 20世紀西洋美術の名品 戦後ヨーロッパからアメリカへ
現代美術の展示で、今回は目立つ新しい作品の展示がなかったので略。
3.展示室6 宮本三郎ー隠された裸婦の謎
ここも今回の目玉展示。宮本三郎(1905~1975)は戦前からの洋画家で、戦中は有名な戦争画を描いた。戦後も洋画の大家として日本芸術院会員、二紀理事長にまでなった人。
愛知県美術館はその大家が亡くなった2年後の1976年に、多分宮本家から絵画「家族」を購入した。それを近年詳細に調べるとキャンバスが二重になっており、表のキャンバスを外してみると別の絵画が現れたというドラマチックな展開。時にあるのは、違う絵を描いたキャンバスにその上から別の絵を描くとか、裏返して描くというというケース。このような二重というのはかつてない。もちろん関係者は誰も知らない。
隠されていたのは「裸婦」で、1937年に発表後行方は記録なし。表の「家族」は1956年発表。中の「裸婦」は頭髪が真っ白になるなどカビが生えて傷していたため補修して、今回が1937年依頼のお目見え。
下図が「家族」。最初に掲載が「裸婦」
三郎氏の履歴を見てみると、結婚が1928年、37年にこれを描いた後に38年にパリを中心にヨーロッパ遊学、帰国後戦争画家として派遣や疎開等、戦後も金沢美大の先生やヨーロッパ遊学、多摩美の教授など活動している。56年に家族を描いた時は多摩美の教授で、キャンバスをけちる状況ではないと思う。
そうすると、何故こんな風に絵を隠し自分で所蔵していたのか・・・・ いろいろ想像が膨らむ。
なお、「裸婦」はとても若若しくて元気な絵だとおもうし、「家族」は家族の愛情がじっくりと感じられる丁寧な絵だと思う。
ともかくは愛知県美術館は、1枚の絵画の値段で、2枚の絵とミステリーロマンを手に入れることが出来 ラッキーでした。
4.展示室7 庄司達/新聞紙
庄司氏が1970年の日本国際美術展「人間と物質」に出展した、新聞紙を使ったインスタレーション2件が、部屋の壁全部を使って展示されている。一つは局部の四角のみを除いて真っ赤に塗った新聞紙を隙間なくに壁にとめたもの、もう一方は、局部に四角い新聞紙コピーを貼った新聞紙をやはり隙間なく壁に止めたものである。愛知出身のアーチスト作品として最近収蔵されたものだそうで、最初の展示の時とは壁の形が違うのでどう展示するかを検討したとのこと。
この作品は意味を考える前に存在が難しいなと思った。1970年頃は新聞紙は情報ツールの王様だったが、今はその価値がかなり下落している。もう10年もたったら新聞紙は存在すらなくなる可能性がある。新聞紙という媒体の意味を理解しての作品だろうから、それが理解できない人ばかりになった時の作品の存在意義はなんだろう。
5.展示室8 木村定三 利休流無作法茶会
木村はかつての名古屋のお金持ちで、近世絵画やアジア地域美術の大コレクションを愛知県美術館に寄贈した人。この美術館ではこの1室は、木村コレクション専用である。
寄贈コレクションの中に、木村が1975年に料亭を借り切って大茶会を実施した時の道具一式(茶菓子の型まで)があったので、それを並べている。
愛知は数寄ものが多く茶にはうるさいと言われているが、この時は熊谷守一、小川芋銭、そしてなんと伊藤若冲の絵画まで、飾っていた。茶道具も値打ちありそうなものばかり。
ちょっと興味を持ったもの2点を下記に示す。
・玄関に置かれていた彫刻(小さい) 「コーラス」 加藤孝一
多分テラコッタ製。 たくさんの顔がお客さんにたいして、いらっしゃいと声をそろえているイメージなのだろう。
・掛け軸 「河童」 熊谷守一
熊谷守一がこんな伸びやかな線で、河童を描くとはイメージしていなかった。
顔も手足の爪も好きです。
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