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肉食の系譜
メラクセス2

メラクセスの足の第2指には微妙なカギ爪がある。これはドロマエオサウルス類ほど発達したものではないが、一応腹側が鋭くなっているので何らかの機能があったのだろう。大型カルカロドントサウルス類の体形で、片足を持ち上げて攻撃したとは考えにくい。しかし大型カルカロドントサウルス類も最初から大きいわけではない。ごく小さい幼体の段階では、地上を走るトカゲや哺乳類などの小型の獲物を捕食したはずである。その際に前肢は小さくて地上に届かないので、足の爪ですばやく押さえつけることが非常に有効だったのかもしれない。幼体の生存率が向上することは、適応度に大きく貢献するから、そのために発達した形質ではないか。昔、ディノプレスに松村しのぶ氏が、ドロマエオサウルス類のカギ爪は前肢が翼状になり指が癒合したりして意外と不便だったために、後肢のカギ爪が発達したのではないか、という論考を書かれていた。カルカロドントサウルス類の中でも特に前肢が小さくなったメラクセスがこのような形質をもつことは、それに通じるものがあるのではないか。
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恐竜博2023 (2)

スキピオニクスの実物化石を見られたことは大変な幸運で、感謝しかない。よくミネラルショーなどで販売されているレプリカは濃い茶色で塗られていたりするが、本物はこんな色なのかと。ただし既に詳細なモノグラフが出ているので、素人としてはパネルの説明を信じるしかない。腸のヒダや爪のケラチンなどはわかりやすいですね。歯の状態もわかる。カルカロドントサウルス類の幼体かもしれない可能性についても、ちゃんと書いてある。

今回、ティラノサウルスは主役ではないのだから、スコッティだけで十分であり、タイソンは必要なかったと思うがいかがだろうか。恐竜ファンとして許せない言動だろうか。そもそもティラノサウルスを特別視し、集客力のためにはティラノサウルスが必須であるとか、ティラノサウルスの新しい標本を出せばみんなが喜ぶとか、そしてその通りになる風潮がおかしいのである。
私はスコッティの方が安心感があるし、良いと思った。以前にもこの角度で撮影したが、飽きないですね。
休憩所につながる所の展示ではレーザー励起蛍光法の研究成果がある。私はプシッタコサウルスの「へそ」がよくわからなかった。該当部位が線で囲んであるが、どういう構造が見えればヘソと判断できるのか、のイメージがないので、これではわからない。孵化したばかりの爬虫類に「へそ」があることは知っている。卵黄嚢のなごりか管状の組織があるということだろう。

このカルノタウルスの全身骨格は後肢が長いタイプのものですね。現在は修正されている。しかしこれを見て、「こんなに脚が長いのか」と、脚の長さにいたく感心している中年男性がいた。手の新しい復元について、何を根拠にどのような解析をした結果、この指をすぼめたような形が結論されたのか、が説明されていない。おそらく未発表などの理由で詳細は書けないのかもしれない。

はっきり種名が表示してあるのに、説明をほとんど読まないお客さんが多い。メガラプトルの全身骨格の手前にマイプの実物化石が置いてあるので、メガラプトルの骨格をマイプだと思った人もいたようだ。今のところマイプの復元はできないので、メガラプトルのイメージで想像するしかないので、この展示の仕方は適切だが、それがアダになったか。

マイプの特徴はこの辺ですね。尾椎の神経棘。やはり頭骨もカギ爪も見つかっていないものを、最強の捕食者と持ち上げることにいささか無理がある。「長さ何センチの歯がズラリと並び・・」とか「カギ爪はメガラプトルの1.5倍もあり・・」と具体的に書けないのだから、限界がある。
最後の大量絶滅の考察のところで、解説パネルを熱心に読んでいる中年女性がいた。「北米での壊滅的打撃に比べると南半球の環境変化は異なっていた可能性がある。アルゼンチンで発見された植物化石は・・・グローバルな環境変化の様相を解明するため、今後もデータの蓄積が必要である。」的なやつである。研究者的には普通の文章で問題ないように思える。ところが、その女性は「もう少し一般人にもわかるような書き方はないのかしらね。」と言っていた。どこかのブログではなく、博物館の展示でもそうなんだなという感じである。言語空間というものは難しいものだと感じた。
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