金曜日に行われた「第8回梅見月杯(SPⅠ)」。
兵庫、金沢から、共に地区を代表するトップホース2頭が出走。
チャンストウライ、ビッグドン。
迎え撃つ名古屋勢もいまや名古屋の顔というべき存在の2頭。
ムーンバレイ、ウイニングウインド。
稀に見るハイレベルな争いが予想されたこのレース。
勝ったのは、名古屋期待のムーンバレイでした。
鞍上は吉田稔ジョッキー。
孤高のエース。
思えばこのムーンバレイという馬、主戦は、吉田稔騎手のひとつ下の後輩、倉地学ジョッキーでした。
連戦連勝を重ねた昨年のムーンバレイの背中には、いつも倉地学騎手がいました。
前走「マイル争覇(SPⅡ)」では、吉田稔騎手はライバル馬である”ウイニングウインド”に騎乗。
倉地学騎手騎乗のムーンバレイは、断然1番人気に支持されながら、このウイニングウインド鞍上の吉田稔騎手の巧みな騎乗に競り落とされての2着に敗退。
倉地ムーンバレイは、連勝が止まってからまさかの3連敗を喫しました。
そして今回。
ムーンバレイの鞍上には吉田稔騎手が。
ウイニングウインドには、若き名古屋競馬のリーディングジョッキー岡部誠騎手が騎乗することになりました。
さまざまな理由はあろうとも、形だけ見れば実質、倉地学ジョッキーは降ろされたという形。
全国も狙える有力馬。
共に戦い、育ててきた絆。
しかし、勝負の世界。
結果が出ないヤネは、淘汰されていくのは当然の理。
なんとしても落とせない一戦の背中に彼の姿はなく・・・・・。
前走、自らが打ち負かした馬に奇しくも騎乗し、そして今度はその馬を負かしにいくこととなった吉田稔騎手。
もし彼がこれからの若いジョッキーであるならば、それは非常に名誉なことなのでしょう。
関係者からの信頼。期待。そしてトップを目指す自分自身に。
佐賀から出てきたばかりの頃ならば、彼の心は曇ることは決してないのでしょう。
しかし今や彼は、泣く子も黙る2000勝ジョッキー。
騎手としての”吉田稔ブランド”は、名古屋競馬ではカリスマ性すら持っています。
馬主、調教師・・・・・。
誰もが彼に期待し、勝利のために、栄誉のために、良い馬には良い騎手をと考えるのは当然のことでしょう。
そしてファンも、全国を目指せるような期待の馬にはトップジョッキーを願います。
そして期待通りに彼は、今回の「梅見月杯」で他地区の強豪馬を退けてみせてくれました。
”吉田稔”という一人のジョッキーは、名実共にさらにその凄さを全国に示すことになりました。
しかし、”吉田稔”という一人の人間としては・・・、果たしてどうだったのでしょう?
集まる人気馬。
それは同時に、若手や同僚のチャンスを奪ってしまうことでもあります。
そして、さらに大きく膨れ上がるカリスマ。
その世界で常に上を目指していた頃には、簡単に追い払うことができた自分自身への心への負荷も、ふと気付くと山の頂上に立っている自分。
そこは、今まで気付かなかった強大な風にさらされる、まわりの声も届かない孤高の世界。
何を目指せば良い?
何を参考にすれば良い?
誰を頼れば良い?
頂上とは、一体どんなところなのでしょうか?
心なしか表彰台の上の彼の表情は、私の目には少し悲しげに映りました。
そんなことを言うのは、私は”甘すぎる”のでしょうか?
そうかも知れません。
実際、吉田稔騎手に聞いたわけでもありません。
彼がどんな風に考えているかということも分かりません。
でも・・・・・、
彼も人間でしょうし、いろいろあった後でもあります。
地方競馬は今、非常に苦しい状況にあります。
ジョッキーだって、その仕事に見合ったマネーが保障されているわけでもない時代です。
みんなわかっています。
だから我慢もしています。
それでも、なんの変わりもなく”弱肉強食”の世界はそこに間違いなく存在し続けます。
JRAという彼の新しい世界への挑戦は、自分のためのみならず、きっともっと多くの”意味”と”価値”をそこに見出しているのかも知れません。
そして来年も・・・。
何度でも立ち上がり、何度でも挑んでゆく姿勢は、彼が名古屋のトップジョッキーへ上り詰めていく過程の努力に比べたら、ほんの容易いことなのかも知れません。
また、そうあってほしい。
ただ一人のファンとして・・・、
そんな風に願う、今日この頃であります。
今回のムーンバレイの騎乗も、また見事でした。
その技も、その力も、そしてかけひきも、全てが”吉田稔”そのもの。
素人目の私がそう感じるくらいなのですから。
完璧なんていりません。
勝ち切って答えを出すところが”抜群”なのです。
だからこそ”吉田稔”なのであり、彼が同僚や関係者からも一目置かれる存在になっている理由なのでありましょう。
それにしても、このムーンバレイ・・・、もう少し集中して走ってほしいものです。
道中も、周りが気になるのか、後続馬が気になるのか、ずっとソラを使ってたような気がします。
最後の直線も、口を割って走っているので苦しいのかと思いきや、最後まで後ろの馬を抜かせませんでした。
吉田ジョッキーでなければ・・・?
なんて思うのは、私だけではなかったでしょう。。。
この馬が、まだまだ良くなる余地を残した馬であることは間違いはないです。
ヤネが誰になるのかは私の知るところではありませんが、ムーンバレイという馬にさらに期待を寄せたくなる今回の「梅見月杯」のレースでした。
でもやはり、距離適性は1600mまでかな?
JRA馬撃破の可能性は、「名古屋大賞典(GⅢ)」(ダ1900m)よりも「かきつばた記念(GⅢ)」(ダ1400m)のように思います。
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名古屋競馬「第8回 梅見月杯(SPⅠ)」ダ1800m右
1着 ◎ 6 ムーンバレイ (吉田稔)
2着 ▲ 10 チャンストウライ (大山真)
3着 △ 7 ウイニングウインド (岡部誠)
4着 ○ 2 ビッグドン (加藤義)
5着 × 4 マサアンビション (戸部尚)
6着 -- 9 オグリホット (濱口楠)
7着 -- 3 コスモスパーブ (宇都英)
8着 -- 12 タイキサファリ (尾島徹)
9着 -- 8 セイウンヒノアラシ (大原浩)
10着 -- 11 コガネウキョウ (横井将)
11着 -- 1 ナムラブロンコス (山田崇)
12着 -- 5 シンプウオペラ (丸野勝)
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馬単GET!
ごちそうさまでした。
少し買い目が拡がってしまいましたが。
それでは、また。