日本企業の“内部留保”の額が500兆円を超え、過去最高を記録している。これを受けて、「賃上げなどによってもっと従業員に還元すべきだ」などといった議論がある。この20年あまり、先進諸国と比べて日本の賃金は、全く増えていない現状である。
内部留保というと内部にお金を貯めこんでいるイメージを思い起こすが、正確には「利益剰余金」といい、利益から法人税や株主などへの配当を行なったあとに残った金額である。内部留保は、企業の資金調達の方法として極めて重要なもので、企業が資金を確保する方法は、大きく分けて以下の3つしかない。
- 内部留保(利益剰余金)
- 投資家等からの出資(新株発行等)
- 金融機関からの融資
このうち、中小企業の大部分を占めるオーナー企業にとっては、外部の投資家等からの出資を受けることは困難である。 また、金融機関からの融資も、財務状況が良好でなければ有利な条件で受けることができない。
結局、それまでにどれほど業績を積み上げてきたかによって企業判断は大きく左右されるので、内部留保はその重要な証である。
従って、内部留保を積み上げることは、企業が資金を確保する方法としてきわめて重要である。すなわち、内部留保の額が大きいことは優良企業の目安のひとつで、「自己資本比率」が高いことは良いことである。なお、トヨタ自動車の自己資本比率は4割弱である。
ところで、円安や物価高対応を中心とした約30兆円の大型経済対策が閣議決定される予定で、これらはすべて赤字国債が財源となる。円安を食い止めるために日銀の金利引き上げがあるが、国債の暴落も懸念されるので、そんなに簡単なことではない。
そこで、日本の借金である国債を一体誰が払うのかという心配がでてくる。個人には、借金を返済できなければ自己破産の申立が出来るが、国は基本的にはできない。
国の財政を立て直すためには収入を増やすか、支出を抑えるしかないので、あまり良い方策が見当たらない。ただ、法政大学の水野和夫教授が、以下のことを主張している。
『2019年3月末現在、企業の内部留保は、463兆円ある。このうち263兆円は、バブル経済以降の1989年以降に積みあがったものである。今回のコロナ禍に際して、“新型コロナ国債”なるものを発行して、この263兆円を減資して企業からお金を吐き出させようということである。企業は社会的な存在であり、今回のようなコロナ禍による非常事態には当然のことである。』と。
日本経済を支えている資本主義というものが問われており、上述した水野和夫教授の考えは、企業の税負担になり議論が分かれるところであるが、個人的には大変良いアイデアであると思った。なお、国家予算については、次のとおりである。
<国家予算>
日本の国家予算は、約100兆円である。国家予算が成立した後に何らかの理由で必要事案が発生し、予算案での執行が難しくなった場合、「補正予算」といって予算を組み替え追加する場合がある。
日本の国家予算は、一般会計の約100兆に加えて、特別会計が200兆円規模である。特別会計は目的ごとの予算で、国がどの事業にどのくらいお金を使ったのかを明確になりやすいという特徴がある。なお、特別会計のほかに「第二の予算」と言われる財政投融資がある。
財政投融資とは、以下のとおり。
- 租税負担に拠ることなく独立採算で行なう事業
- 財投債(国債)の発行などにより調達した資金を財源
- 政策的な必要性があるものの、民間では対応が困難な長期・固定・低利の資金供給や大規模・超長期プロジェクトの実施を可能とするための投融資活動。 これには、公庫・公団などがある。
「十勝の活性化を考える会」会員