オクトシティー正直村

おかしいな?変だな?と思った事を綴った駄文

有機食品基準は何のため?

2007年11月10日 | Weblog

農林水産省は、有機食品の検査認証制度を開始している。

 有機食品の基準、検査・認証機関について法案を提出した時の趣旨は、有機農産物は(1)化学肥料・農薬を使わない栽培方法を基本とする(2)遺伝子組み替えの種子、種苗、収穫物を使わない(3)通常の栽培方法を止めてから一定期間経った田畑で生産する――といった条件を満たすものに限るとしている。また、有機加工食品は、原材料の少なくとも95%は有機農産物であることを条件としている。

何のために有機食品の検査、認証をしようとしたのか。

 市場に有機食品が登場しはじめて、ピンからキリまでの有機食品が氾濫し便乗商法や不当表示があり混乱しているからお役所のお墨付きを与えようというのであろうか。化学肥料・農薬、遺伝子組み替えによる農作物は人体に有害だと言おうとしているのか。有機食品でなければ人体に有害で市場で売れなくなるのであろうか。特殊な有機食品だけお墨付きを与えて何になるというのであろうか。疑問ばかりである。

有機農産物とか有機食品とは、

 自然界の有機物質を使って栽培された農産物や、それをもとに加工された食品であり、本来、自然界の動植物は有機物しか生産しない。反対に、昔の人が動植物が作り出す物質を有機物、それ以外の金属や鉱物などの物質を無機物と定義したのである。今なぜ有機農産物や有機食品が注目されているかというと、人間が有機物と無機物以外の人体に有害な物質を含む「有機化合物」を自然に逆らって造り出してしまったからである。有機化合物は有機物とよく似ていて自然界のあちこちに入り込んで悪さをしている。しかし、「有機化合物」が全て人体に有害なわけでもない。

我々消費者が欲しいのは、低価格で安心しておいしく食べられる安全な食品であり、

 「有機食品」そのものではない。普通の食品の安全が信頼できないために「有機食品」に安全を求める人がおり、需要があるからこれを商売にする人がいるのである。農林水産省がやるべき事は安全な「普通」の食品を提供できる制度を作ることである。人体に有害な「有機化合物」や化学物質が含まれている化学肥料や農薬を明確にしてこれを使用禁止にするとともに、遺伝子組み替えが人体に有害な影響を及ぼす要素を取り除いて、それぞれを有効に活用して安全な食品を効率的に生産するにはどうすべきかを明らかにした基準を作るのが先決であろう。

安全か有害かを明確化することは現段階の技術水準では無理である。

 しかし、化学肥料・農薬等を(1)有害が確定された物(2)有害の疑いのある物(3)無害な物に区分することは可能であろう。有害の疑いのある物も3段階くらいに区分できそうだ。これをもとに安全食品基準を作ることは可能である。有機食品にこだわるのでなく、安全な化学肥料・農薬を使用した、安全な遺伝子組み替えを活用した安全食品を作り出すためには何を基準にし何を検査・認証するかを考えるべきであろう。

無農薬の農産物を作ることは可能である。

 しかし、周囲の農薬で閉め出された害虫や病原菌の集中攻撃を受けることを覚悟しなければならない。周囲が農薬を使用している中心部で周辺の畑に守られて無農薬の作物を作ることは可能かも知れない(これが無農薬栽培と言えるのであろうか)。化学肥料を一切使用しない作物を作ることも可能である。しかし、当然収穫量は減り効率は悪くなり自然の有機肥料を使うため当然高価になる。遺伝子組み替えも世界的な人口増大による食糧難を回避するためには安全にかつ有効に活用し高収穫を目指さなければならない。

何のための有機食品基準であろうか。

 化学肥料・農薬を使わない栽培方法や遺伝子組み替えを使わないことを推奨するためのものであろうか。化学肥料・農薬や遺伝子組み替えを一方的に好ましくないというのであろうか。そうではないと思う。「安全」を確保し、なおかつ化学肥料・農薬を使用し、遺伝子組み替えも活用した効率的で収穫を得ることができる栽培方法を追求すべきである。そうでないと農業や農産物の流通が現実を離れたいびつな方向に進んでしまう。

近代農業に化学肥料・農薬は欠かせない。

 自然環境から土壌まで自然体系が近代農業により影響を受けている。土中の微生物も、ミミズなどの昆虫も、モグラなどの小動物も、虫を捕食する鳥類も昔とは大違いである。いまさら原始農業に回帰するわけには行かない。近代農業を完全に原始農業に戻せというのは現実的ではない。安全な近代農業を追求するのが筋である。反対に、有機食品の基準を満たしていてもその食品が人体に有害な物質を含めばお墨付きも無意味である。土壌が汚染されていれば、大気が汚染されていれば、水が汚染されていれば、いくら「有機農産物」でも「安全」ではない。材料が95%有機農産物でなおかつ「安全」であっても製造段階で人体に有害な物質(食品添加物等)が混入すれば「有機食品」も「安全食品」ではない。

有機食品基準は流通の混乱防止のためには有効かも知れない。

 しかし、それは「有機食品」を売り物にしている業者の利便のためであり、我々消費者の安全確保のためではない。こんなお墨付きをもらったものでしか安全が確保できないとなれば、消費者は安全だと推測される「高価な」食品を買わされるはめになる。何か違うのではないか。基準を設けるべきは、最終的に我々消費者に提供される農産物や食品の安全性である。これを生産し製造する段階での安全基準であり、最終的な商品の安全基準である。化学肥料・農薬や遺伝子組み替えを使用しても安全食品は生産でき、有機栽培された農産物だけが安全であるという考えはあまりにも短絡的である。

たとえ有機食品の基準が定められ、違反に対し罰則を設けても

 金儲けしか頭にない一部の悪徳業者は「有機」に替えて「自然食品」「健康食品」「無農薬食品」など新たな宣伝文句を考え出していかがわしい食品を売り込むであろう。次は「自然食品」「健康食品」「無農薬食品」の基準を設定しなければならない。いつまでたってもイタチゴッコでありキリがない。何のための基準設定なのであろう。主体性をもって対策をとるのは政府であり、業者の尻を追っかけていたのでは本質を見失う。本質は消費者に最終的に提供される農産物や食品の「安全基準」である。安全でない農産物や食品は流通してはならないのである。これを流通しようとする業者は厳しく罰しなければならない。(当然のことをもっともらしく主張している自分にあきれているが、この当然のことが守られていないのである)

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