能登のみなさん こんにちは
第二章
サッカーグラウンド半面ほどの中庭は青い芝生で一様に覆われ、その庭のやや北側あたりに直径5メートルはある円形の噴水が作られていた。普段なら高さ3メートルほどの噴水塔から水が弧を描き勢いよく人工池に降り注いでいる。しかし、外縁の大理石の一部が欠けていてその修理のために水は止まっていた。明日、中庭で催されるこの家、タガール家の長女サニータの十歳の誕生日パーティーに間に合わそうと工事はせかされていた。いつもならその噴水の外縁に腰かけるサニータは仕方なく中庭を口の字に囲む赤いレンガ造りの宮殿の南側のベンチに座り、妹のマブーラ、弟のラムに絵本を読んであげていた。
「もう僕飽きたよ」
「ラム、もう少しで終わるから。最後はとっても嬉しくなる物語よ」
「そうよラム。一緒に聞いていなさい。せっかくサニータ姉さんが読んでくれているのに」
「飽きた。それより、鬼ごっこしようよ」
「だめ、ラムいい所なんだから」
「お姫様の物語なんか面白くない」
ラムは芝生を駆けていった。
「マブーラ、これを読み終えたら鬼ごっこしてやろう」
「分かったお姉さま」
最後のページを読み終えたサニータは、西側の花壇の前でしゃがんでいるラムに声をかけた。
「ラム、本を読み終えたから、鬼ごっこしようか」
こちらを振り向いたラムを見ると花壇に咲くオオムラサキの花を左手に持ち、小さい右指をその花の中に入れてもぞもぞ動かしている。
「何してるの」
「この花の中の細いの、甘いんだよ」
ラムは雄しべの蜜をなめていた。
「まあ」
「おねえさま、一つ上げる。なめてみて」
「ほんと甘い」
「だろ」
「私も欲しい」
マブーラも近づいてきた。
「じゃあ、鬼ごっこしようか」
「もういい。それよりまた草笛吹いてよ」
「お姉さま。私も吹いて欲しい」
「分かったわ」
サニータは固そうなオオムラサキの葉を一枚もぎ取り口びるに当てると、ドレミの歌を奏でた。
続く
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