どんこの空(そら)に 。

きっと何かが足りない~それを探す日記~

或る晴れた日に。

2007-06-04 | Sandstorm
初夏の陽射し眩しい午後。
風が心地良い。
昨日の晩に、溜まっていた仕事も片付けて心も軽い。
こんな日は競馬だ。
笠松の風に吹かれて来よう。
そう思う。
家の用事も片手間に済ませ、新聞を開く。
今から行けば8レースには間に合うな。
今日はなぜか当たるんじゃないかという予感。
変に負けが込んで欲に駆られている時は、そうは当たるものじゃない。
軽い馬券で遊んで来よう。
予算は10000円。
5000円でも増えれば良い。
軽く家人に声をかけて、明るい陽差しの中に出た。

車に乗り込み、買ったばかりの織田哲郎の新曲が流れる。
”One Night”
14年ぶりのフルオリジナルアルバムだ。
全曲バラード調で良い感じの出来であるが、この軽い気分には少し重い。
FMにチェンジ。
お願いDJ。
あの娘に伝えて・・・なんちゃって。
歳食ったものだな。
やっぱり今はロックンロールは似合わない。
そう勝手に思い込んでる。
ポッカリと心に風穴が開いたような小一時間。
時間は流れる。
景色は流れる。
自分はいま動かずにここにいる。
それでも時間は流れた。
それでも景色は変わった。
不思議な感覚。
もっともっと、心にたまった日々の垢を吹き飛ばしておくれ。

やがて景色は田園風景。
木曽川を超え、河川敷を走る。
笠松の駐車場からは、すぐそこに3コーナーが見える。
車を降りるとすぐに馬群が目の前を通り過ぎた。
蹄が砂を叩く音。
通り過ぎれば、不思議なくらいに静かだ。
あの向こうのスタンドでは、また、
誰かが笑い、誰かが泣いているのだろう。
見えない向こうの何処かでは、馬に人生を賭けている人がいて、
その一頭の馬にわずかながらの想いを託しているのだろう。
見えなかったものが、少しずつ見えるようになった。
わからなかったものが、少しずつわかるようになった。
場内に入りスタンドを上がれば、いつもの景色。
見えなかったものが、少しずつ見えるようになった。
わからなかったものが、少しずつわかるようになった。

笠松の午後は、今日ものどかで穏やかだ。
心の中にも心地良い風が吹く。
時間は怖いくらいにゆっくりだ。
このまま溶けてしまいそう。
やがてレースが始まると、目の前を一陣の風のように馬群が往く。
風、音、匂い、滑稽なほどのジョッキーの激しい動き。
最後のゴール前。
そこに、その限られた時間と空間を共有している人々の全てがある。
勝った人、負けた人。
諦めた人、望む人。
一話完結型の良質のストーリー。
イズミビジン、4歳牝馬。
一番人気、圧勝。
君が美人なら、そりゃ苦労も絶えない年頃だね。
逃げて逃げて逃げまくれ。
そういう生き方もまた悪くないだろう。
勝てるのは、いつもほんの一握りの幸せ者さ。
君は今日という日の、その中に選ばれし勝者。
そんな君に祝福を。
それがほんの今日だけのことだとしても。

そしてそんな私の手の中には、ほんの少しだけ幸運な紙切れがあった。
こんな日もある。
少なくともこの笠松の風景を見ている間は、
私に幸せの時間が流れてくれるだろう。

サンキュ。

こんな日は競馬だ。
笠松の風に吹かれていよう。
本当に今の私には、心からそう思う。



初夏の笠松の、或る晴れた日に。





最新の画像もっと見る