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アベリサウルス類の脳はティタノサウルス類の夢をみるか



先日の古生物学会で聞いてきた小脳片葉で思い出した。脳エンドキャストの形状から機能についてどこまで論じられるのかという問題である。
 アベリサウルス類の脳函といえばPaulina Carabajal博士で、カルノタウルス、アベリサウルス、アウカサウルスの脳について研究している。アウカサウルスについては、脳函の腹側が大きく破損して内腔が露出していたが、CTスキャンによって脳エンドキャストを再現することができ、内耳の3次元構造も得られた。

アウカサウルスの脳をマジュンガサウルス、インドサウルス、ケラトサウルスと比較してみると、前脳、中脳、後脳のプロポーションは事実上これらの種類と同じで、基本的な形態はよく似ていた。
 また内耳迷路(平衡覚器官)では、前方半規管が後方半規管より大きく、外側半規管が最も小さいが、これはほとんどの獣脚類と同様であった。外側半規管を水平にすると、アウカサウルスの頭蓋天井は水平に保たれている。これもマジュンガサウルスやケラトサウルスと同様で、基盤的な獣脚類に共通している。多くのコエルロサウルス類では頭蓋が下向きになる。


アウカサウルスの脳では、小脳片葉の部分がマジュンガサウルスよりも大きかった。小脳片葉は、頭、頸、体の動きに伴う眼球運動の調節(動眼反射)を司り、機敏な頭の動きに依存する動物種で大きく発達する傾向がある。そのためアウカサウルスはマジュンガサウルスよりも、すばやい頭の動きと動眼反射には優れていたかもしれないという。

しかし一方で、外側半規管の大きさは、マジュンガサウルスの方がアウカサウルスやケラトサウルスよりも大きく張り出していた。半規管が長い方が一般に感覚が鋭敏と考えられるので、頭を左右に振る運動については、マジュンガサウルスの方が感覚が鋭敏だったかもしれないという。

想像を逞しくすれば、アウカサウルスの方が高速で獲物を追跡することが多く、そのために動眼反射が発達したと思いたいところだが、それなら外側半規管が小さいのはどうなのか。一方マジュンガサウルスは、外側半規管で対応したということか。すばやい頭の動きに対して異なる適応の仕方をしたのかもしれない。
 なんだか煮え切らないようだが、種間の変異として細かい違いはあっても、そこまで機能に反映していたとは言い切れないのではないだろうか。ある部分が同じ容積でも機能に差がある場合もあるだろうし、容積に差があっても機能は同じこともあるだろう。ニューロンの密度を調べたわけでも、感覚生理学的な実験をしたわけでもない。データに対してこのような考察を書くのは正しいが、機能については「可能性がある」くらいのものだろう。


参考文献
Paulina Carabajal, A. and Succar, C. (2015) The endocranial morphology and inner ear of the abelisaurid theropod Aucasaurus garridoi. Acta Palaeontologica Polonica 60 (1): 141–144.
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