向田邦子最晩年のドラマ作品で、彼女をして、「一番好きな作品」、「(妹に)一番見てもらいたい作品」と言わせたものですが、連休を利用して、まとめて全話観てしまいました。これは、大変な実験作です。ということで、簡単な感想を。
岸恵子と中田喜子の姉妹に、山崎努と竹脇無我の兄弟。姉と兄はかつての恋人同士でしたが、兄は出世のために恋人を捨て上司の娘と結婚、兄に反発した弟は一度だけ彼女と過ちを犯し、姉は行方知らず。その後、弟は彼女の妹と付き合うことに・・・。
このドラマの面白いところは、無口でしがない町工場の工員の竹脇無我の役が、やたらにモテるところ。姉妹に愛され、岸本加代子の演じる実の妹にも愛され、疎遠な兄嫁にもなんでも話せる相手と思われ、最後には姉妹の父親(笠智衆)にも信用されるという無敵ぶり。
こう書くと、どんだけ素敵な男として描かれているんだろうと想像されると思うのですが、これが、まったく逆。ほとんどセリフがなく、自分で決断するシーンは出てこず、お金もなければ、将来性もはてなマーク。普通に考えれば、ダメンズとしか思えないのに、ドラマが終わるころには、視聴者もこの男の魅力を認めざるを得ない。
こういう究極のアクロバティックな仕掛けを仕掛けた向田邦子のセンスには、改めて脱帽しました。また、竹脇無我の代表作ともいえるでしょう。演出家鴨下信一の証言によると、「あまりにセリフがなくて困っている」とこぼしたという竹脇無我ですが、あの笠智衆を相手にして、究極の寡黙演技だったと思えます。
なお、『阿修羅のごとく』の佐分利信、『冬の運動会』の志村喬、この作品の笠智衆と、映画の寡黙な名優たちに、作中愛人を作らせ、情けない一面をさらけ出させる向田邦子は、相当狙ってやっている確信犯だと思いますね。今後、小津、黒澤的な父権の解体者として記憶されるべきかもしれない。
というわけで、視聴率的にはよくなかったそうですが、シナリオテクニック的には究極の作品。観終わってかなり刺激を受けた作品でした。興味のある方にはおすすめ。ただし、かなり地味です。頑張って、最後までご覧ください!最後も雨のシーンで(!)、なぜかほっこりします。
岸恵子と中田喜子の姉妹に、山崎努と竹脇無我の兄弟。姉と兄はかつての恋人同士でしたが、兄は出世のために恋人を捨て上司の娘と結婚、兄に反発した弟は一度だけ彼女と過ちを犯し、姉は行方知らず。その後、弟は彼女の妹と付き合うことに・・・。
このドラマの面白いところは、無口でしがない町工場の工員の竹脇無我の役が、やたらにモテるところ。姉妹に愛され、岸本加代子の演じる実の妹にも愛され、疎遠な兄嫁にもなんでも話せる相手と思われ、最後には姉妹の父親(笠智衆)にも信用されるという無敵ぶり。
こう書くと、どんだけ素敵な男として描かれているんだろうと想像されると思うのですが、これが、まったく逆。ほとんどセリフがなく、自分で決断するシーンは出てこず、お金もなければ、将来性もはてなマーク。普通に考えれば、ダメンズとしか思えないのに、ドラマが終わるころには、視聴者もこの男の魅力を認めざるを得ない。
こういう究極のアクロバティックな仕掛けを仕掛けた向田邦子のセンスには、改めて脱帽しました。また、竹脇無我の代表作ともいえるでしょう。演出家鴨下信一の証言によると、「あまりにセリフがなくて困っている」とこぼしたという竹脇無我ですが、あの笠智衆を相手にして、究極の寡黙演技だったと思えます。
なお、『阿修羅のごとく』の佐分利信、『冬の運動会』の志村喬、この作品の笠智衆と、映画の寡黙な名優たちに、作中愛人を作らせ、情けない一面をさらけ出させる向田邦子は、相当狙ってやっている確信犯だと思いますね。今後、小津、黒澤的な父権の解体者として記憶されるべきかもしれない。
というわけで、視聴率的にはよくなかったそうですが、シナリオテクニック的には究極の作品。観終わってかなり刺激を受けた作品でした。興味のある方にはおすすめ。ただし、かなり地味です。頑張って、最後までご覧ください!最後も雨のシーンで(!)、なぜかほっこりします。
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