この自らですら、裏返ることはある。
この自らですら、いつ怒り、憎しみに狂うやも知れぬ。
それを自覚しない人はまだ幼い。
よほど恵まれて余裕のある道を歩む人は、裏返ることなど知らないかも知れない。
正義の道が全てだと信じるのかも知れない。
自分の翼で飛べないアヒルの子は、何を思う。
けれど、それが悪いわけではない。
そうやってずっと生きられるなら、そんな素晴らしいことはないだろう。
子供や女達には、できることならそうしていてもらいたいと願う。
ただ、こんな自分さえ、ひとりではないから。
誰かに何かしら関わっている限り、正論だけで生きられる人が時に疎ましいと思ってしまう。
もちろん、優しさや愛おしさもあるけれど。
時に、逃げ道がなくなる。
弱き人よ。
怒り、罵り、誰かの正義を押し退ける。
ふと、どこかの誰かに許されているのだと思う。
何の見返りもできないなら、せめて自分は笑わないよ。
決して誰かを笑わないよ。