民法は扶養の義務を定めている。
第八百七十七条 直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。
2 家庭裁判所は、特別の事情があるときは、前項に規定する場合のほか、三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる。
3 前項の規定による審判があった後事情に変更を生じたときは、家庭裁判所は、その審判を取り消すことができる。
平たく言えば、家族の中に生活に困っている者がいれば、それは家族が面倒をみなさい。
ということでしょう。
社会保障制度が整っていない時代には、家族の相互扶助は一般的で当たり前のことでした。家族よりもっと広い親族間の相互扶助が求められることもありました。民法にはこの家族相互扶助の概念があります。
皇族には民法は適用されないが、この家族相互扶助の概念は生きていると見る。
皇室経済法第六条
四 独立の生計を営まない親王、その妃及び内親王に対しては、定額の十分の一に相当する額の金額とする。ただし、成年に達した者に対しては、定額の十分の三に相当する額の金額とする。
五 王、王妃及び女王に対しては、それぞれ前各号の親王、親王妃及び内親王に準じて算出した額の十分の七に相当する額の金額とする。
附則
3 この法律施行の際未婚者たる親王又は内親王は、改正後の皇室経済法第六条第三項の適用については、独立の生計を営まない親王又は内親王とみなす。
独立の生計を営まない親王、その妃及び内親王
未婚者たる親王又は内親王は、独立の生計を営まない親王又は内親王とみなす。
独立して生計を営まないとは、誰かと生計を一にしているということです。
では、その誰かとは誰か。
それは親だけではない。親が亡くなった後の兄弟である場合もある。もしかしたら叔父叔母かもしれない。
庶民なら扶養の義務で無一文の兄弟や甥姪の面倒を見ることを要求されるが、皇族は捨て扶持といえども、皇族経済法に定めるところによって
独立して生計を営まない親王及び内親王(成年)915万円。
独立して生計を営まない親王及び内親王(未成年)305万円。
独立して生計を営まない王及び女王(成年)640.5万円
独立して生計を営まない王及び女王(未成年)213.5万円2019年
という皇族費が支給される。
皇室経済法第六条、附則3は、未婚の女性皇族を経済的に追い詰めて追い払うためのものだと言う意見があるが、むしろ何らかの理由で生涯未婚のまま掛人(かかりゅうど) として終わる皇族を無一文の立場に置かないために定められているのでしょう。
皇室経済法には次の条項もある。
第六条一 独立の生計を営む親王に対しては、定額相当額の金額とする。第六条三 独立の生計を営む内親王に対しては、定額の二分の一に相当する額の金額とする。
内親王も独立の生計を営むこともできるということでしょう。
同じく第六条に
皇族が初めて独立の生計を営むことの認定は、皇室経済会議の議を経ることを要する。
皇室経済会議が認めたら、内親王も独立の生計を立てて、それなりの皇族費を得て暮らすことができる。例えば2019年では1525万円?
そして、王、女王についても
五 王、王妃及び女王に対しては、それぞれ前各号の親王、親王妃及び内親王に準じて算出した額の十分の七に相当する額の金額とする。
の条項があるから、独立の生計を営む女王もありうるということでしょう。
皇族費は内親王の十分の七ですから、1067.5万円でしょうか。
皇族経済会議によって認められれば、内親王、女王も独立した生計を営むことができる。
では、何故附則3はあるのか。
それが解るのは此処です。
⑤ 同一人が二以上の身分を有するときは、その年額中の多額のものによる。
此処で言う独立して生計を営む内親王、女王とは、親王、王の妃となった内親王、女王でしょう。
親王妃、王妃として独立の生計を営むか、内親王、女王として独立の生計を営むか、どちらでも良い。
しかし、そんなことはどこにも書いてないので、「内親王も独立した生計を営むことができる」という条文を大いに活用したらよろしかろうと思われます。