とやざき農園日誌

浅間山麓(長野県小諸市)で自然農法による農業を行っています
肥料や農薬を施さず自然の養分循環の中で野菜を育てています

有機酸による岩石からのミネラル成分溶出

2019年01月18日 | 日記
昨日は、畑の土壌PHを測定して、作物の生育に必要なミネラル成分が地下水や枯草から供給されていることを確認しましたが、そもそもミネラル成分は如何にして地下水に溶け込むのでしょうか。

年末、畑脇を流れる農業用水の源である柏木水源地を調査して、水源に林立する杉が用水のPHに深く関与していると考えられる測定値を得ました。その際に立てた仮説は、水源の水は、杉の根から放出される有機酸が山の岩石からミネラル成分を溶かし出すため弱酸性。下流の水は、杉の有機酸が用水路に生息する微生物に分解されるためミネラル成分だけが残ってアルカリ性になる、というものでした。

植物から放出される有機酸が岩石を溶解させるという話は、書物を読んで得た知識に過ぎないため、実験でそれを確かめてみたいと思います。

実験材料として、岩石は、畑から頻繁に出土する花崗岩を用います。花崗岩は長石、石英、雲母から成り、大部分が乳白色の長石、その中に散りばめられるように無色透明の石英と、黒色の雲母の粒があります。石英は純度の高い強固な結晶性を持つケイ酸塩鉱物であり酸にほとんど溶けません。一方、長石と雲母は不純物(アルカリ金属など)が多く結晶性がやや弱いケイ酸塩鉱物であり、不純物部分が酸によく溶けるため比較的容易に構造が崩れてバラバラになり、岩石内のミネラル成分が次々と溶け出します。


有機酸については、紫蘇ジュースを仕込んだりする時に使うクエン酸が自宅にあったので、有機酸の代表として使ってみます。クエン酸は英語ではCitric Acid。柑橘類Citrusに含まれる酸Acidです。樹木に多い有機酸のようですが、野菜の根からもクエン酸の放出があるそうです。


実験は、先ず、花崗岩をハンマーで叩いて粉々に砕き、表面積を増やして反応性を高めます。次に、弱アルカリ性の弁天清水にクエン酸を少量混ぜて酸性の水溶液を作ります(水道水は、浄水処理で使った酸が残留している可能性が高いので使いません)。そして、花崗岩粉末を酸性水溶液に投入してPH変化を計測する、という手順です。

<実験A:森林土の土壌酸性度を想定したPH4.52のクエン酸水に花崗岩粉末を投入>
(5分後)4.63(10分後)4.63(20分後)4.65(30分後)4.66(60分後)4.68(120分後)4.72

<実験B:黒ボク土の土壌酸性度を想定したPH5.48のクエン酸水に花崗岩粉末を投入>
(5分後)5.57(10分後)5.59(20分後)5.62(30分後)5.64(60分後)5.67(120分後)5.72

<実験C:黒土の土壌酸性度を想定したPH6.49のクエン酸水に花崗岩粉末を投入>
(5分後)6.54(10分後)6.56(20分後)6.57(30分後)6.58(60分後)6.61(120分後)6.66
※A、Bに比べて、上昇速度がやや遅い結果

クエン酸濃度がかなり薄いCでも、花崗岩から十分にアルカリ成分を溶かし出せることが分かりました。野菜の生育環境は主にCの黒土に該当します。野菜にも岩石から溶かし出す力があると言えそうです。
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