昔、見た映画の中には、まるでわけのわからない映画が、数多くあった。そういう映画を見るのが、どことなく恰好良く、また訳知り顔の映画通のように思えたからだ。この、「ポゼッション」も、その中の一つであり、また、わけのわからなさにかけては、その最たるものだった。まだ若かった私は、この映画を、繁華街から少し離れた小さな三等館の、観客もまばらな座席に座って、一人で見た。見終わって、呆然とした。映画は、いわゆるホラー映画の体裁をとりつつ、でも全然怖く無かった。
『ポゼッション』(Possession)は、1981年にフランスと西ドイツ合作のホラー映画。自分の妄想が生み出した魔物に欲情する女性アンナが、心の葛藤の中で次第に狂気に陥っていく姿と、そんな彼女に翻弄されて自分を見失っていく夫マルクの姿を描く。
第34回カンヌ国際映画祭でパルム・ドールにノミネートされ、イザベル・アジャーニが主演女優賞を受賞した。
監督 | アンジェイ・ズラウスキー |
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脚本 | アンジェイ・ズラウスキー |
製作 | マリー・ロール・リール |
出演者 | サム・ニール イザベル・アジャーニ |
音楽 | アンジェイ・コジンスキー |
撮影 | ブリュノ・ニュイッテン |
編集 | マリー=ソフィー・デュビュ シュザンヌ・ラング=ヴィラール |
製作会社 | ゴーモン |
配給 | ゴーモン 大映 |
公開 | 1981年5月27日 |
下の動画は、この映画「ポゼッション」の中の、イザベル・アジャーニの、狂気にとりつかれたシーンの、ハイライト集である。舞台はベルリンだが、言語は英語。ボブという幼い息子のいるマルクは、美しい妻がハインリッヒという男と浮気をしているのを発見し、妻を取り戻そうとするが、妻は次第に狂気にとりつかれ始める。
ポゼッション (Possession)は、「所有」や「占有」を意味する英語。
そこから転じて、「悪魔が取り付くこと」を意味する英語でもある。
POSSESSION
後年、ビデオで再度見てみたが、やっぱりよく理解できなかった。それでもう何が描かれているのか、その意味を考えるのはやめて、ただストーリーだけを追いながら、画面を見続けた。すると、舞台になったベルリンの、ひどく清潔だが、あまり人影の見えない寒々しく冷たい街の光景が、私の目の中に虚ろに残されていた。
この映画の公開後の、1989年11月9日、ベルリンの壁は崩壊し、東西両ドイツはひとつになった。
ポゼッション デジタルニューマスター版 | |
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