この頃生け簀料理が流行っているらしい。
現地の漁港から生きたままで輸送できる仕組みが整ったらしい。あちこちで店に生け簀を設置して、お客さんに生きたままのものをその場で提供する趣向らしい。どういう訳か大人気らしくて、皆さん高いお金を出しても最高の鮮度のものを食べたいと思っているらしい。しかし、私はこんな魚を食べたいとは思わない。私が育ったのは海の近くで、新鮮な魚介類をたくさん食べることができたが、直前まで生きていなければ新鮮でないなどと思ったことはほとんどない。
魚介類は捕獲されるとそのショックで餌を食べなくなる。
いくら新鮮と言っても、輸送中は自らの身を削って生きているのである。生きたまま輸送するにはその間に多大なストレスが魚介類にかかっている。その分も耐えなければならない。絶食してストレスに耐え、海から引き揚げられたショックも癒えないままに輸送され、生け簀に入れられ、お客さんに提供されるまで待つのである。そう考えると、お世辞にも「新鮮」とは言えない気がする。
お客に提供されるとき、結局は殺されるのである。
殺されることは最大のストレスである。生物はストレスにさらされると、これに対抗して様々な物質を分泌する。この物質は得体が知れないが、人間にとって有用な物質とはどう考えても思えない。このまま食べることは私には抵抗がある。しばらくは落ち着くまで放置して熟成させて食べる方が好ましいと思う。これまでもそうであったような気がする。
父や兄貴が釣りが好きで、よく釣りたての魚を食べていた。
しかし、その日のうちには食べなかった。すぐにさばいて、内臓を取って三枚におろしたあと、冷蔵庫で一晩寝かせて食べていた。そのくらいがちょうどいい美味しさであった気がする。そして、釣った直後はその場で活〆にしていた。むやみに活かすと美味しくなくなるのである。活〆も魚にストレスをかけないように一気に〆る方法を父も兄貴も知っていた。私は食べる専門であった。
家畜も一緒だと思う。
牛や豚や鶏を食べているが、結局はどこかでと殺されている。殺される時のストレスは相当なものであろうし、いろいろな物質を大量に分泌していると思う。と殺した直後の肉をそのまま食べようとは思わない。魚介類よりもっと熟成が必要だと思う。通常市場に出回っている肉はほとんど熟成済みのものであろう。まさか、その場で殺して食べて新鮮だとは誰も思わないであろう。
生け簀販売が流行することに異は唱えないが、
流通の段階で相当の負担とエネルギーと設備を必要とする。ある意味無駄でもある。それよりも現地で活〆して冷凍技術を使って輸送した方が理にかなっている気がする。御客を呼び込むためのやり方かもしれないが、私には無駄にしか思えないし、そんなものに高い金を払うつもりは毛頭ない。まぁ、話のタネに一度くらいやってみてもいいかなと思うくらいである。
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