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またまた浅田次郎の本を買ってしまった。というより何となく話は怖そうでこの種の本は嫌ではない。怖がりほど興味が湧くといういうものだ。
『除霊会の夜』 浅田次郎著 文春文庫
初老の私は嵐の夜に出会った女から除霊会に招かれる。そこで再会した今は亡き人々。そのなかにはある理由から、記憶の片隅に押しやっていた幼い友達がいた。さらに私は翌日も再訪するように誘われる。会わねばならぬ人々のために。戦後という時代に取り残された者たちへの鎮魂歌として著者が送る極上の怪異譚。 解説より
特に幼い時の級友の生涯の切なさ。転校生のキヨは体が小さく、陰鬱、無口、周りの友達から決定的に何かが違う自分を取り繕うように多くのうそをついた。復員後も酒をあおり働かない父親、家計をヨイトマケで支える母。
戦後の日本にはこういった家庭が多かったことだろう。
それでも近所の人々は彼に対して優しかったが、結局は父親の手によってダンプカーの走る前に突き飛ばされるのだ。交差点に立った親子に声を掛けられなかったばかりに、今でも後悔の渦が残る主人公。身も骨もばらばらになって散ってしまった幼い級友。あまりにも凄惨な展開に本を伏せてしまった。
その後、父親は除霊の会に現れて懺悔をし、級友も一緒に遊んでくれて嬉しかったよと礼を言う。死んだ今も決して父親のことを悪く言わない。だって大好きな父親のしたことだものと。この章は泣けてくる。昭和の時代の苦い思い出は、主人公のなかに黒い塊となって今も責め苛む。あまりにも哀しく切なく、残酷な戦争の爪痕が痛ましい。
奇しくも8月15日は終戦記念日、広島、長崎に原爆が投下されて75年の月日が経つが、いまだに核の廃絶には程遠い。当時の生存者が数少なくなり、戦争の悲劇を繰り返さないためにと立ち上がった高齢者の言葉が重く胸にのしかかる。8月は先人たちのみ霊を祀る大切な月である。