ハエ取りグモ(蠅捕蜘蛛、英名:jumping spider)を、近頃見掛けない。
蝿の数が減ったからなのかは判らない。 俊敏に動くその姿はある意味美しく思っていた。 此の処我が部屋に、蝿様が訪問されることが有る。 「ぶーん」と飛び回るのがなんともいやな感じだ。 心が落ち着かない。 かと言って、殺虫剤で「しゅー」も嫌なのである。 後の薬品のにおいが、どこか昔の「霊安室」に似ている気がするのだ。 「霊安室」は、お香と薬品のにおいが混ざり合って独特のにおいがしていた。 その匂いにどこか似ている気がするのだ。 高校生の頃、霊安室の管理の仕事をしたことが有る。 私は死人は怖くない。 生きた人間が怖い。 夏休みひと夏、のアルバイトだった。 葬儀屋さんのバイトなのだが、本職さんが死体処理した後、家族が出入りするので、お留守番したり(お線香を絶やさぬよう気お付けたり) 、昼間は本職さんが詰めているので夜だけの仕事である。 役得も多いい。 家族からの差し入れ、・・・。 お小遣いまでいただいた。 こんなアルバイトは他にないが、怖がって誰もやらないそうだ。 ドライアイスを、死体の中に詰めるのも仕事の内なのだ。 話がよそ道に逸れてしまった。 そう香りの事だった。 いいお香は、心を落ち着かせる。 が、安物は心が挫ける。 長時間霊安室にいると其れがはっきりするのだ。 蠅捕蜘蛛の話が、とんでもない方向に行ってしまった。 相手が、クモ(雲?)だけに掴みどころがないようだ。 ハイ、時間はよろしいようで。 ・・・・