みやぎ野菜ソムリエの会

会員同士の相互交流と情報発信を目指し、各種勉強会、産地の視察研修等を自主的に行っていく野菜ソムリエ会員のコミュニティです

【素材のおはなし】(11)さくらんぼ

2013-07-14 17:13:28 | 食素材研のブログ

最近はスーパーの果物売り場で季節を知るのが難しくなっていますが、輝く赤色を放つサクランボは初夏の訪れを感じさせてくれる貴重な果物です。その愛らしい魅力につい手を伸ばしたくなりますが、「自宅用にはちょっと高いよね…。」と、手を引っ込めてしまった経験はありませんか?(えっ、私だけ??)

去る6月23日に食素材研究部会では山形天童~東根方面に出向き、サクランボ農園を訪問しました。

写真は天童の今野農園さん。

生産者の方にお話をうかがって、そのお値段が付くことに納得。高価な果物のひとつに挙げられるサクランボは、気象条件の難しさを含めて、農家さんたちが大変な手間をかけて作り上げた結晶なのです。

 


【原産地・伝来】

西アジアのトルコが原産です。有史以前から栽培され、紀元前にヨーロッパに、17世紀初めにアメリカに伝わりました。日本に伝えられたのは明治初期で、ドイツ人によって北海道に導入されたのが始まりとされています。

その後全国各地で栽培を試みましたが、収穫時期が梅雨と重なり、実が割れてしまい、ほとんどの地で失敗してしまいます。開花期である春に遅霜がなく、収穫期の6月に雨の少ない地域が栽培に適していることから、梅雨期の短い山形県では生産が成功。今では山形県産が全国生産量の約75%を占めています。

生産地はほかに青森、山梨など。近年では北海道でも栽培しています。

 

【サクランボ栽培の手間ひま】

剪定:3月の雪の降る寒い時期から行われます。サクランボの樹が太陽から十分な栄養を得られるように、余計な枝を切り落とします。

芽かき:3月下旬から4月上旬につぼみがふくらんできた頃、余計なつぼみを落としていきます。(1本の樹から約6割!)この作業によって大粒の実に成長します。

受粉作業:5月の開花時期に、マメコバチやはたきを使って受粉作業を行います。下の写真は佐藤錦の花。つまり桜です。

 

サクランボには一部を除き、自分と同じ品種の花粉では上手く受粉しないという特徴があります。このため、“佐藤錦”と“ナポレオン”のように相性のよい2~3種類を同じ園地に植えています。

摘果:実がなり出した頃に摘果を行い、収穫する実だけ栄養が行くようにします。

また、雨が当たると実割れする(裂果)ため、雨よけのビニールを張り、防鳥ネットを張るなどして実を守ります。写真は露地のもの。露地栽培は施設の管理が不要ですが、天気次第で出来が大きく左右されます。安定した品質のものを作るためには手間とコストがかかるのです。

収穫:実が成長してくるとよく色づくように、日かげを作る葉を摘み取ります。色づきなど見極めながら、また常に天気予報や雲の流れで雨に注意しつつ、サクランボに日光を当てて、大事に育てていきます。

そうして、最高のタイミングで一つ一つ、傷つけないようにそっともぎ取っていきます。

このようにサクランボは、大変な手間ひまかけて育てられています。農家さんのたゆまぬ努力に感謝♡

 

【旬】

品種にもよって多少収穫時期が異なりますが、6月~7月と出回る時期は限られています。また、一つの品種の収穫期は2週間ほどの短い期間。

今では温室栽培が進み、お正月にサクランボの初出荷がニュースになりますね。桐の箱に丁寧に並んで数万円とか。

まさに「赤い宝石」「果物のルビー」です。“なぜ真冬にサクランボ?”と不思議ですが、これは前年の6月から10月の間にサクランボの木を大型冷蔵庫に入れて冷やした後、温室で育てるというものです。

写真のサクランボ(佐藤錦)は、5月の母の日に合わせて山形の温室で加温されて育てられた、これまた超高級品です。 


【栄養素】

ビタミンCをはじめ、リンゴ酸やクエン酸、ブドウ糖と果糖が含まれていますので、疲労回復や美肌効果、高血圧予防も期待できます。また、カリウムが豊富で、高血圧や腎臓病予防にも効果を発揮します。カルシウムや鉄分など、それぞれの成分量は多くありませんが、ミネラルやビタミンを少しずつバランスよく含んでいると言えます。

ちなみに先日ラジオで仕入れた情報ですが、サクランボの軸には利尿作用を促進する成分が多く含まれているので、煎じて飲むと、腎臓病予防になるそうです。軸にそんな利用方法もあったとは驚きです。可愛い顔してなかなかやりますねぇ。

 

【保存方法】

サクランボは追熟しないので、一番甘さが増したタイミングで収穫されます。美味しく食べられるのは収穫して2~3日。購入後は冷蔵庫の野菜室に入れて、なるべく早く食べましょう。長時間冷蔵庫に入れておくと甘味が薄れてしまいます。

 

【仲間たち】

世界中で栽培されているサクランボの品種は1,300種以上と言われています。日本で栽培されているのは30種前後とのこと。今回は、6月23日の『サクランボ勉強会』で試食してきた品種についてご紹介します。

・佐藤錦(ナポレオン×黄玉)

 

国内生産量第一位の人気品種。6月中旬から出回ります。育ての親の佐藤栄助氏の名に因んで命名されました。強い甘味と程よい酸味のバランスが素晴らしく、果汁もたっぷりです。

あまりの美味しさに“砂糖錦”だと思い込んでいたのは…えっ、これも私だけ??

・紅秀峰(佐藤錦×天香錦)

1991年に品種登録された山形県園芸試験場で生まれた新品種。佐藤錦が終わる頃の7月1日が出荷解禁日です。果肉はクリーム色でやや硬く、パリッとした食べごたえ。日持ちがする方で、酸味が少なく甘味は濃厚です。

・大将錦

ナポレオンや高砂、佐藤錦などが栽培されている農園で偶然発見され、1990年に品種登録されました。7月上旬から出回る晩生種です。パリッとした歯ごたえの果肉はやや硬めで大粒のハート型。酸味が少なく甘味は濃厚です。

 

そのほかにも、色は佐藤錦よりも早く真っ赤になるけれど甘みはあっさりの「紅さやか」や(写真は収穫しないでそのまま樹になっていた紅さやか。酸っぱい!)、

大粒でかなり甘い、希少な黄色い品種の「月山錦(がっさんにしき)」など、

仲間たちはいろいろです。

 

サクランボについて調べてみて、山形がお隣の県で良かったとつくづく思いました。自宅近くのスーパーでも簡単に手に入るし、車をちょっと走らせればサクランボ狩りもできます。生産地から離れた県からみれば本当にラッキーです!!

ただし、一度に沢山食べるとお腹が痛くなることもあるのでご注意ください。これはサクランボに含まれるソルビトールという糖アルコールが原因。消化されにくい成分なので、大量に食べるとソルビトールの過剰摂取により腸の吸収効果が低下して腹痛に襲われるというわけです。

旬も短く、日持ちもしませんが、一粒一粒しっかり味わって美味しく食べましょう。

 

次回は、6月23日の食素材研イベント「素材のおはなし in 山形 ~さくらんぼ~」について、参加頂いた方の感想を中心にご報告します。

 

【参考文献】

草土出版『花図鑑野菜+果物』

高橋書店『からだにおいしい野菜の便利帳』

 

(文 食素材研究部会 成田浩子   写真 食素材研究部会 遠藤敬)

 

 

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