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簡単に。
①ひらがな盛衰記 逆櫓
今年の橋之助は立役の大役に次々と挑戦していて、その心意気には頭が下がる。勘三郎、三津五郎の死に加えて、兄福助の病気療養で、中村屋、成駒屋一門の若手を一手に引き受けている印象すら残る。現在の人間国宝世代と平成の三之助世代の間にいる存在だし、今年の数々の挑戦が今後に生きるんじゃないでしょうか。
と、大上段に褒めておいて、本題に入りますが、逆櫓は難しい芝居だとつくづく思いました。千本桜の渡海屋にちょっと似ていて、最初が世話物風、後半が時代物風ですから、どっちでも魅力的に演じられる役者じゃないと、ほんと長い芝居に感じられてしまう。
結論からいうと、今回の橋之助は後半がよくて、前半がもうひとつ。前半の松右衛門が梶原屋敷について一人語りするくだりは、吉右衛門だと落語のようにわかりやすく、橋之助だと講談調、くらいの違いがある。また、正体を現して樋口と名乗るくだりは、大音声は素晴らしいんだけど、時代物というよりは荒事めいて感じてしまうのが不思議。でも、観た感じが古い錦絵みたいに立派なので、團十郎亡き後の古風な立役の最有力候補だとは思うんだけど・・・。
女房およしは児太郎にはさすがに荷が重かった。修羅場を潜り抜けたものの我が子とはぐれてしまった運命の女性という体からはさすがに遠かった。若い女方だと子持ちの役はやはり大変なんでしょう。この役だと、2000年11月の吉右衛門の舞台の魁春が素晴らしかった。
お筆の扇雀は、あまりに素晴らしかった2000年11月の坂田藤十郎(当時鴈治郎)そっくりとはいかなかった。藤十郎のお筆は、出てきた瞬間から高貴なひとがお忍びで来たという雰囲気に満ちていたし、言い出しにくいことをいうためらいの息遣いが手に取るように感じられたんだけど、扇雀はもうちょっと冷たい感じで、写メ日記にも書いた通り、魚屋宗五郎のおなぎさんみたいな事務的なニュアンスがちょっとあったかな、と。権四郎を怒こらす場面で、緊張の緩和から不意に「若君を返してくれ」というのか、そもそも事務的な要求としてそういうのかで、芝居のニュアンスが変わると思う。というのも、このお筆という人物自体が、過酷な運命を背負った女というのか、同僚を殺され、身代わりの子供の首をはねられ、途方にくれながらも若君を探している人物だからなんですよね。
で、彌十郎の権四郎。孤軍奮闘で世話場をつくっていたんですが、左團次に比べるとちょっと愛嬌がないというか、頑固一徹みたいで、橋之助同様、一本調子に感じなくもない。でも、大健闘だとは思いましたが・・・。
そして、今回よくなかったもののひとつが、船頭三人組がほんとうに若手だったこと。声からして船頭が子供に思えちゃうのは、橋之助が気の毒だった。松右衛門内の下手に揃った時といい、今回は子役を使った遠見でなく、橋之助と船頭三人が演じた船の場面といい、どうも芝居が軽くなってしまった。橋之助の立ち回りが勇壮だっただけに、ちょっと残念でしたね。
というわけで、いろいろ書きましたが、明日の名演につながることを祈ります。
②京人形
素直に楽しく観れました。七之助の京人形は、この人特有のちょっと冷たい雰囲気もあって、はまってました。菊之助もよいんだけど、七之助と菊之助だったら、七之助の京人形の方が、人を笑って騙しそうな雰囲気があるでしょう。だから、あえていうなら、今は七之助かな、と。
それと、こういう芝居だと、プチ勘三郎に感じられてしまいがちな勘九郎が、もうそんな感じがしませんね。わたしは観てないけど、、「アテルイ」なんかよかったみたいだし、自分に自信がついてる感じ。
ちょっと驚いたのが、新悟の女房おとくが古風でよかったこと。萬次郎みたいな女形になるのかなと思ったくらい。そして、隼人くんの奴照平は美しい立役姿。これで台詞がもっとすっきり気持ち良いとさらによいんだけど、先月の大阪松竹座といい、健闘してますね~。
ということで、軽い演目ながら、楽しめました、ハイ。
①ひらがな盛衰記 逆櫓
今年の橋之助は立役の大役に次々と挑戦していて、その心意気には頭が下がる。勘三郎、三津五郎の死に加えて、兄福助の病気療養で、中村屋、成駒屋一門の若手を一手に引き受けている印象すら残る。現在の人間国宝世代と平成の三之助世代の間にいる存在だし、今年の数々の挑戦が今後に生きるんじゃないでしょうか。
と、大上段に褒めておいて、本題に入りますが、逆櫓は難しい芝居だとつくづく思いました。千本桜の渡海屋にちょっと似ていて、最初が世話物風、後半が時代物風ですから、どっちでも魅力的に演じられる役者じゃないと、ほんと長い芝居に感じられてしまう。
結論からいうと、今回の橋之助は後半がよくて、前半がもうひとつ。前半の松右衛門が梶原屋敷について一人語りするくだりは、吉右衛門だと落語のようにわかりやすく、橋之助だと講談調、くらいの違いがある。また、正体を現して樋口と名乗るくだりは、大音声は素晴らしいんだけど、時代物というよりは荒事めいて感じてしまうのが不思議。でも、観た感じが古い錦絵みたいに立派なので、團十郎亡き後の古風な立役の最有力候補だとは思うんだけど・・・。
女房およしは児太郎にはさすがに荷が重かった。修羅場を潜り抜けたものの我が子とはぐれてしまった運命の女性という体からはさすがに遠かった。若い女方だと子持ちの役はやはり大変なんでしょう。この役だと、2000年11月の吉右衛門の舞台の魁春が素晴らしかった。
お筆の扇雀は、あまりに素晴らしかった2000年11月の坂田藤十郎(当時鴈治郎)そっくりとはいかなかった。藤十郎のお筆は、出てきた瞬間から高貴なひとがお忍びで来たという雰囲気に満ちていたし、言い出しにくいことをいうためらいの息遣いが手に取るように感じられたんだけど、扇雀はもうちょっと冷たい感じで、写メ日記にも書いた通り、魚屋宗五郎のおなぎさんみたいな事務的なニュアンスがちょっとあったかな、と。権四郎を怒こらす場面で、緊張の緩和から不意に「若君を返してくれ」というのか、そもそも事務的な要求としてそういうのかで、芝居のニュアンスが変わると思う。というのも、このお筆という人物自体が、過酷な運命を背負った女というのか、同僚を殺され、身代わりの子供の首をはねられ、途方にくれながらも若君を探している人物だからなんですよね。
で、彌十郎の権四郎。孤軍奮闘で世話場をつくっていたんですが、左團次に比べるとちょっと愛嬌がないというか、頑固一徹みたいで、橋之助同様、一本調子に感じなくもない。でも、大健闘だとは思いましたが・・・。
そして、今回よくなかったもののひとつが、船頭三人組がほんとうに若手だったこと。声からして船頭が子供に思えちゃうのは、橋之助が気の毒だった。松右衛門内の下手に揃った時といい、今回は子役を使った遠見でなく、橋之助と船頭三人が演じた船の場面といい、どうも芝居が軽くなってしまった。橋之助の立ち回りが勇壮だっただけに、ちょっと残念でしたね。
というわけで、いろいろ書きましたが、明日の名演につながることを祈ります。
②京人形
素直に楽しく観れました。七之助の京人形は、この人特有のちょっと冷たい雰囲気もあって、はまってました。菊之助もよいんだけど、七之助と菊之助だったら、七之助の京人形の方が、人を笑って騙しそうな雰囲気があるでしょう。だから、あえていうなら、今は七之助かな、と。
それと、こういう芝居だと、プチ勘三郎に感じられてしまいがちな勘九郎が、もうそんな感じがしませんね。わたしは観てないけど、、「アテルイ」なんかよかったみたいだし、自分に自信がついてる感じ。
ちょっと驚いたのが、新悟の女房おとくが古風でよかったこと。萬次郎みたいな女形になるのかなと思ったくらい。そして、隼人くんの奴照平は美しい立役姿。これで台詞がもっとすっきり気持ち良いとさらによいんだけど、先月の大阪松竹座といい、健闘してますね~。
ということで、軽い演目ながら、楽しめました、ハイ。
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