
積読本解消シリーズということで・・・。魚喃(なななん)キリコのマンガっていうと、映画にもなった『blue』とか『strawberry shortcakes』あたりの方が有名なんだろうけど、わたしだったら、この作品か『痛々しいラヴ』を取るなあ~。といっても、ちょっと苦手な作家だったりもするんだけど・・・。
カッコいい絵柄で、おしゃれな女子から圧倒的な支持を得ている魚喃キリコ。
でも、わたしはこの人のマンガの、絵柄とは正反対の私小説的な内面の浸透圧みたいなものがどうも苦手で、ちょっと読んでて息苦しくなるときすらある。
というのも、「これって、絵柄がカッコよくなかったら、ど演歌の世界でしょ?」って思えるからで、実際、高校物という点で吉田秋生の『櫻の園』を思わせる『blue』を除けば、だいたい、貧乏同棲カップルの痛い恋愛模様を描く作家というイメージなんですよね。
で、<貧乏同棲カップルの痛い恋愛模様>の、どストライクって感じなのがこの『南瓜とマヨネーズ』。
ところで、この作品に限らずこの作者の作品で特徴的なのは、ヒロインたちの付き合うオトコどもが、見事なまでにみんなダメ男ばっかりだということ。また、ダメ男だけど魅力的という描かれ方もされてはいなくて、ヒロインにとって、いかにそのダメ男がかけがえのない存在かということばかりが、執拗に語られる。
つまり、この人の作品の恋愛って、快楽主義的なものというより求道者的なものだってことなんですよね。(やまだないと、内田春菊より岡崎京子直系って感じか?)
だから、『strawberry shortcakes』という作品のなかで、
「あたし"恋がしたい"んじゃなくって、
恋をしている相手にッ
"息も止まりそうなほどに強く抱き締めて"
欲しかったんでスよッ」
というくだりが出てきたときは、妙に納得してしまった。
要するに、とっても自己愛的な恋愛だってあたりが、ちょっとは年を取ってきたわたしを息苦しくさせるってことなわけです。なので、『痛々しいラヴ』みたいな作品ですら、セックスを扱っていながらエロくない、快楽の匂いがしないんですよね。(ここが、やまだないととは決定的に違う特徴だ!)
で、話を『南瓜とマヨネーズ』に戻すと、一歩引いた所から見たらとても感心しないヒロインの行動が、彼女の内面上、必然的なものであることを巧妙に描いている点が、わたしには面白い。
悪女に引きずられて転落していく男のストーリーなら、オペラの定番で、「カルメン」「マノン・レスコー」あたりがあるけど、本当に『南瓜とマヨネーズ』に近いのは、コンスタンの『アドルフ』とか近松秋江の『黒髪』みたいな一人称の小説の方なんじゃないかと、わたしには思える。
『アドルフ』も『黒髪』もひどい女についていく、男の自己肯定賛歌みたいな小説だけど、主人公の変な楽天性に引きづられて読者もついていってしまうという、稀有なタイプの小説。
一方、『南瓜とマヨネーズ』の方は、一見静的な絵柄のせいで客観的な同棲生活日記のように読者を錯覚させておきながら、じつはヒロインの極めて主観的な世界が描かれていて、ヒロインの<悲観的な不幸背負い込み体質の直感>(あえていうなら、「運命肯定賛歌」なのかな?)に引きづられながら、読者も最後まで読まされてしまうという印象の、不思議な作品だとわたしは思う。
つまり、楽天的に女についてく男と、運命論的で悲観的に男についていく女。ストーカー体質って、男女で違うんだよってことを考えさせてくれるという意味で、この作品はキマッテていいんだな、わたしには。
でもこういうことを書くと、「恋愛の切なさに共感しました」的な読者から反発を喰らうんだろうけど、わたし、何みても登場人物に入れ込んだりしないほうだからなあ~。それに、この作者は画もストーリーも、ものすごく狙って作ってると思うんですよ~。あえていうなら、小説家の車谷長吉みたいに。
ところで、このマンガを読んでて思い出したのは、『UNloved』っていう映画。ガラガラだった渋谷のユーロスペースで一人で観たんだけど、ゲ~って思いつつ、やけに感動した記憶がある。
といって、わたしにそそのかされてこの映画を観た魚喃ファンは絶対怒りそうだけど、でも、アイドル映画でなく、実写でリアルにやったら絶対こうだよって思うし、狙ってる感じはこの映画もこのマンガも共通するものがあるんですよね。
というわけで、マンガは推薦!映画はお暇ならどうぞ!
以上、取り止めがないのでこの辺で・・・。
PS:わたしが持っているのは、宝島社版の方なので、そっちの画像を使ってみました。今の版よりカッコいい装丁だったと思うんだけどなあ~。
<ご参考>
カッコいい絵柄で、おしゃれな女子から圧倒的な支持を得ている魚喃キリコ。
でも、わたしはこの人のマンガの、絵柄とは正反対の私小説的な内面の浸透圧みたいなものがどうも苦手で、ちょっと読んでて息苦しくなるときすらある。
というのも、「これって、絵柄がカッコよくなかったら、ど演歌の世界でしょ?」って思えるからで、実際、高校物という点で吉田秋生の『櫻の園』を思わせる『blue』を除けば、だいたい、貧乏同棲カップルの痛い恋愛模様を描く作家というイメージなんですよね。
で、<貧乏同棲カップルの痛い恋愛模様>の、どストライクって感じなのがこの『南瓜とマヨネーズ』。
ところで、この作品に限らずこの作者の作品で特徴的なのは、ヒロインたちの付き合うオトコどもが、見事なまでにみんなダメ男ばっかりだということ。また、ダメ男だけど魅力的という描かれ方もされてはいなくて、ヒロインにとって、いかにそのダメ男がかけがえのない存在かということばかりが、執拗に語られる。
つまり、この人の作品の恋愛って、快楽主義的なものというより求道者的なものだってことなんですよね。(やまだないと、内田春菊より岡崎京子直系って感じか?)
だから、『strawberry shortcakes』という作品のなかで、
「あたし"恋がしたい"んじゃなくって、
恋をしている相手にッ
"息も止まりそうなほどに強く抱き締めて"
欲しかったんでスよッ」
というくだりが出てきたときは、妙に納得してしまった。
要するに、とっても自己愛的な恋愛だってあたりが、ちょっとは年を取ってきたわたしを息苦しくさせるってことなわけです。なので、『痛々しいラヴ』みたいな作品ですら、セックスを扱っていながらエロくない、快楽の匂いがしないんですよね。(ここが、やまだないととは決定的に違う特徴だ!)
で、話を『南瓜とマヨネーズ』に戻すと、一歩引いた所から見たらとても感心しないヒロインの行動が、彼女の内面上、必然的なものであることを巧妙に描いている点が、わたしには面白い。
悪女に引きずられて転落していく男のストーリーなら、オペラの定番で、「カルメン」「マノン・レスコー」あたりがあるけど、本当に『南瓜とマヨネーズ』に近いのは、コンスタンの『アドルフ』とか近松秋江の『黒髪』みたいな一人称の小説の方なんじゃないかと、わたしには思える。
『アドルフ』も『黒髪』もひどい女についていく、男の自己肯定賛歌みたいな小説だけど、主人公の変な楽天性に引きづられて読者もついていってしまうという、稀有なタイプの小説。
一方、『南瓜とマヨネーズ』の方は、一見静的な絵柄のせいで客観的な同棲生活日記のように読者を錯覚させておきながら、じつはヒロインの極めて主観的な世界が描かれていて、ヒロインの<悲観的な不幸背負い込み体質の直感>(あえていうなら、「運命肯定賛歌」なのかな?)に引きづられながら、読者も最後まで読まされてしまうという印象の、不思議な作品だとわたしは思う。
つまり、楽天的に女についてく男と、運命論的で悲観的に男についていく女。ストーカー体質って、男女で違うんだよってことを考えさせてくれるという意味で、この作品はキマッテていいんだな、わたしには。
でもこういうことを書くと、「恋愛の切なさに共感しました」的な読者から反発を喰らうんだろうけど、わたし、何みても登場人物に入れ込んだりしないほうだからなあ~。それに、この作者は画もストーリーも、ものすごく狙って作ってると思うんですよ~。あえていうなら、小説家の車谷長吉みたいに。
ところで、このマンガを読んでて思い出したのは、『UNloved』っていう映画。ガラガラだった渋谷のユーロスペースで一人で観たんだけど、ゲ~って思いつつ、やけに感動した記憶がある。
といって、わたしにそそのかされてこの映画を観た魚喃ファンは絶対怒りそうだけど、でも、アイドル映画でなく、実写でリアルにやったら絶対こうだよって思うし、狙ってる感じはこの映画もこのマンガも共通するものがあるんですよね。
というわけで、マンガは推薦!映画はお暇ならどうぞ!
以上、取り止めがないのでこの辺で・・・。
PS:わたしが持っているのは、宝島社版の方なので、そっちの画像を使ってみました。今の版よりカッコいい装丁だったと思うんだけどなあ~。
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