切られお富!

歌舞伎から時事ネタまで、世知辛い世の中に毒を撒き散らす!

頓珍漢なJASRAC批判!

2006-11-11 08:00:56 | 「JASRAC問題」
「ビートルズ生演奏で著作権法違反、スナック経営者逮捕」という記事をめぐって、ネットではJASRAC批判の声がにぎやかなんだけど、目を通した印象では、的外れで頭の悪いことをいっている人が大半。一応、筋論で言っておくけれど、JASRACは著作権等管理団体法にのっとった団体で、今回の告訴は著作権法に基づいたものなわけ。だから、今回の逮捕を批判したいのなら、JASRACを批判するんじゃなくて、著作権法が間違っていると批判すべきなんじゃないですか?もっとも、わたしは著作権法も間違ってないと思っているんだけどね!

・ビートルズ生演奏で著作権法違反、スナック経営者逮捕

まず、前提として確認しておきたいのは、「非営利・無料・無報酬」の演奏は、著作権法違反にはならない。つまり、学園祭など学校行事で訴えられることは通常ない。(もっとも、お金を取ってる学園祭もあるから微妙といえば微妙なんだけど・・・。)だから、口笛を吹いても逮捕されるのではなんて書いてるのは大馬鹿としか言いようがない。

こんなレベルからして、まったく理解せずに記事を書いているブロガーが大量にいるんだけど、こういう人たちは、記事を書く前に著作権法を確認するくらいのことはやるべきで、裁判員制度導入に疑問を持っているわたしは、「だから、ダメなんだよ」って言いたくなりましたよ!

次に、事件自体にひきつけていうと、2001年に東京地裁が店内で演奏しないよう仮処分を出しているわけで、それでも従わない経営者は訴えられてもしょうがないし、地裁決定を批判するなら、堂々たる法解釈問題をブロガーたちは書くべきで、安易な感情論を振りかざすのは、法治国家の住人として失格といわざるを得ないと思う。(因みに、この店とJASRACの闘いは10年以上に及ぶそうです。)

それと、「ポール・マッカートニーはJASRACのことなんか知らない」というようなことを書いてるブロガーも結構いるんだけど、あえて逆質問するなら「あなたは、著作者・音楽出版社(パブリッシャー)・レコード会社・サブ・パブリッシャーの関係を知っていますか」と問いたいですね。

いちいち説明するのが面倒くさくなってきたので端折って説明すると(笑)、作詞作曲家は音楽出版社に著作権を譲渡し、音楽出版社がロイヤリティ(印税)を作詞作曲家に払うというのが基本的な仕組みで、著作権使用が国外にも及ぶ可能性があると音楽出版社は国外の音楽出版社を窓口(サブ・パブリッシャー)として、楽曲管理を委託する。そして、ビートルズ楽曲のサブ・パブリッシャー(たぶんEMIなんだと思う)がJASRACに加入していれば、JASRACは徴収行為をしなくては職務怠慢だという話になるわけ。

つまり、最初の「ポール・マッカートニーはJASRACのことなんか知らない」に答えるとすれば、ポールもJASRACの名前は知らないかもしれないが、そういう業界慣行くらいは理解しているはずだし、彼が理解していなくても、彼の代理人は確実に理解しているはず、ということになる。

そして、次に「JASRAC(のような管理団体)なんか、いらないのでは?」という説について。

少なくとも、映像業界に関わっている人で上記のような考えの人はひとりもいないでしょうし、ネットで商売している人にもいないというのが実態でしょう。

なぜなら、映像に音楽をつける場合、著作権者に許諾をとらなければいけないわけだけど、JASRAC管理楽曲以外の場合、直接著作権者に許諾を取らねばならず、連絡を取るのは大変だし、法外な要求をしてくる著作権者もいることはいるので、話が面倒になることが多く、結局その曲は使えないというケースがままある。

しかし、JASRAC管理楽曲の場合、窓口は一本だし、規定の料金さえ払えば断られることはないので、「使いたい曲が使えない」という事態は避けられる。(ただし、拒否権がないことに不満を持っている著作権者もいるということと、主題歌やCMでの使用には、JASRACとは別に著作者の許諾が必要になる。)

というわけで、「JASRAC不要論」を唱えるなら、最低限の業界常識くらいは勉強してくれないと、説得力がありません!

最後にひとことだけいっておくと、以前週刊誌で批判されたようにJASRACの運営実態については、わたしも疑問や批判は持っているのだけど、管理団体そのものが不要だというのとは別問題だと考えます。実際、ネットで使用できないコンテンツの問題には、管理団体の不在や権利処理の不備の問題があるので、管理団体の必要は高まりこそすれ、なくなることはないでしょう。

というわけで、この機会に、JASRACの検索サービスで楽曲の権利状況を調べてみるのも面白いかもしれませんよ。

・JASRAC作品データベース検索サービス

まあ、個人的な感想をいえば、たいして分かってもいないことにいい加減なことを書くブロガーたちがあまりに多いので、「日本の民主主義には期待できないな」って気がしたかな?

なお、興味を持った方は以下の文献をご参考に!

新編 エンタテインメントの罠―アメリカ映画・音楽・演劇ビジネスと契約マニュアル

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エンタテインメント契約法

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著作権の考え方

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29 コメント

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BLOGGER。 (Diska)
2006-11-11 14:28:39
わたしは、妄想や誤解も含めて、「ノイズ扱いされてた些細な想いや、日常会話として捨て去られてきた言葉を集めて、検索できるようになったメディア」が、BLOGなのだと思います。
許容範囲の差こそあれ、「よくわからないことに口を開いてもいい」からこそ、あるいはそういう幻想を抱けるからこそ、今のBLOGには価値がある、と、わたしは確信しています。

法的に不当であろうと、事実誤認があろうと、「おじいさん可哀想」、「町から音楽が消える」という想いは存在したわけで、恐らくはBLOG以外では拾われなかったその想いは、あるいは世論として既存メディアに取り上げられ、あるいは心ある法律家に「何が問題だったのか=民意に反したのか」検証されて、恐らくはJASRACにも、著作権のあり方にも、変化をのきっかけを与える可能性があるのではないでしょうか。
返信する
ブロガーは果たして大人か? (切られお富 )
2006-11-13 01:16:32
コメントありがとうございます。

仰る趣旨はわかりますし、ノイズも含めてブログでありネットだというのも、同意見です。

ただ、今回の件に関して言えば、発言しているブロガーのレベルがあまりにも低かった。音楽における著作権法の考え方が、今のような記録メディアの発達以前に生まれたものだということを考えれば、別に不思議のない事例です。(あくまで例えでいうなら、モーツアルトやベートーヴェンの時代でも、「おじいさんは可哀相」などといえるのかという話です。)

また、わたしが呆れてしまったのは、よく分かりもしないのに、「JASRACは文化を破壊している」だの、「鼻歌を歌っていても訴えられる」だの滅茶苦茶なことを言っている連中がいるということ。

しかも、こういう連中に限って、「自分は音楽を愛している」だのとテキトーなことを言っているわけで、無知もここまでくると呆れるほかないという気がしましたね。

わたしがいいたいのは、ネットというオープンなスペースでものを言う以上、最低限の裏づけがあって発言するのが、少なくとも<真っ当な大人>だということ。

滅茶苦茶な理由にも関わらず、人の尻馬に乗って他人に侮蔑語を吐くのは、イジメなんかの構造と変わらないと思いますね。

しかも、それぞれのブログをみると、皆大抵は社会人なわけで、もしわたしの周りにこの手の人がいるなら、確実に軽蔑しますね。あるいは「仕事もきっと粗い人物なのだろう」と想像します。

というわけで、今回の記事は、ささやかながらわたしも正義感にかられて書きました。象に向かって「象の鼻は長い」というが如く、馬鹿なことを書いている連中に「馬鹿なんじゃない?」といってやるために!

そしてついでながら、この件はテレビメディアにはまず出てこないものと想像します。なぜなら、記事に書いたような話のほかに、テレビ局はJASRACと包括契約を結んでいて(いわゆるブランケット方式というヤツ)、こんなつまらない事例に巻き込まれたくないだろうし、素人コメンテイターがこれまた頓珍漢な発言でもしてJASRACと揉めるもの煩わしいと考えているでしょうから。

この団体に限らず、権利団体ともめていいことはないというのがメディアの人間の考えていることです。

そして、オマケについでで平沢進氏の発言に関していっておくと、JASRACというより音楽出版社問題なのであって、著作権者が音楽出版に許諾でなく譲渡している限り、事態は改善しないでしょう。こういう著作権譲渡が慣行になっているのは音楽業界くらいでしょうし、シナリオ作家協会あたりは、譲渡でなく許諾をするよう作家に呼びかけているはずです。音楽家が本気でこのことを考えるなら、闘うフリーユニオン組織でも作るしかないのではないでしょうか?

というわけで、余談も含めてわたしの見解です。

以後もよろしくお願い致します。
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Unknown (ニャ)
2006-11-13 18:26:35
口笛を吹いても逮捕云々は皮肉で言ってるんだと思いますけど、皮肉ってわかりませんか?
返信する
Unknown (Unknown)
2006-11-13 19:15:48
あと、国、地方公共団体、大企業等の大組織はそれが論理的であれ感情的であれ、ある程度受け入れる義務はあると思います。
同じことを特定の個人に対して行ったらイジメだと思いますが、
4:33沈黙したら著作権違反になるのかと言ってる人もいましたがそれも皮肉ですね。本当に4:33沈黙したら著作権違反になると真剣に思ってる人はいませんよ。
あなたの考えだと風刺漫画も描けなくなりそうですね。
返信する
Unknown (ニャ)
2006-11-13 19:18:50
↑すいません名前入れ忘れました。
2つ上の書き込みと同一人物です。
返信する
コメントどうも。 (切られお富 )
2006-11-16 07:19:05
時間がないので、手短にいいますが・・・。

>口笛を吹いても逮捕云々は皮肉で言ってるんだと思いますけど、皮肉ってわかりませんか?

日頃、皮肉屋といわれているわたしなんで、よ~く分かっているつもり。「皮肉(アイロニー)」とは、修辞法的にいえば「反語」のことです。いったい、上記のどこが「皮肉」にあたるんですか?法的以前に、言葉遣いとして間違っています。

一方、ジョン・ケージの4:33のお話は 、思考実験としてはいくらか気が利いてますが、試験管の中の出来事というのか、暇な大学生が好みそうな喩えで、わたしみたいな実務労働者には欠伸の出る類であり、全然響きませんね。

>国、地方公共団体、大企業等の大組織はそれが論理的であれ感情的であれ、ある程度受け入れる義務はある

わたしは「義務」はないと思います。大衆なんてこんなものだと受け止めざるを得ないとは思いますが。

じつはこの点が一番引っかかったのですが、上記の言い方は、カフカの言葉を借りるなら「君と世界の戦いでは、世界を支援せよ」って話になりませんか?

つまり、無批判に感情論を受け入れるのって、「いじめ」や「ファシズム」と通じないかって話です。そして、そんな渦に巻き込まれないための武器は「真っ当な言論(言葉)」だとわたしは思うので、ドンキホーテ的とは思いつつ、こういう記事を書いたわけです。

>あなたの考えだと風刺漫画も描けなくなりそうですね。

風刺や皮肉には、事実のデフォルメやカリカチャが必要なのでしょうが、事実でなく丸っきりの事実誤認を基にするなら、もはや風刺や皮肉とはいえないんじゃないですか?それは単なる誤情報であって、名誉毀損の対象にすらなるのではないでしょうか?(訴えるかどうかは別として。)

以上、時間がなくて舌足らずでしたが、わたしの反論でした!

返信する
詭弁 (JASRACのものですが)
2006-12-10 19:23:16
 とりあえず読んだ。詭弁じゃないか。

>こんなレベルからして、まったく理解せずに記事を書いているブロガーが大量にいるんだけど

極端な事例を取り上げるなと

>そして、次に「JASRAC(のような管理団体)なんか、いらないのでは?」という説について。

だからそんなこといってる奴自体いるのかと。
>>JASRAC(のような管理団体)なんか、いらない

じゃなくて「JASRACがいらない」っていうなら
見たことはあるが。放送業界の理屈と個人経営のライブハウスの理屈じゃ全然ちがうし。第一使用料金は法律じゃなくてJASRACが決めて文化庁に届け出たものだろ。いちいち放送回数をカウントできない放送業界と
公演数のある程度限られるコンサート業界は構造が違う。そして何よりライブハウスの経営実態に合わない請求方法や請求額が問題であって管理団体の要不要は
ほとんど問題になってない。
 
極端な事例を元に批判するなと。
返信する
とりあえず読んだけど、見事に曲解なんじゃない? (切られお富 )
2006-12-10 20:47:47
コメントどうも。

>極端な事例を取り上げるなと
>だからそんなこといってる奴自体いるのかと。
>極端な事例を元に批判するなと。
>管理団体の要不要はほとんど問題になってない。

この記事を書いた当時、gooブログのトレンドランキングをはじめとして、多くのブロガーがJASRAC問題を話題していましたが、マメなことにわたしが読んだ限りでは、上記のような無理解から来る批判や管理団体不要論が99%でした。

したがって、「極端な事例」を取り上げたんじゃなくて、代表的な事例を取り上げてるんですよ。

また、そのことを裏付けるように、別の団体の方が健全だなんていう意見も読んだ記憶はありませんでしたね。つまり、ご自身の認識は完全に間違っています。

>ライブハウスの経営実態に合わない請求方法や請求額が問題

わたしがささやかながら人脈から調べたところによると、問題の店はかなり悪質なケースだったらしく、10年及ぶ抗争が続いていたそうですね。

わたしの知り限り、最近のJASRACは意外と相談に応じてくれるものだし、何でもかんでも裁判に訴えたりしているわけでもない。

もし、当該の店が本当に料金設定の問題について抗議したいのであれば、文化庁なり公取委なり民事なりで訴えればいい話で、再三の調停申し立てを反故にした結果が今回の件だとわたしは聞いています。

また、こうした件は、海外では「Peforming right」の問題ということになりますが、当然のことながら海外にも管理団体は存在しているし、料金論争したいのなら、そういう論戦を張るべきだったのでしょう。

最後に、

>JASRACのものですが

というのは嘘っぱちなんでしょ?

この手の態度やものの言い方が、読み手の感じる信憑性を左右するってことに、注意を払われては如何でしょうか?まったく、老婆心ながらね。

では。
返信する
Unknown (ニャ)
2007-01-21 04:51:05
当初、70歳のハーモニカ好きのおじいさんが逮捕され拘留されてる姿を想像すると相当頭に血が登っておりました。
今はだいぶ冷静になりましたが・・
まあ、受け入れる義務はないですね。適切な言葉が思い浮かびませんでした。

こういう連中に限って、「自分は音楽を愛している」だのとテキトーなことを言っているかどうかはあくまでも想像の範囲に過ぎないので無批判な感情論ではないでしょうか。
もっとも私は、人間ならば多少感情論が入ってしまうのはしかたのない事だと考えていますが。

この手の態度やものの言い方が、読み手の感じる信憑性を左右するってことに、注意を払われては如何でしょうか?
と言うならあなたも相手を小馬鹿にした上から見下したようなもの言いは少し考えたほうがいいのでは?








返信する
Unknown (ニャ)
2007-01-23 20:15:32
>もし、当該の店が本当に料金設定の問題について抗議したいのであれば、文化庁なり公取委なり民事なりで訴えればいい話で

これは確かに正論ではあるけれど、個人経営店の店主が大企業と対等にわたりあえると思いますか?
かたや日々の生活の糧を稼ぎながら・・
かたや裁判所に行く事自体が業務の人間が弁護団を引き連れて・・
最初から勝負は見えてる。
料金設定で不満があっても泣き寝入りせざるをえないのが現状でしょう。

風刺漫画の話ですが、あなたの場合事実に基づきというよりも法律に基づきという論調ですが、
例えばある工場が汚染度39の排水を流していました。法定値が40以下でした。でも結果的に川を汚しています。
この場合この工場を風刺する漫画を描くことはありだと思いますけど、
この場合でも法律を決めた側の人間の批判しかできませんか?
今回の件とはだいぶ話が違いますが

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