先月、奈良で行われた元「従軍慰安婦」
金福童(キム・ボットン)ハルモ二、吉元玉(キル・ウォノク)ハルモニの証言集会の報告をしますね。
奈良駅についたところ、さっそく「従軍慰安婦は嘘だ」と言うバナーをもってスピーチをする集団に遭遇しました。
金福童(キム・ボットン)ハルモ二。1926年慶州南道梁山生まれ。
「過去の歴史を皆さんは知りません。知らせるためにやってきました。戦争はなくさねば、平和な世界を作らねばなりません」
14歳のときに日本の警察官と村の班長、階級章のついていない軍服のような服を着た男性らが家に来たといいます。
「日本は今戦争中で、軍服を沢山作らなくてはいけないのだが人手が足りない」と、キムさんを工場につれて行くと言うので、
母親はこんなに幼いのに工場で働けるのかと聞きました。
行かない場合は日本に反対しているとみなして財産を没収し外国に通報するというので、キムさんは彼らに従うことになりました。
連れて行かれたのは工場ではなく、遠い外国の戦場でした。
広東の陸軍司令部で、到着すると将校と軍医がでてきて、検査をされます。
そのあとベニヤ板で仕切られた部屋をあてがわれ、軍人の性の相手をさせられることになりました。
1日に15人程度、週末は50人を超えたといいます。
香港、シンガポール、スマトラ、インドネシア、ジャワと軍隊に共に移動させられ、日本は敗戦を迎えます。
キムさんはシンガポールの陸軍病院で働かされることになりました。
兵士のため大量の血液を提供させられた際、耳がキーンと鳴り、視界がチカチカし、頭痛に襲われたといいます。
具合の悪くなったキムさんは20ccの注射を受けました。
ベッドに横になっているうちにいつのまにか兵士達は撤退し、キムさんらだけが病院に残されました。
キムさんは、米軍の捕虜収容所に収容され、船で帰国します。
「いまだわたしに解放は訪れていない。人に言えない思いを抱えて生きてきた」とキムさんは訴えます。
キムさんはソウルの日本大使館前で水曜デモを20年続けてきました。
「しかし、1度も答えがない。わたしたちは過去の政府が間違っていたと訴えている。ならば現在の政府がその間違いを正さなくてはならないでしょう。世界を相手に戦争をし、再び戦争をしたいという人の頭の中はどうなっているのでしょう」
「日本が過去、必要として徴用してきた韓国人、朝鮮人の2世、3世をなぜ差別するのですか。わたしの国にも多くの日本人が住んでいますが、日本の民間人に罪はないと、差別せずつきあっています。韓国人、朝鮮人は帰れ、と言われるのが悲しいです」
「安倍首相には、過去の間違いをただし、謝罪してほしいです。わたしたちではなく、あなたたちが働きかけてほしい。手伝ってほしい。橋下市長も人の親ではないのですか。あのような人は政治家の資格はありません。政治家の服を脱いで家に戻って子育てをしてほしいです。わたしは皆さんを信じています」
「わたしたちは、世界の戦時性暴力を受けた女性を支援するナビ(蝶)基金を立ち上げました。戦争のない国、平和な国を作ってください。もし戦争になれば、あなたたちが被害を受けることになるでしょう。努力してください」
笑顔は優しいですが、その顔に刻まれた皺は深いのでした。
(韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)は、日本政府から受ける法的賠償金である「ナビ(蝶々)基金」から、ベトナム人のグエン・バン・ルオン氏(43)、グエン・ティ・キム氏(女性・43)にそれぞれ6千ドル、4千ドルを送ったと17日、明らかにした。)
吉元玉(キル・ウォノク)ハルモニ。1928年平安北道生まれ。
「13歳のときに被害を受けてから70年間、一日も人として生きることができなかった。謝罪されて傷が治るわけではないが、少しは楽になるだろう、癒されるだろうという思いで日々過ごしています。みなさんが政府に、間違っている、謝罪してくださいと働きかけて、悟らせてください」と穏やかな表情で語りました。
当日流された11分の
アニメーション映画「Herstory」です。必見です。
つづいて、吉見義明教授の発言。
橋下大阪市長をはじめ、日本の政治家たちは強制連行の有無だけを問題にしているが、軍慰安所で強制があった、軍「慰安婦」制度は性奴隷制であった、これがすべてであり、原点であるとのことでした。
「居住の自由、外出の自由、廃業の自由、拒否する自由が奪われたうえで性奴隷にさせられた。
慰安所は軍の施設であり、設置、管理、建物・資材・物品の提供、性病検査など、すべて軍の指示によって行われたことは司令部資料などを見ても否定できない。責任逃れはできない」と語りました。
当時の日本、朝鮮、台湾で施行されていた刑法226条は略取、誘拐、人身売買は犯罪であり、人身売買により人を海外に連れて行くことは犯罪であると定めていました。
にもかかわらず軍の選定した業者によってこういう事がまかり通っていたのだが、これも強制連行のうちに含まれるのではないか、ということです。
橋下の一連の「慰安婦」発言を中心とする歴史認識問題が浮上しているが、橋下、安倍流の「誇り」を押し出し改憲への地ならしをするのが目的ではないかと。
対韓、対中への強硬な態度で支持を拡げようとしているが、事実を直視し、過去をきちんと克服することが大切と締めくくりました。
海外の認識も紹介されました。強制連行があった、なかったよりも女性達が騙されて悲惨な目に遭わされたというだけでアウトなのだと。
こういうことを、余生を生きる当事者の方に訴えさせること。それだけで胸がつぶれそうな気持ちです。
さらに、傷に塩を塗りこむようなこの国の政府の対応、政治家の暴言、まかりとおる否定論。
お話を聞き終わって、泣きはらした顔で古本屋に立ち寄って、車で迎えにくる友だちを待っていました。
偶然駅前にハルモニと支援の方々が歩いていらしたのに遭遇。握手して挨拶しました。「がんばろう、がんばってよ」とあたたかい手。
多くの人に知ってほしいです。
わたしたちが過去のことと思っていることも、彼女たちのなかでは、全然終わっていないことなのです。